物置というか供養所というか
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「マルコ隊長!すきです!」
これでもう何回目の告白だろう。
1日1回は最低でも言ってる×数年だから、優に5,000回は超えている。そろそろ10,000回いくのではないだろうか。
そんな愛しの相手は、ちらりと名前を見るなり眉間を押さえて溜息をついた。失礼な話である。
「名前…今日も朝から元気だねぃ…」
「はい!おはようございます!マルコ隊長は今日も素敵ですね!すきです!」
「………」
もはや返答もない。けれどそれも慣れたもので。
呆れ果てているのだろうに、それでもわたしを無視したりはしない。そんなところも好き過ぎて、考える前に口から愛の言葉が出てきてしまう。いや好き。
「オメェも大概しつこいよなぁ…」
口を挟んできたのはテンガロンハットのそばかす男、エースだ。こいつはマルコ隊長を夜の街に連れ出す奴なのでわたしの敵と認識している。
「いつ何時何が起こるかわからない海賊人生ですからね、言いたいときに言いたいこと言っとかないと」
「…まぁ一理あるな」
「そうでしょうそうでしょう」
「てわけでマルコ、いつ何時何が起こるかわからない海賊人生だそうだし、今夜街に遊び行こうぜ」
「?!?!」
こいつわたしの発言を逆手にとりやがって!!!
エースは見下したように横目でちらりと視線を向けて、口の端で笑った。
「あー、今日は先約があるんだよぃ」
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中略
以下なんやかんなあって部屋で寝ていた名前にマルコがキスしたら実は起きてた的なよくある展開
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「そのチューはさー、イケるかどうか試してみた的なことですか?」
「な、お前起きてたのかよい?!」
「え、そりゃまあ…」
「………」
「ねぇねぇねぇねぇ」
この機会を逃さないという気合を込めて、マルコ隊長をジッと見つめる。
マルコ隊長は口元を押さえ目を逸らしていて、表情が見えない。やらかした、とでも思ってるのだろうか。ギュッと心臓が痛くなったけれど、でも。
そしてしばらくの沈黙の後、観念したかのように、溜め息と共に小さく呟いた。
「……気の迷いだ」
****
中略その2
なんとかなかったことにしようとするマルコに、でもちゅーしたじゃん!つって名前が押して押して押すところから
****
「オレはいい歳のオッサンだよぃ」
「ちょうど脂が乗ったいい年齢ですよね」
「ハァ…親子ほど離れてる、わかるよな?」
「たかだか20歳差ですね」
「…………」
「そんなしょーもない理由で過去数年間わたしの気持ちを無碍にしていたことがここで判明した場合、わたしはキレ散らかす可能性がありますが」
「な、おいやめろお前の能力は周囲への被害が甚大なんだよぃ」
「だって」
名前にとっては、人生で一番重要なことなのに。
名前をそういう対象として見れなくて、とか。他に好きな人がいて、とか。
それならまだギリギリ自分を納得させられる。嫌だけど。いやもう全然いやだけどね?
