ランチtime
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今日もHLはいつも通り喧騒と狂騒と、どんよりとした霧と独特の甘く腐ったような香りに包まれている。仕事場からお昼を買いに人外の侵入を拒む地区「隔離居住区の貴族(ルビ:ゲットー・ヘイツ)」に足を進める。ガラスで出来た建物で覆われており、バザールのような明るさと人工的に描かれた空が外の喧騒と霧で覆われたヘルサレムズロットと対照的でめまいがする。。なんとも皮肉な場所だ。
「すみませんジャックロケッツバーガー1つポテトとペプシM、テイウアウトで」
「かしこまりました。オーダージャックロケッツバーガーワン、ポテトMワン、ペプシMワン。ご一緒に新作のナゲットはいかがですかー?」
「あ、…いらないっす」
「失礼しましたー」
妙に語尾が間延びした店員に今日のランチを注文する。
お気に入りのチェーン店バーガー、外で人ならざるものが食べてるとえさに見えると言ってパッケージの柄付きはここにしかない。
新作のナゲットは正直気になってる。トリプルチーズの旨辛ナゲット…はぁ、食べてみたい。しかし月末は毎回ピンチなのだ、、
すれ違う人皆が食欲をそそるチーズの匂いを漂わせて、、イートインスペースからは「辛い」「水、水」と声が聞こえる……
ぐぅ……
腹から悲痛な声が鳴る。もういい早く受け取ってもって帰ろう。そうだ今日は公園で食べよう。外で食べれば気持ちも上がるかもしれない。あいも変わらず空は煙たいけれど、、
バイトで培った土地勘を使って明るい公園に足を進める。ここにしよう。白いベンチ、広場の真ん中には大きめの噴水がある。大きくて派手だけど、俺はなんだか噴水が苦手だ。。。なんだか、言葉で言い表せないけど。
もぐもぐ
いつもどおりの味、美味しいな、風が気持ちい。
「あ、レオナルド君、こんにちは」
空さんだ、髪が風になびいて、とても絵になる
「…レオナルド…君?」
レオナルド、レオナルド…?
「んぐっ?!!空ふぁ、げほっげほっ!!」
「レオナルド君?!ごめんなさい大丈夫ですか?!!」
涙ぐんで咳き込む俺の背中を空さんがさすってくれた。
「す、すみません…ぼーっとしてて」
「いえ、私のほうこそリラックスしている時にすみません」
そのあと数分「すみません」の応酬だった。
なんとなく微妙な空気になり「空さんはどうしてここに?」「気分転換で外でランチをと思って…」「そ、そうなんですか!俺と一緒ですね!あははは」なんて話してたら同じベンチで食べることになった。
ガサリと空さんが無地の紙袋から出したのは、上品な雰囲気に似合わない、見覚えのある、というか今俺が持ってるバーガーと同じだった。
「え!!空さんもバーガーとか食べるんですか?!!」
「た、食べますよぅ」
恥ずかしそうに空さんは「実は最近レオナルド君とザップさんが話してるのを聞いて食べたくなってしまって…」とバーガーを顔まで持っていき隠れるようなしぐさをした。
か細い指と大きいバーガーが不釣合いだった、小さな顔はバーガーに飲み込まれそうで、なんだか食べるのを見ててヒヤヒヤする。
外で食べるから風で髪がなびいて数回に一回薬指で髪を耳にかける姿がとても綺麗だった。
「そ、そんなに見ないでください…」
「…! す、すみません」
あわてて顔を噴水にそらした。失礼にもほどがある…!!
ぽつぽつと会話をして、話し上手で聞き上手な空さんとの会話は話すほどに弾んで心地よかった。 空さんは新商品と進められてナゲットを買ったみたいだったが、大きめのバーガー1つでお腹が一杯になってしまったらしく、大半を俺にくれた、ラッキーといわんばかりにナゲットをかじる。ジャンクなチーズとチープな辛味が食欲をそそる 空さんは辛かったらしく少し目を潤ませてヒーヒーと口を隠して息をしていた。かわいい。
「レオナルド君がいてよかったです」
「いやいや、俺のほうこそごちそうさまです!あ、後、レオでいいですよ。言いにくいですよね」
たはははと頭をかきながら言う、
「じゃあ。レオ君」
はぁん!! 胸が!!くるしい!!
はにかんで呼びかける空さんは女神のように輝いて見えた。この毎日が非日常のどんちゃん騒ぎのHLで俺はオアシスを見つけた!!
そのあとは和やかな時間を過ごした、
「クラウスさんがレオ君の食生活を気にしてましたよ」「あは~、面目ないです…」「また簡単な物でよければ私も作るので言って下さい」「いやいやいや!悪いですって!」「…お口に合いませんでした?」「めちゃくちゃ美味しかったです!!!」「ふふっ作るのは好きなんです、いつでも言ってください」「…じゃあ、、お言葉に甘えて…」
なんとも平和な時間だ。
どこからともなくラジオのバラードが聞こえる。段々と会話も減ってくる。でも心地いい空気だった。
13時になったのか、噴水が大げさにしぶきを上げた。吹き上げた飛沫はあたりの空気を冷やすように広がる。ここが霧まみれでなく日の光があったらきらきらと輝いただろう。
「……俺…噴水ってなんか…苦手なんですよね」
言ってからハッとした、なんてことを、こんなにいい雰囲気だったのに!!今にも頭をかきむしりたいほどの後悔が後頭部を引っ張った。
恐る恐る空さんの方を見ると、目を丸くした後、伏せ目がちに噴水のほうを見て
「…私も、です」
と言った。同意をもらったことに気づくのは、空さんのまつ毛は長いなぁと思った後だった。
おかしな話だ、噴水嫌いの二人が噴水を見ながらランチを取っているなんて
「あの… レオ君の故郷は…自然が豊かな場所ですか?」
そういわれてまぶたの裏にミシェラと見た湖が広がった。
「…はい、田舎でしたけど…それでも空気が綺麗でいいところです」
「……私のところもそうでした。だからなのかなぁと思います」
今まで俺が抱えていた、理由のわからない苦手意識に空さんは答えを導き出してくれるのだろうか、 続きの言葉を待つように空さんの横顔を見つめた。
「自然な水の方が、落ち着くんだと思うんです。噴水みたいに、圧力をかけてホースからでる水よりも、どちらかというと、雨どいから滴る雨水のほうが落ち着くんですよね…」
すとんと納得した音がした。
「なるほど、そうです。そうです!」
次からはほんの少しだけ晴れやかな気持ちで噴水を眺めることが出来るだろう。
なんてことない納得だった、納得できなくてもなんの支障もない些細な問題。
そんな些細な問題も空さんは大事に考えるんだ。
そのやさしい気持ちに、惹かれた。
空さんの手をとりたくなったが、今の俺には勇気が出なかった。
そうだな、ここでの、HLでの目標をもう1つ立てよう。空さんに似合うような男になって、その手を握って、思いを伝えよう。
「そろそろ、事務所にもどりますね」
「…一緒に行きましょう!」
勢いよく立ち上がると、空さんがびっくりして手元にあった紙袋を落とした、中に入っていたコーラの氷が飛び出て紙袋をぬらす。
二人であわあわと紙袋を回収した。幸先として、まぁ、前途多難ってところかな!!
心の中で悔し涙が流れた。
end.
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