お試し期間

「……ダメか?」

「馬、……」

新一は自分がホッとしているのを自覚した

……理由は1つ。


体を起こそうする新一に手を貸す平次。
床に足をついて立ち上がり掛けた、
その時……今度は平次が逆に引っ張られてバランスを崩し前のめりになる



ほんの僅か


ほんの数ミリ


ほんの数秒


唇と唇が、重なった


それは重なったというより、掠ったという表現が正しい程の一瞬の出来事。

「………くど‥」

平次は混乱する。


コレは

今のは偶然?

必然?

確かに触れた筈の唇はそれ以上 言葉を発する事は出来なかった
新一によって再び塞がれたから……



え?

え??
何が起きてんねん?

コレは誰や?

誰の唇や?

目を開けたまま固まっている自分の目の前に新一の綺麗な顔

ずっと触れたいと願って止まなかった瞼や頬‥形のいい唇が、
あろう事か自分のものと重なっている


瞳を閉じた新一はやはりとても綺麗で艶やかで…知らず知らずのうちに夢中で舌を絡め合い、
吸い、
お互いの唾液を飲み込んだ

どちらともなく 離れると、ウットリしていたのは平次の方だった。


「はぁ‥はぁ…………工藤?何で‥」

「下手くそ。」

「は!?」

「‥オメェがあんまりしつこいからどんなキスすんのかと思ったら‥そんなんでよく付き合ってくれなんて言えたもんだな」

「そ‥、今のは急やったから…っ、ホンマはもっと」

「もっと、何だよ?」

「ぃ、いや…」

責められている様な、
試されている様な甘い尋問に言葉がうまく出て来ない。
 
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