でも、歳の差を気にして…なんて理由で、説得できると思わないでほしい。それはない。わたしの数年間の気持ちに失礼だ。
「ハァ…歳を取るとな、臆病になるんだよぃ」
「はぁ」
「お前はまだ若いよぃ」
「まぁ」
「これからいくらでも、何でもできる」
「…」
「ここじゃない場所でも」
「…」
名前に、そしてもしかしたら自分自身にも言い聞かせるように、静かに諭すように話すマルコ隊長。その瞳を見ても、やはりただ名前自身のありのままを見て出した答えだとは到底思えなくて。
であれば、納得なんて、できない。
「……でも、わたしにとってはマルコ隊長の存在以外、何の価値もありません」
マルコ隊長の、瞳が揺れる。
「マルコ隊長がわたしに異性として何ひとつ興味なくて、むしろ他にいい人がいて逆に迷惑で、今後万が一にも関係が変わる可能性もゼロで、わたしがマルコ隊長のことを好きでいることでマルコ隊長に不都合とか不利益しか生じないということが今この場で断言できるというのなら、わたしだって潔く諦められるように一旦努力くらいはします」
「………」
そんだけ拒絶しても努力してみるレベルなんだ…とマルコ隊長がやや引いている気がしたけれど気にしない。だって諦められる気がしない。わたしは後悔しないように生きるのだ。
「…でも、マルコ隊長がわたしのことを考えて、わたしのために、って、自分からその可能性を潰していってるなら…、それは、わたしにとっては、死ぬほど好きな人に真正面から向き合ってもらえなかったっていう事実が残るだけ」
「………」
「ねぇマルコ隊長、マルコ隊長が今言ったことで、わたしにとって障害だなって思えること、ひとつもない。わたしが100まで生きるなら、マルコ隊長に120まで生きててもらえばいいだけ。違う?」
「………」
「わたしが自分で決めた居場所はマルコ隊長の傍で、わたしが船を降りる時はマルコ隊長がこの船からいなくなるときだけだよ。」
「………」
「マルコ隊長がここにいるなら、わたしもずっと一緒にここにいるって決めてる。…マルコ隊長がすき。わたしの気持ちが変わるような未来を想定して、勝手に決めつけてるのはマルコ隊長でしょ。わたしの気持ちを、想像で押し計らないで。わたしは絶対、マルコ隊長の側にいるってもう決めてるの。」
結構な愛の告白をしていると思うのだけれど。何をどう言ったらこの気持ちが120%伝わるんだろう。
でも今の発言はさすがにストーカーと紙一重だったかもしれない。…引かれたかな?と、マルコ隊長のご尊顔に焦点を合わせれば、マルコ隊長は難しい顔をしたまま。
でも、わたしのことをちゃんと見ている。目が合う。
ああもう、簡単なわたしはそれだけで幸せになってしまって、結局言いたいのはこの一言だけなのだ。
「マルコ隊長がすき。だいすき。
……別に、これからもこのままでもいいんです。勝手にわたしの気持ちの程度を推し量られたのが、ちょっと嫌だったの。ごめんなさい。
…うん、いいの。こっちも勝手にずっと言ってるだけだから」
別にマルコ隊長を責め立てたいわけじゃないし、あんまり追い詰めてもアレだよね、いい女は引き際も大事。というかよくよく考えたらほぼストーカーの私がどうこう言える話じゃない気もしてきたしね?訴えられたら負けるしね?
あれコレちょっとやばい?と冷や汗をかいてると、マルコ隊長が静かに息を吐いた。大きくて官能的な(個人の意見です)手が自らの額を押さえる。何その大きい手に長い指エロい触りたーいという気持ちと、頭痛くなるくらい言い過ぎちゃったか…?という焦りに駆られた。
「名前は…真っ直ぐだねぃ…」
「え、あ、まぁ。それだけが取り柄だもんで」
「歳を食うと…だめだな。これからのことをテメェで勝手に想定して、一番安全な…傷つかない、道を、選ぼうとする」
「経験値豊富故の弊害ですね」
「そうだな…、あたかも相手のためみてェな理由をこじつけてな」
「大人って厄介」
「オレも、そうしてた」
「マルコ隊長、結構慎重ですもんね。頭もいいし。そんなとこもすきですよ。」
「オレも、お前が、好きだよぃ」
「いや絶対わたしのほうが、…………って、え、え?」
…聞き間違いだろうか。
雑談かと思ってたから適当に返事をしていたところにこの爆弾投下。え、え、なんて???
