シャンクス長編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
波の音がするなぁ…そんなことを考えながらうっすらと目を開けると、名前の目に映ったのは見知らぬ天井だった。
ここはどこだったっけとぼんやり考えていると、その視界の端に鮮やかな赤色が映り込む。
「お、目ェ覚めたか!痛いとこねェか、どっか具合悪ィとか…」
心配そうな視線を向ける赤髪の男を見て、そういえば赤髪海賊団の船に乗せてもらったんだったと名前は思い出した。しかしなんでこの人わたしの部屋にいるんだろう…と体を起こそうとした。その時。
「いっ、…!」
体が、というか節々が、ギシギシと痛む。
なにこれ関節が動くタイプの人形みたい、と訳の分からない考えを巡らせつつ、なんとか上半身を起こすことに成功したものの、頭はずっしりと重い。
「おまっ…急に動くな!しばらく寝てろ、4日も寝込んでたんだぞ」
(4日…?)
疑問が顔に出てただろうか、シャンクスが苦笑いで水の入ったコップを差し出した。
「…まぁとりあえず、水でも飲め」
「ぁりがとう、ございます」
心なしか声も掠れてる気がする。
人間て4日も寝てられるんだろうか。水分不足で死ぬのでは…。というか点滴とかいるのでは…?排泄は?やらかしてないよね??と、名前の脳内は一気にハテナマークと諸々の不安でいっぱいになった。
「オレの腕を治してくれたのは覚えてるか?」
ああそんなこともあったなと思い出し、ハッとシャンクスの腕に視線を向けると。
「…、ある…。」
「あぁ、お前のおかげだ。」
「触っても…?」
シャンクスはニコリと微笑みベッドの脇まで近づくと、サッとシャツをはぎ名前の横に座って左腕を差し出した。またもや端正な左半身が露わになったわけだが、今の名前は自分が生やしたシャンクス左腕に目を奪われ、それどころではなかった。
両手で継ぎ目(と言っていいのかわからないが)をそっと包む。
(ほんとに生えてる…)
生やした腕の方が色が白く、右側の腕より筋肉がない。生まれつきの状態の腕がこれで、なかったものを生やすとこういう状態で生成されるんだろうか。肩側には傷跡がそのまま残っているが、腕側にはない。本当に”ここから新しく生えましたー!”って感じだ。そのため継ぎ目はわかりやすく目立っている。
これが自分が生やした腕だというのは、なんとも不思議な感覚だ。
腕を包んでた手のひらをそのまま肘へ、まじまじと観察しながらゆっくり下へ移動させ、手首、そして手のひらへ。
「動きますか…?」
「…ん?あ、ああ。」
ぼーっとしていたらしいシャンクスが、2、3度手を握ったり開いたりと動かした。
(動いてる…)
「改めて、お前のおかげだ。ありがとうな。なくても特別不便はないと思ってたし、後悔もなかったが…。やっぱり両腕あると違うもんだな」
シャンクスが感慨深そうに自分の腕を見つめているので、名前も自然と笑みが漏れた。喜んでもらえればそれは嬉しい。
「右と…太さ違いますよね…」
「ああ、これからまた鍛えるさ、」
「無事生えてよかったです。本当に。」
「…2本生えたり背中から生えたりしなくてか?」
シャンクスが揶揄うように言う。
「…あ、あれは!その…まぁもし万が一を考えて…念のため…」
とっさにシャンクスから視線を逸らしたが、クックとおもしろそうに笑っているのがわかる。三十六計逃げるに如かずが名前の信条だ。ゆえに万が一逃げ道を残すのはとても大事だと思う。
しかしシャンクスはしばらくすると笑うのをやめ、名前の目を見て口を開いた。
「…本当に、ありがとな。」
「いえいえ全然!お気になさらず!…逆に人体実験に付き合ってくださってこちらこそありがとうございました。……腕って生えるモンなんですねぇ…まぁ生やしたのわたしですけど…」
「…、お前な…。」
人体実験て、とシャンクスは複雑そうな顔をしていたが、名前としても本当に貴重な体験ができて感謝することしきりだった。
無事腕も生えたことだし、実験は大成功をおさめた。思わず口元もにやけるというものだ。
「さて、名前も元気そうだし、何か胃に優しいモンでももらってくるか。それが終わったら念のため船医に診てもらえ。……というわけで、そろそろ離してもらってもいいか?」
何を、と言おうとしたが、シャンクスの申し訳なさそうな視線をたどればずっと両手でシャンクスの手を握っていたことに気づき、名前はものすごい勢いで手を離した。が、
「名前が目ェ覚ましたって本当かァ?!」
シャンクスとの話し声を聞いて集まってきた船員たちがちょうど駆けつけたところで、見つめあって手を握り合っていた2人(名前が握っていただけだが)を見た男たちに、この件はこの後大層ネタにされたのだった。
胃に優しいもの、ということで名前が水のようなお粥をすすっていると、船医が部屋に訪れた。
彼も初日の宴で軽く紹介してもらった、40代くらいの怖い顔の人だ。一見無愛想だが心根は優しい、とシャンクスに紹介してもらった通り、丁寧に診察して説明をしてくれた。
「能力(チカラ)の使用のキャパオーバーでな、ブッ倒れたんだと思う。あまり今まで酷使してこなかったんじゃないか?」
「そうですね、そんなに治す相手もいなかったし…」
「能力の使い方がなってねェんだ、体が能力についていってねェから、この前みたいに一気に能力を使うと体が保たずにブッ倒れる。この4日間は体の回復のためにひたすら寝てたってワケだな」
「はぁ、、」
「4日も寝てたから体は鈍ってるだろうが、それだけだ。体に異常はねェようだから食って寝て動いてりゃそれですぐ元に戻る」
「…はい、ありがとうございます」
やや怒られてる気もするのだが、それも名前を心配してのことだと思えば嬉しい気もした。
とはいえ、じゃあこれからどうしたらいいのか。
「今後同じようなことで倒れなくなるには?片っ端から大怪我の人治してって能力の使い方に慣ればいいですか?」
「理屈上はそうだな。まァこの船に乗ってる以上練習の機会もたびたびあるだろ、…せいぜいオレの仕事を減らせるよう頑張ってくれ。ブッ倒れたら面倒くらいはみてやる。」
ニヤリと悪い笑顔で言われ、アレ心根は???優しさとは???と名前は思った。
「まぁアレだ、お頭のことは、オレから言うのもアレだが…ありがとな。この件はみんなお前に感謝している」
「え、いや全然そんな…」
突然の鞭と飴の飴発言にアワアワしていると、ポンと頭を撫でられた。
「今日はしっかり養生しろよ、そんでしばらくは1日1回医務室に顔出せ。」
じゃあな、と後ろ手に手を振ると、ゆっくりと部屋を出ていってしまった。なんだかんだ病み上がり(?)の名前を気遣ってくれたのだろう。心根の優しい人なのだ、たぶん。
…しかしこの船の人たちは気軽に人の頭に触りすぎじゃないのか。いや別にいいんだけども。仮にも成人女性だというのに、子ども扱いされてる気がしてならない。
でもまぁそれも実はイヤじゃないんだよな、という気持ちには気づかないふりをすることにして、やかましい男どもが見舞いの体で手繋ぎ事件について冷やかしに来るのを阻止すべく、名前は部屋の鍵を閉めてもう一度布団に潜り込んだのだった。
(だって今日は養生しろって言ってたしそれって寝てていいってことだもんねたぶん…zzz…)
2/10ページ