長編パラレル
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キラキラと波飛沫が輝き、海風が心地良い。
頭上からは燦々とした日差しが降り注ぎ、日陰にいるのがちょうどいいくらいの陽気だ。
本日各所の手伝いも終わり、時間を持て余した名前はレッドフォース号後方の椰子の木の下で、のんびり読書タイムを楽しんでいた。
(最初はびっくりしたけど、ここに椰子の木植えてあるのは大正解だなぁ)
ぐるりと見渡せば、そこかしこに鍛錬に勤しんだり武器の手入れをしたりする船員が見える。
みんな思い思いに過ごしている様子を眺めた後、読みかけの本を開いて目を戻した。
蔵書室から持ち出した人体についての書物だ。自身の能力を使う上で、人体の構造について知ることは重要ではないかと思い借りてきたのだが、なかなかに面白い。自分自身の体のことでもあるのに、知らないことばかりなのはとても不思議だ。
しばらく本を読み耽り、ふと顔を上げると、周囲の船員が一人もいなくなっていた。キョロキョロと周りを見回すと、隣に赤毛の男が座っていて、名前はギョッとした。
「…シャンクスさん…?」
「おぉ、すげェ集中してたな」
思わずその名を口に出せば、シャンクスはゆっくりとこちらに向き直りニッと笑った。いつからいたんだろう、さすが一流の海賊は気配を消すのが上手い。
何か用だろうか、と聞いてみる。
「どうしたんですか?」
「ん?いや、気にすんな」
気にすんなと言われても。
なんだか見られてるような気もするし、気づいてしまったからにはどうにも気になって仕方ない…と、名前は仕方なく少し体勢を変えて、シャンクスに背を向けることにした。
「………」
本を開き直してみたものの、全然頭に入ってこない。ほんと何しにきたのこの人。
と、その時、背中に人肌を感じ、名前の全身に衝撃が走った。
「………?!?!?!な、な、な…」
視線を下ろせば、腹部に回された二本の腕。
背中が温かい。チラリと横に目をやれば、赤い髪といたずらそうな瞳が視界に入った。
どうやらシャンクスに後ろからハグされている状態であるらしい。
「な、何してるんですか?!?!」
「あァ、気にすんな、どうぞ続けて」
「続けられるかァ!」
シャンクスが名前の肩に乗せた頭を擦り寄せてくるものだから、頬に髭が当たって少しだけチクチクとした。髭剃ってくんないかな、いやでも髭剃ったら若く見えちゃって威厳がなくなるとかかもしれない。だから生やしてるんだろうか、だってコレ完全に無精髭だもんね、
…いやちょっと待て今それ考えてる場合じゃない。
「ちょっと、離してください」
「嫌だ、と言ったら?」
「嫌だじゃないんですよなんなんですかもう!」
「まぁまぁ、減るもんじゃねェし」
「いや減ります。何か、ほら…、わたしの希少価値とかが減ります!」
「……それは一理あるな」
「わかったらハイ、すぐ離れる!」
「えー…」
「えーじゃないんですよもう!」
「いやだって最近女の体触ってなくてな」
(くっっっっっっだらねぇ理由………)
名前はスッと冷静になり、うっかりドキドキしたことを反省した。こんなしょーもないことにドキドキする体力が勿体無いというものだ。
「…次の島までお待ちください。ていうか船長権限で最寄の島に寄ればいいじゃないですか、船内の手頃なところで手を打とうとしないでください」
容赦なくピシャリと言い切れば、しばらく待ってもシャンクスからの返事はなく。
言い過ぎただろうか、いやでも至極真っ当なことしか言ってないはず、と思ったその時、名前の腹部に回された腕の締め付けが少しきつくなった気がした。
「誰でもいいわけじゃねェんだよなぁ…」
名前への返事というよりは、一人言のような呟きの意味を理解した、その瞬間。
「———!!!」
顔が熱くなるのがわかる。
またそんなこと言って、とか、これだからタラシは!とか、いろんな言葉が頭をグルグル回ったものの、口には何も出てこなかった。
名前が真っ赤になった顔をシャンクスから隠すために必死にそっぽを向くその微笑ましい様子を、空気を読んで席を外した船員達が生暖かい目で見つめているのに、終ぞ気づくことはなかった。
3/14ページ