物置というか供養所というか
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「何ですか、シャンクスさん」
つれない返事もいつものことで。
甲板に座り込んで本を読むその後ろ姿が、あまりに小さく頼りなく見えて、ふと不安になった。そんなことを告げたら、彼女はどんな表情をするのだろうか。
「いやぁ?日々頑張ってる名前をたまには無限に甘やかしてやりてェと思ってさ」
よく言えば自立している、しかしそれはこの少女が一人きりで生きてきたであろう証でもあって。
誰にも期待しない、頼らない、信じられるのは自分だけだと、なんでも一人でなんとかしようとするその姿が、それなのに周りには施しを惜しまない名前が、いつか擦り切れてくたびれてしまうのではないかと、漠然と不安になった。
「なんかねぇか?してほしいこととか」
「いや特には」
「よしじゃあ今日は目一杯甘やかしてやる、こい」
「いや特にはって言っ、ぎゃあ!ちょっと!」
名前の腕を引いて自分の腕の中に引きこめば、すっぽりとおさまって。細くて薄い肩に手をかけ、ぎゅっと抱きしめる。
「よしよし」
「いや猫じゃないんだから!もう!」
もし本気で抵抗するのなら、実際名前の能力であれば簡単に抜け出せるのだろう。
それでも彼女は俺のしたいようにさせてくれている。嬉しくもあるが、こういうところが心配でもあるのだ。
諦めたようにおとなしくなったと思ったら、ふと、名前が振り向いた。焦茶色の瞳が、真っ直ぐに自分を射抜く。
「…シャンクスさんは?」
「?なんだ」
「あまやかしましょうか」
「……」
名前を甘やかす、という名目で、実は己の不安を拭いたかっただけなのかもしれない。
この軽くて小さな存在は、そんなこともお見通しで。
「体は簡単に治るんですけどね、心は難しいですよね」
そう言って見上げてくる彼女の瞳は吸い込まれそうな不思議な、があって。
俺のことなど大して話してもいない、知らないはずなのに、その目は全てを見通しているようだ。
「…甘やかして、くれるか」
「特別ですよ?」
ああ、と小声で呟けば、名前はゆっくりと膝立ちになり、俺の頭をその胸と腕で包み込んだ。こわごわと腕に力を入れてくる様子が、とても彼女らしい。この自分よりよほど細い腕が、どれだけ自分自身を支えてくれているのか、彼女は知らない。
壊れないように優しく抱き返すと、名前も小声でふふっと笑った。
「……………名前、あー、当たってる」
「…?」
一瞬の間の後、気づいた名前はパッと両腕を挙げた。見上げれば、その顔は耳まで真っ赤だった。
「ななななななな、いや違くて、たまたまで、」
あわあわと弁明を試みる名前が愛おしくて、思わず笑いが漏れた。
「もっかい」
「もうしません!」