春の隣
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時は太陽も沈んで夜。
近所の民家に比べ広い敷地を持つ屋敷は、ほとんど暗闇に包まれ、その暗闇の縁側で一人の男が寛いでいる。
男は包帯を身に纏い、縁側の雨戸に背を預けていた。
見た目通り、男は病を抱えており、常人に比べれば体は余り丈夫ではなかった。
しかし今現在は良好の兆しが見えていて、自宅療養中だ。
もちろん、病状が良好と言えど一人で療養生活を過ごしている訳ではない。
彼には同居者がいたのだ。
それは……
「大谷さん。お体は冷えたりしていませんか」
凛とした声が、暗闇にスッと響いた。
屋敷の主であるこの男………大谷吉継は己の名を呼んだ当人に振り向いた。
声の正体は一人の女で、良く見れば大谷よりも薄着な服装をしていた。
「神子。我の体を気遣うよりも、まずはぬしの体を気にかけよ」
「平気ですよ。私は大谷さんより、寒さには強いんですから」
神子と名を呼ばれた女は、触れていた片手で襖を閉め、縁側の大谷へと歩む。
「それに。あなたの体調が何よりも心配なんです」
そう言って手に持っていた羽織を、肩からかける。
よく見ると羽織には蝶の刺繍が入っていた。
神子の行動に、大谷は小さく溜め息の様な息を吐く。
「ぬしには何を言っても無駄にしかならぬなァ」
「それは私が頑固だと言いたいんですか?」
やれやれと口では言わないが、困った様に頭を振る大谷を気にせずに、神子は隣に座り込む
お互いに軽い憎まれ口を叩き合うが、決して二人が喧嘩をしているのではない。
仲が悪いとゆう訳でもない。
大谷と神子は夫婦であり、憎まれ口を叩いても許し合える関係だからだ。
「いくら体調がよろしくても、まだまだ療養中なんですから。無理をなさらないで下さいよ」
「あいわかった」
「本当にわかっているんですか」
「ぬしこそわかっておるのか?」
「はい…?」
自分が大谷を説き伏せているつもりだった神子だが、逆に間髪もなく大谷から問いをかけられて、一瞬にして思考が停止してしまった。
それを予測していたのか、はたまた奇遇と思ったのかは分からないが、大谷は神子が停止している内に彼女を己が羽織る羽織の中へ入れる。
神子の肩を抱く様にして。
「お…お、大谷さん!?」
「何をそんなに驚く必要がある?ぬしは滑稽よ、コッケイ」
「滑稽!?酷いですよ、大谷さん…!」
「ヒヒヒッ…」
頬を僅に赤く染めて憤怒する神子に対して、大谷は心から楽しそうに笑う。
憤怒する神子であったが自分の肩に回されている、大谷の腕から直感する暖かみで、ふつふつと幸せを感じていた。
何処にでもいる、極普通の夫婦が晩冬を終えて新春を迎えるだけなのだが、それが本当に幸せに思えるのだ。
「大谷さん…これからも、よろしくお願いしますね」
「今頃にか?ヒヒッ…悪くない、ワルクナイ」
己の腕に寄り添う神子に大谷は幸せそうにニヤリと笑うのだった
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近所の民家に比べ広い敷地を持つ屋敷は、ほとんど暗闇に包まれ、その暗闇の縁側で一人の男が寛いでいる。
男は包帯を身に纏い、縁側の雨戸に背を預けていた。
見た目通り、男は病を抱えており、常人に比べれば体は余り丈夫ではなかった。
しかし今現在は良好の兆しが見えていて、自宅療養中だ。
もちろん、病状が良好と言えど一人で療養生活を過ごしている訳ではない。
彼には同居者がいたのだ。
それは……
「大谷さん。お体は冷えたりしていませんか」
凛とした声が、暗闇にスッと響いた。
屋敷の主であるこの男………大谷吉継は己の名を呼んだ当人に振り向いた。
声の正体は一人の女で、良く見れば大谷よりも薄着な服装をしていた。
「神子。我の体を気遣うよりも、まずはぬしの体を気にかけよ」
「平気ですよ。私は大谷さんより、寒さには強いんですから」
神子と名を呼ばれた女は、触れていた片手で襖を閉め、縁側の大谷へと歩む。
「それに。あなたの体調が何よりも心配なんです」
そう言って手に持っていた羽織を、肩からかける。
よく見ると羽織には蝶の刺繍が入っていた。
神子の行動に、大谷は小さく溜め息の様な息を吐く。
「ぬしには何を言っても無駄にしかならぬなァ」
「それは私が頑固だと言いたいんですか?」
やれやれと口では言わないが、困った様に頭を振る大谷を気にせずに、神子は隣に座り込む
お互いに軽い憎まれ口を叩き合うが、決して二人が喧嘩をしているのではない。
仲が悪いとゆう訳でもない。
大谷と神子は夫婦であり、憎まれ口を叩いても許し合える関係だからだ。
「いくら体調がよろしくても、まだまだ療養中なんですから。無理をなさらないで下さいよ」
「あいわかった」
「本当にわかっているんですか」
「ぬしこそわかっておるのか?」
「はい…?」
自分が大谷を説き伏せているつもりだった神子だが、逆に間髪もなく大谷から問いをかけられて、一瞬にして思考が停止してしまった。
それを予測していたのか、はたまた奇遇と思ったのかは分からないが、大谷は神子が停止している内に彼女を己が羽織る羽織の中へ入れる。
神子の肩を抱く様にして。
「お…お、大谷さん!?」
「何をそんなに驚く必要がある?ぬしは滑稽よ、コッケイ」
「滑稽!?酷いですよ、大谷さん…!」
「ヒヒヒッ…」
頬を僅に赤く染めて憤怒する神子に対して、大谷は心から楽しそうに笑う。
憤怒する神子であったが自分の肩に回されている、大谷の腕から直感する暖かみで、ふつふつと幸せを感じていた。
何処にでもいる、極普通の夫婦が晩冬を終えて新春を迎えるだけなのだが、それが本当に幸せに思えるのだ。
「大谷さん…これからも、よろしくお願いしますね」
「今頃にか?ヒヒッ…悪くない、ワルクナイ」
己の腕に寄り添う神子に大谷は幸せそうにニヤリと笑うのだった
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