お試し期間
本当に、イライラする
手紙をくれた女にも
それを預かった俺も
イライラしている俺にも
首と腕を繋ぐ包帯をしたまま風呂場へ入り、ドッカと座椅子に腰掛けて蛇口を捻る。
体は何とか洗えたが、頭の方はすんなりといきそうに無かった。
使い慣れない左手のみで髪を洗うのは至難の技で‥少しくらい右腕は動かせるだろうと思っていたが甘かった。
「痛たたた‥っ」
泡すら上手く立てる事が出来ずに新一は
「あ゛ぁ゛--(_ _*)」
と唸った。
「ガチャ」
そこへ平次が服を着たまま入ってくる。
「何しに来やがった」
「その手じゃ、よぉでけへんやろ?洗ったる」
「いいって」
「上向いてジッとしとけ、やったるから」
躊躇したものの、現実問題として新一は仕方なく平次に従った。
シャンプー液を手のひらで泡立てて新一の頭に乗せ、わしゃわしゃと洗い始める。
暫くして
「一回流すで」
とシャワーで泡を流して、もう一度シャンプー液を掛ける。
今度は根元も優しく丁寧に。
思っていたよりも平次のシャンプーの腕は上手で‥新一は長年剣道をしているとは思えない節もさして太くない、
彼の長くしなやかな指を皮膚に感じた。
本当に 気持ちいい…。
この態勢で無ければ確実に眠りに落ちていたに違いない。