きみの色、あなたの色。

  *

「若葉ちゃん。これ、もらってくれるかな?」
「えっ?」

 葵から差し出された小さな包みを反射的に受け取り、結城若葉は目を瞬かせた。
「葵さん……これは?」
「この間、たまたま通りかかった雑貨屋さんで見つけてね。若葉ちゃんに似合いそうだなと思って、買っちゃったんだ」

「開けてみて」と促され、若葉はどきどきしながら包みをほどく。
「わぁ……綺麗……」
 中から出てきた華奢なペンダントに感嘆の声をあげる恋人に、葵はほっとして顔を綻ばせた。
「気に入ってくれたみたいでよかった」
「はい! とっても嬉しいです! でも……」
「うん? どうかした?」
「いいんですか……? 私、いつも葵さんからもらってばかりで……なにもお返しできていません」
 眉尻をさげる若葉に、葵は安心させるように笑いかける。
「そんなことないよ、若葉ちゃん。俺も、若葉ちゃんからいっぱいもらってる」
「えっ、でも……」
「俺はね、見返りが欲しくてプレゼントしてるわけじゃないんだ。若葉ちゃんの喜ぶ顔が見たくてプレゼントしてるんだよ」

「あと、若葉ちゃんがつけてるところを見たいなと思って……」と照れくさそうに頬を染める葵に、若葉の頬もみるみる熱くなっていく。
「あ、ありがとうございます……」
「うん……ねぇ、つけてみて、若葉ちゃん」
「あ、はい……!」
 頬の熱をそのままに、あたふたとペンダントを身につけ、若葉はおずおずと葵に向きなおった。
「どうでしょう……?」
「うん……思ったとおりだ。すごくよく似合ってる。綺麗だよ、若葉ちゃん」
 恋人からのまっすぐな褒め言葉に、若葉の頬はますます熱を帯びる。首筋や耳までもがとても熱い。

「うひゃ~」と声を漏らしながら手で顔を扇ぐ彼女の姿と、その胸元できらめく青色に、葵は満足そうに目を細める。
「本当によく似合ってる……そのペンダントね、お店で見つけた時、若葉ちゃんの色だなって思ったんだ」
「私の色?」
 ようやく顔の熱を冷ました若葉は、葵の言葉に、自身の胸元をまじまじと見つめた。
「そっか……私の色でもあるんだ……」
「若葉ちゃん?」
「私、葵さんの色だなって思ったんです」
「えっ?」
「だってほら、葵さんの瞳の色にそっくり」
 はにかんだ表情で告げられた言葉に、今度は葵の頬が熱を帯びる番だった。
「うわっ、そっか……! 全然気づいてなかったや……恥ずかしい……」
 意図せずとはいえ、自分を連想させるものを恋人に身につけさせてしまうなんて……と、先刻までの自身のようにあたふたしだした葵に、若葉はくすりと笑みを漏らす。
「葵さんの色で、私の色なら……これは、私たちの色ですね」
「俺たちの色?」
「はい!」
 若葉の嬉しそうな声音に、葵はいくぶんか落ち着きを取り戻して彼女の言葉を反芻する。
「私たち五月コンビのイメージカラーとも一緒ですし、まさに〝私たちの色〟ですよ!」
「そっか……俺たちの色……素敵な発見だ」
 重ねて熱弁する恋人に、葵はまだ少し熱の残る頬を緩めて微笑んだ。
 そんな葵につられて、若葉もへにゃりと笑みをこぼす。
「えへへ……。――あの、それでですね、葵さん」
「うん?」
「私からもなにか、葵さんに〝私たちの色〟をプレゼントさせていただけたらな~なんて……」
「えっ?」
 突然の申し出にしばし目を瞬かせた葵だったが、もちろん断るわけもなく。さらに笑みを深めて、不安げに返事を待つ恋人の手を取った。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。ありがとう、若葉ちゃん」

「とっても嬉しいよ」と告げれば、たちまち若葉の瞳が輝いた。
「やったー! それじゃあ、さっそくプレゼント探しに行きましょう! 今日はショッピングデートだー!」
「あははっ! おー!」
 今にも駆け出しそうな若葉の弾ける笑顔と、その胸元にきらめく〝自分たちの色〟に、葵は幸せそうに目を細めて出発の合図代わりに繋いだ手を高々と振りあげたのだった。
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