花言葉によせて

「なぁ、ドラルク。これはなんの花をかたどってあるんだ?」

 目の前の大皿に山と盛られたアイシングクッキーの絵柄をしげしげと眺めながら、ヒナイチはクッキーの作り手である吸血鬼にそう尋ねた。
 問いを受けたドラルクも、そんな彼女を微笑ましく眺めながら返事をする。
「ハナミズキだよ、ヒナイチくん」
「ふぅん……」
 自分から尋ねておきながら、すでにヒナイチの関心はクッキーそのものに移っているようで。「いただきます」と手を合わせてさっそくひとつ口に放りこんでいる。
「ん~! 今日のクッキーもとってもおいしいぞ、ドラルク!」
「うふふ、それはよかった。お褒めに預かり光栄だよ」

(今日もまた、私の想いに気づいてもらえなかったのは少々残念だけれどね……)

 時おり、ドラルクがこうして振る舞うお菓子の中に恋心を忍ばせてみても、毎度ヒナイチの食欲と鈍感さにはまったく敵わない。
 しかし、トレードマークの癖毛アンテナをハート型にしながらドラルクお手製のお菓子を頬張る幸せそうな笑顔を見ると、その落胆のため息はたちまち喜びの微笑みに塗り替えられてしまうのだ。

(……うん。今日もまた、ヒナイチくんの笑顔が見られたんだからよしとしようじゃないか)

「ん? なにを笑っているんだ、ドラルク?」
「いや、なんでもないよ。――そろそろマフィンが焼きあがる頃だ。オーブンの様子を見てこよう」

「もちろん食べるだろう?」と尋ねるドラルクに、ヒナイチは瞳をきらきらさせながら力強くうなずいた。
「あぁ! いただこう!」
 そんな、楽しみでたまらないと全身で主張してくれる食いしん坊少女の愛らしさに、ドラルクはキッチンへと向かいながらそっと笑みを深めるのだった。

(きみが花言葉わたしのきもちに気づいてくれるまで、まだしばらくはこの片想いを楽しもうか――)
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