逃避行

「雪。次はどこへ行こうか」

 静かな喫茶店の中。
 向かいの席からの問いに顔をあげると、頬杖をついてこちらを見つめる愛しい人の微笑みが。
 まるで愛をささやくような甘い声音と表情に、とくんと心臓が跳ねた。
 この鼓動が彼に伝わってしまいそうで、慌てて視線を逸らす。
 でも、もう隠す必要はないのだと気づき、もう一度彼と向かい合った。

「……始さんとふたりなら、どこへでも」



 ――この日、私たちはお互い以外のすべてを捨てた。
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