長編パラレル
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確かに、酔っ払うと陽気になる方なんだなとは思っていた。
が、今目の前で異常なまでにニコニコしている名前は、完全に俺が知っているその人物とは違っていて。この前寄った島で仕入れてきた珍しい酒との相性が良くなかったのだろうか。いや、この場合相性はいいと言うべきか?
とにかく隣でやたらご機嫌にその酒を飲み続ける名前を見ながらそんなことを考えていたら、ふと目があった。視線に気づかれたらしい。
「シャンクスさん、なんですかその顔〜」
プンプン、という効果音が聞こえてきそうな顔と挙動。名前の顔したこいつは一体誰なんだ、とつい胡乱な目で見つめてしまう。
「シャンクスさん、このお酒すごい美味しいんですよ?ほらほら、飲んで飲んで」
「…名前…お前どんだけ飲んだんだ?」
「そんな飲んでないです!」
満面の笑みで間髪入れず返事が返される。
そしてハーイとばかりに真っ直ぐに伸ばされた腕。
完全に酔っ払いだとシャンクスは確信する。
「お前、今日はもうやめとけ」
このままだといろいろ危険だと判断し、名前が持っていたジョッキをヒョイと取り上げると、ご機嫌だった表情は一気に悲し気な顔に変わる。
「ああ!わたしのお酒…!返してください」
「…酔い過ぎだろ」
ため息混じりにそう言えば、名前はあからさまにムッという顔をする。かと思えば、イタズラを思いついた子どものようにニコっと笑った。
「いいです〜シャンクスさんの飲みます〜」
「あ、オイ、」
シャンクスの前に置いてあったジョッキ、しかもなみなみと強めの酒が入っているそれを器用にも零さずにサッと奪い取ると、そのままゴクゴクと一気に呑み干してしまった。
パッとグラスから口を離し、にへらと笑う。
「おいしい〜」
「……お前な…」
普段どれだけ飲んでもこれほど酔っ払ったところを見たことはなかった。本当に今日はどうなってるんだこいつ。
ヤソップさんおかわりー!とハイテンションで近くにいたヤソップに絡み出すと、ヤソップはシャンクスの動向を伺うようにチラリと視線を向けた。微かに首を振ればその意図が伝わったようで、「もうやめとけ」と名前を諌めたものの、食い下がる名前にたじろいでいる様子が見てとれる。
仕方なく一つため息をつき、名前に向き直った。
「…オイ名前、今日はもう本当やめとけ。つーかそろそろ部屋帰って寝ろ」
その声に、名前がピクリと反応し、ゆっくりと振り向いた。
「…こんなに盛り上がってるのに?一人寂しく?部屋に戻って?寝ろって??」
その眉間にはこれでもかと皺が寄っている。
しまった、癇に障ったらしい。
「ぜーったい、嫌です」
ニッコリとそう告げる名前の満面の笑みには、確固たる意志を感じた。
「一人寂しく部屋に帰るくらいならここで寝ます〜シャンクスさんマント借してください」
(…こいつ俺のマントを布団代わりにする気か…)
酔っ払って遠慮のなくなった名前は、そう言ってシャンクスのマントをぐいぐいと引っ張った。これ以上何言ってもめんどくさいことになるだろうと観念し、留め具を外してマントを渡してみると、あろうことが本当にその場で丸まって寝始めた。
(こいつ…本気か…?)
いつもの無駄に気遣いまくってさりげなく隙を見せず生きている名前の姿はもはや見る影もなく、完全に油断と隙しかない女がここにいる。
マントをかぶった塊が規則正しく上下に動き始めたことを確認すると、視線を上げてぐるりと見渡してみる。しかし適任者は見当たらず、ヤソップに至ってはわざと視線を逸らしている気もした。
とはいえ、他の誰かにこの役割を譲る気もなく、クゥクゥと寝息を立てる名前をマントごと抱き上げた。
柔らかい体をベッドにそっと横たえると、スプリングがギシリと鳴った。慌てて顔を覗いてみるが、起きた様子はなくホッと胸を撫で下ろす。今起こしでもしたらどんな難癖をつけられるかわかったものではない。
アルコールのせいかいつもより少し赤くほてっている寝顔に視線を向ければ、ムラムラっとした気が起きないでもなかったが、いかんせん今はこいつのめんどくささが上をいく。
あの酒の名前はなんだったろうか、もう絶対飲ませないようにしなければ。仕入れないようにベックにでも通達を出してもらうのがいいか、と思考を巡らす。
今回は俺の近くにいたから良かったものの、知らないところであんなに隙だらけに酔っ払われてはたまったもんじゃない。
「んん…」
突如発せられたその声にギクリと身をこわばらせたが、名前はひとつ寝返りをうつとまたスヤスヤと寝始めた。ああ心臓に悪りィ、早く甲板に戻ろう。
気配を消してゆっくりとドアへ向かう。
ドアノブに手をかけ、寝息が聞こえることを確認し、ドアをそっと押し開けようとした、そのとき。
「……ん、んん?」
「……………どこ、」
「んー、……だれ?……………シャンクスさん…?」
…起きてしまった。
勝手に宴会場を離れたことに大層機嫌を悪くしてるんであろうと腹を括って振り返ったが、暗がりでぼんやり見える名前の顔には、意外にも不満の色は浮かんでいなかった。
とはいえ言葉選びを誤ればまた面倒くさい事態になりかねない。さてなんと言い訳しようか、観念してベッドへ足を向けると、予想外に名前は両手を広げた。それはまるで、抱っこをせがむ子どものようで。