あまりの衝撃に瞬きすら忘れ、やっとのことで顔を隣のマルコ隊長にむけると。
「好きだったんだ、きっと、ずっと」
「???」
「名前の言う通りだ、テメェの中で無理やり理由をこじつけたり、理屈捏ねたりしてた」
「…………」
「そうやって自分の中で正当な理由をつけて、お前から諦めてくれれば、…ってオイ今数年来の結構な告白をしてるっつーのに、どういう顔してんだよぃお前は」
「え、え、、いやあの、夢か妄想かと思って、」
「現実だよぃ」
「マルコ隊長の突然の手のひら返しに理解が追いつきません」
「おま…!せっかくこっちも腹決めたとところなのに、言うなそういうことは」
「いやでもだって」
いや、でも、だって。ねえ?
「え、あー、じゃあとりあえずこのまま一緒に寝ます?」
「お前にはムードもクソもねぇのか…」
「いやだって!夢かもしれないしマルコ隊長の気が変わるかもしれないし!善は急げ!!」
マルコ隊長がまたひとつため息をついたので、またなんか呆れられたのかななんて思ったけれど。その後わたしに向けられた瞳は今までに見たことのないような色をしていて、その色香に思わず身体が硬直した。
マルコ隊長が口端でフと笑みを漏らし眼鏡を外す様子に、なんて色っぽくて素敵なんだろうとうっとり見惚れていると、スローモーションのようにマルコ隊長の唇が近づいてきて、わたしの唇に触れた。
頭が真っ白で相変わらず硬直していると、唇を何度かついばまれ、その上舌でなぞられた。
「…名前、力抜いて」
「……」
「じゃ、オレの名前、呼んで」
「………マルコ、たいちょ、」
何をどうすればいいかもわからない大混乱の中、名前を呼ぶくらいならできそうだとなんとか小さく口を開いた瞬間、再度マルコ隊長の顔が近づき、口内に温かい何かが侵入してきた。
「んぅ、」
マルコ隊長の舌が何か別の生き物のように自分の舌に絡んできて、呼吸もままならなくて、反射的に顎を引こうとしたけれど後頭部を押さえられて、逃げられなくて。全然展開についていけなくて頭はぐちゃぐちゃだけど、とりあえずただ一つこれだけは言える。
なにこの展開死にそう…!
夢だった起きた瞬間絶望死するかもしれない。
どのくらい経ったのか、実は一瞬のことだったのかのかもわからないけれど、ようやく解放されたと思ったら、まさかの腰が抜けた。ていうかこの場合はくだけたが正解なんだろうか。マルコ隊長パネェ。
床に座り込んだわたしの目線に合わせて、マルコ隊長もしゃがみこんでくれる。
「マルコ隊長、」
「…悪ィ、無理させたか」
こんなに激しく求められた後の気遣いの視線…心配そうに細められた目…やばい死にそう。すき。
これが現実だというならば、一刻も早くやらねばならないことがある。
そう、作るのだ、既成事実を。(倒置法)
「えへへへへへへへへ」
「……」(やや引き)
「マルコ隊長、すきです」
「名前、」
「とりあえずお姫様抱っこをお願いします!」
「…………お前な…」
呆れを滲ませながらも、軽々と抱き上げてくれるこの上腕二頭筋の素晴らしいこと…!
夢みたいな気持ちでふわふわしながら、マルコ隊長の顔を覗き込む。目が合えばその表情を緩ませてくれて、それだけで泣きそうなくらい幸せだ。
「マルコ隊長、」
「なんだよぃ」
「マルコ隊長」
「だからどうしたって」
「ふふ、マルコ隊長、すきです」
「………知ってるよぃ」
「わたし初めてなのでよろしくお願いしますね!」
「?!」
「いやだって、ずっとマルコ隊長一筋でしたし」
いや、まぁそうか…そうだな、と口の中でゴニョゴニョ言っているのが聞こえた。何故か逆に赤くなっているマルコ隊長が妙に可愛い。
「ていうか他の人で試してみたけど、普通に無理でした。わたし好きな人じゃないとできないタイプっぽい」
「?!」
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