花言葉は、

  *

 あの会話は、いつのことだっただろう。

 柔らかな陽射しが降りそそぐ、満開の桜並木の中。
 一歩一歩ゆっくりと歩を進めながら、冨岡義勇はぼんやりと記憶を辿っていた。

 蝶屋敷の診療室。
 胡蝶しのぶに腕の傷の経過を診てもらっている間、手持ち無沙汰だった義勇がなんの気なしに目を向けた窓辺に飾られていた、優しい藤色の花。
 その視線の先に気づいたらしいしのぶが、診察をすませた彼の腕に包帯を巻きなおしながら口を開く。

『ねぇ、冨岡さん。そのお花、なんて言うか知ってますか?』

 ――房藤空木。

 あの時しのぶがその名を教えてくれた花が今、義勇の腕の中で揺れている。

「気づくのがあまりにも遅すぎた……すまない、胡蝶」

 緩やかな坂をのぼりきった先。目的の場所――鬼殺隊の墓所へと足を踏み入れ、義勇はほろ苦い想いを滲ませたつぶやきを漏らす。

 先日、竈門炭治郎、竈門禰豆子、我妻善逸、嘴平伊之助らが三日かけてすべての墓前に参り供えていった花たちが、大勢の仲間が永眠ねむる場所を温かく彩っている。
 その中をまたゆっくりと、奥を目指して義勇は進む。

 辿り着いた先には、真新しい墓碑。

 刻まれた名は――
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