「……一人で寝るの、嫌だって言いましたけど…?」
ドクン、と心臓が波打つ。
これは反則ではなかろうか、思わず額を抑える。
効果音を付けるのであれば、キュン、で間違い無いだろう。
いやでもしかし。
「…お前の酔い方、こえェな…」
思わずひとりごちる。
「…いつもこんなんなってんじゃねェだろうな…」
「なりません〜今日は自分でも驚きの回り具合です〜」
ほんとかよ…とその顔を見れば、唇を尖らせてはいるがその腕は上げたまま。…可愛いじゃねェか。いやそうじゃなくて。
「…簡単に男をベッドに誘うもんじゃねェぞ」
そう言うと、名前は目を丸くして、広げていた腕を下ろした。少しだけ首を傾げる様子なんかは、わざとらしいのに可愛いと思えてしまうから憎らしい。
「シャンクスさん以外には言いませんよ?」
これはもう不可抗力だ。
ギシリ、とベッドに片膝をつき、名前の体を優しく抱き寄せる。すっぽりと腕の中におさまった名前は、満足気に俺の背中に腕を回し、胸に顔をすり寄せた。
しばらく抱き合ったのち、どちらからともなく視線を合わせる。目が合うと、名前はまた、にへらと笑った。
名前の後頭部に手を添えてそっと上を向かせると、自然と空いた唇の隙間に自分のそれを重ねて口内に侵入する。舌を絡めれば、酔いのせいかいつもより(というほど回数こなしてはいないが)熱い気がした。喉の方まで舌を進めると、んぅ、とくぐもった声が漏れ、グッと胸を押し戻される。
「っはぁ、シャン、クス、さん…」
唇を離せば、吐息を漏らし、潤む瞳で見上げられる。
「…けしかけたのは、お前だからな、」
逃げられないよう後頭部に添えた腕に少しだけ力を入れる。もう一度唇を重ね、今度は舌を絡ませ軽く吸い上げる。時折声が漏れてはいるが、今度は押し返されはしなかった。
そのままもう片方の手を服の下から背中に差し入れ、下着の留め具を外す。名前がビクリと反応したのがわかったが無視をして、頭を支え唇を重ねたまま、ゆっくりとベッドにその身体を押し倒した。
どのくらいそうしていただろうか。
次第に絡ませた舌への反応が薄くなってきて、まさかまた寝始めたのではないかと不安に駆られる。しかし名残惜しみながらも唇をそっと離してみれば、名前は焦点の合わないトロリとした目をしていた。上手く事が運べている証拠だと口端を上げ、次はその首筋へと顔を埋める。
滑らかな肌にこの情事の跡を残そうかと思ったが、そういえば以前それでえらく怒られたことを思い出し、軽く舐めて吸う程度に留める。首筋を下で舐め上げれば頭上で甘い吐息が漏れ出るのを感じ、気を良くしてそのまま下の方へ向かう。
衣服の下に手を差し入れ、腹部に這わす。そのまま撫で上げるように手を移動させれば、張りのある膨らみに触れる。
「…ン、」
優しく揉みしだくと、名前が少しだけ身を捩らせた。
ようやくここまで、となんだか感慨深い気持ちと、酒の流れで致してしまっていいものかという気持ちが同時に浮かんだが、その頂点の突起に触れた際に名前の唇から漏れ出た声で、そんな思考は一瞬で消え去った。
衣服をたくしあげ、ここら辺ならいいだろうと、胸の膨らみ始めのあたりに狙いを定めて唇を寄せる。
斜め上から見下ろせばTシャツの襟ぐりから少しだけ見えるであろう位置。
これでちったぁ服装にも気を使うだろう。気をよくして強めに吸い上げれば、鮮やかな赤色が散った。
自分のものという印をつけられたようで、少しだけ気分が高揚する。
自然に上がってしまった口角を戻し、顔を上げて名前へ視線を戻すと。
スヤスヤと寝息を立てていた。
状況が飲み込めず、今し方残した赤い跡に目を向ければ、そちらも規則正しく上下している。
「………………………ウソだろ…」
「…名前、」
格好悪いのは重々承知で、声をかけ軽く揺さぶってみる。が、微動だにしない。
完全に深い眠りに落ちている。
「……………………ウソだろ………」
目が覚めると、頭はガンガンと痛むし、さらに横にはかつてないほど憔悴した様子のシャンクスがいたので二重に驚いた。
昨日は確かこないだ寄った島で仕入れてきたお酒で宴が開かれて…。数杯でフワフワしてきて、楽しかったように思うけど、記憶がほとんどない。
なんでわたしの部屋にシャンクスさんがいるんだろう。
念のため「(わたしに)なんかしましたか?」って聞いてみたところ、とんでもなく長いため息をつかれた。なぜだ。
まぁでも酔っ払ったわたしが何かしらやらかした可能性もあるので、とりあえず謝っておくことにする。
「えーと、何かご迷惑お掛けしてたならすみません」
「…………いや」
「……」
いやコレ全然「いや(いいよ)」って顔じゃない。こわい。
「…あの、」
「お前、もうあの酒やめとけ」
「え?あ、そうですね…。なんかすごい回りましたし、二日酔いもしてるし、もうやめときます」
とりあえず怒ってない…のかな?
何故かそのままわたしのベッドで寝てしまったけれど、今日は文句をつけずそっとしておくことにした。
この後、食堂でたまたま会ったヤソップに昨晩の醜態(とんでもない絡み酒からのマント奪って寝落ちの流れ)をふんわりと聞いて、シャンクスにジャンピング土下座をしに行ったのはまた別のお話。
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