長編パラレル
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「…だるい…」
「申し訳なさ3割、自業自得では?って気持ちが7割ってところでしょうか」
「…もっと優しくしてくれ」
名前の熱が1日で下がりホッとしたのも束の間、入れ替わりでまさか自分が熱を出すとは。
熱なんて何年、…どころか何十年ぶりか?むしろ風邪なんてまともに引いたことがあっただろうか。
そんなんだから、「あのお頭を侵した病原菌ヤベェ」とかなんとかで、今オレの部屋には誰も近付かず、なんなら今船内では副船長であるベックからオレへの接触禁止令が出ている始末である。
「仮にも四皇の船がウイルスで全滅するワケにはいかねェ」とのことらしい。体良く雑に扱われている気がしなくもないが、まぁベックらしい賢明な判断だと思うことにした。
そしてその病原菌をオレにうつしたであろう名前だけが、もう罹らないだろうからと、看病担当に任命されて、今ここにいるという次第である。
「…………そろそろ手を離してもらえませんか」
先日とは逆に、ベッドの脇に椅子を置いて腰掛けている名前の手を握りしめたまま、オレは病床に伏していた。いい加減うんざりしたという表情で、名前がそう小さく口を開く。
「嫌だ、離すとどっか行くだろ」
「…そりゃまぁ…。他にもやることがありますし…」
「オレにはお前しかいねェんだぞ」
「誤解を招く言い回しはやめてください」
「………熱なんて滅多に出さねェが、なんとなく心細くなるモンだな」
「…………」
わざとらしくそう呟いてみると、名前はオレを見つめたまま口をつぐんだ。存外心に響いたらしい。それかコイツのことだから、たぶん3割以上に、うつしたことに責任を感じているのだろう。
「なんか欲しいモンねェか、って聞いてくれねェのか?」
「……だって絶対しょうもないこと言うじゃないですか…」
「まさか」
眉間に皺を寄せる名前をじっと見つめると、耐えきれなくなったらしい名前の方が先に、気まずそうに視線を外した。
自分に0.1割でも非があると思っている時の名前は、ものすごく押しに弱いことを、オレは知っている。
「………名前」
熱っぽい視線(実際熱もあるしたぶん目も潤んでる)を向け続けると、名前はものすごく眉を顰めた後に、渋々と口を開いた。
「…………何か欲しいものありますか…?」
「寒気がするから添い寝してくれ」
「イヤです」
秒で断られた。まぁわかっちゃいたが。
珍しく自分の身体が弱っているこの状況をうまく利用できないかと考えるものの、慣れない発熱のせいだろうか、思ったように頭が働かない。
ぼんやりと名前の顔を見つめていると、呆れ顔をしていた名前の表情に、じんわりと心配の色が浮かんだ。
「あの、お布団追加で持ってきましょうか」
「………ああ。熱が上がってきた気がする」
「え、本当に?ちょっと触りますね」
椅子から立ち上がり、中腰の体勢でオレの額に手を伸ばす名前。チョロすぎる。
こういうところが隙だらけなんだよなぁと思いつつも、せっかくできた隙は逃すまいと、伸ばされた名前の手を掴んだ。上体を起こし名前の身体を引き込んで抱き止めると、抱え込んだままくるりと身体を半回転させ、一緒にベッドへと倒れ込む。
すると、ベッドに横たわり、向かい合ったまま、横向きで見つめ合う体勢になった。
「な、なに…?!」
一瞬のことで何が起こったのか状況を飲み込めて居ない名前を、そのままぎゅっと抱きしめる。
「シャンクスさん?!熱は?!?!」
「…上がってる」
「じゃこんなことしてる場合じゃないじゃないですか、ちょ、離してください」
「いやだ」
「いやだ、って…子どもじゃないんだから…」
病床の身を案じてか、名前はいつもほどは怒った様子を見せず、抵抗する力も心なしか弱い気がした。
なるほど、たまの風邪も悪く無い。
「…もう、大人しくしてないと治りませんよ?」
「…………知ってるか?」
「?」
「熱ってな、汗かくと下がるらしいぞ」
「……」
名前の腰に回していた手を、そっと衣服の中に滑り込ませ、くびれに沿って指を這わせる。
「ひやあ!!!!!」
「…熱、下げてくれるか」
「!!」
唇が名前の耳に触れるか触れないかの距離感でそう囁くと、その意図を理解したらしく、反抗するように真っ赤な顔でこちらを見上げてきた。その表情もそれはそれで欲情を煽り、逆効果なんだがなぁと思うけれど、本人は気づいていないらしい。
こういう方面に関してはかなり単純にできている名前の思考回路を先読みし、名前が顔を上げた瞬間、躊躇なく唇を重ねた。
「……んん、」
反射的に身を捩った名前を身体を、腰に回した手で押さえ込み、もう一方の手は名前のうなじあたりに添える。
舌を絡めると、名前の口内がいつもより熱くない気がして、自身の身体が熱を持っていることをそんなところで再認識した。名前はというと、押し返してくる力もいつもより弱く、病人相手に力一杯抵抗していいものかと悩んでいる様子が感じ取れる。
その目と目が合い、動きを止めた。
少し困惑しているような、何か言いたげな名前の瞳に、名残惜しみつつも唇を離すと。
「………熱、上がってますよね」
お互いの体温を感じあったことで、名前もオレの熱の程度がわかったのだろう。
大人しくしてろと、じっと視線で訴えかけてくる。
「………ハァ」
目は口ほどに物を言う。ため息をひとつ吐き、名前の身体を拘束していた腕の力を緩めた。
この状態でなお、純粋に俺の病状の心配をしている名前に、完全に毒気を抜かれてしまった。
「わーかったよ、わかった。何もしねェから、隣で寝るくらいならいいだろ」
「…………」
「…本気でボーっとしてきたし、ちゃんと寝るから」
「………仕方ないですね…」
疑いの眼差しを向ける名前に、真面目な顔をしてそう言うと、渋々だが是の返答が返ってきた。
しかし名前はモゾモゾと動いたかと思うと、くるりとオレに背中を向けた。
「……オイ」
「…だってシャンクスさんすぐ変なとこ触るんですもん」
「……………こことか?」
「ぎゃあ!!!!もう!バカ!」
戯れに軽く胸を揉んでみたら、その手を名前に叩かれた。そして勢いよくオレの腕から抜け出して起き上がったかと思いきや、一瞬何か考える素振りを見せ、意外にもソロソロと腕の中に戻ってきた。
「…珍しいな」
再度名前の身体に腕を絡めると、その手を名前の手に片方ずつギュッとつかまれた。イタズラができないようにということだろうか。しばらく待ってもそのままな様子を見るに、どうやらこの状態のまま寝るつもりらしい。
いつもならそのまま逃げていくのに、と不思議に思いその顔を覗き込もうとするが、体勢が悪く、名前の表情は見えない。
「………こないだ、シャンクスさんも目が覚めるまでいてくれたので。………このままなら、シャンクスさんがいいって言うまで、ここに、います」
小声でぽつりぽつりと呟く名前の耳が、一目でわかるほどに真っ赤で。思わず抱きしめる腕に力が入った。
「?!」
驚いて硬直する名前に、頰を寄せる。
「…ここ、いっそ二人部屋にするか」
「いやそんな永遠にはいませんよ?!」
「ベッドも買い換えなきゃな」
「あ、いや嘘ですもう部屋に帰ります」
「…逃がさねェ」
「ぎゃー!もう!本当に病人?!?!」
この生殺し状態のまま寝る、っつーコトの方が身体に悪りィ気がするが、わかってねェんだろうな…。
そうしてオレも、観念して目を閉じた。
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