Team W
いらっしゃい、小鳥ちゃん?
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今日もスターレスは多くの女性客で賑わっている。
そんな中、キャストの皆さんもエントランスやバックステージをパタパタと動き回り、忙しそうだ。
「よぉ。今日も来たのか」
「あっ黒曜さん」
せわしなく働いているキャストの方々を眺めていると、いつの間にか前にはすました顔でこちらを見下ろす、黒曜さんの姿があった。
今日はホールスタッフなんだな。
「相変わらず大盛況ですね」
「まぁな。客が多く来ることに越したことはねぇ」
素直に嬉しいって言えばいいのに。という言葉を胸で飲み込む。
口に出せば彼は眉をしかめるだろう。
「今日はCの公演だが、Wのショーの時はこれよりもっと客は入ってる。……まぁいい。案内してやるから来い」
「ありがとうございます」
そう言い、ホールの方へ振り返り歩き出す黒曜さん。
置いていかれないようその後ろを着いていく。
私の方をちらりと見やり、他のやつにぶつからないよう気ィつけろよと忠告してくれた。
確かに、フロア内も注文を取ったり料理を運んでいるキャストの方々は大変そう。
気を付けながら歩かないと……。
ふと、前方から元気な真珠さんの声が聞こえた。
注文を取ってお客さんと話しているようだ。
「じゃ、料理運んでくるから待っててね!」
真珠さんの横を通り過ぎようとした時。
肩に何かぶつかったような強い衝撃が走った。
突然のことに驚いてしまい、小さく短い悲鳴が漏れる。
足元がよろけ、重心が後ろに倒れていくのを感じた。
どうしよう、倒れる。
この後を想像してお尻に来る床からの痛みを覚悟し、きゅっと目をきつくつぶった。
……が、一秒二秒経っても、一向に尻もちをつくことがない。
それより、背中から腕にかけて何か支えられている感覚がある。
「おい、大丈夫か」
黒曜さんの声が上の方で聞こえる。
何事かと思い瞑っていた目を開けると、視界の半分に黒曜さんの姿が映った。
よく見ると黒曜さんの右腕は私の背中に回っており、どうやら倒れそうになった私を咄嗟に支えてくれたようだった。
しかし、突然の距離の近さに動揺してしまいそうになる。
背中と腕越しに感じる男性らしいがっしりとした大きい腕と手。
こんなの、ほとんど片腕で抱かれていると言っても過言ではないのだから。
黒曜さんに身体を預けてしまい、彼との慣れない距離に勝手に高鳴る心臓がうるさい。
顔に少しずつ熱が集まり、恥ずかしさと緊張でじわりと額に汗をかくのが分かった。
目を少し見開いていた黒曜さんとぱちりと目が合うと、彼は安心した息をつく。
私の背中に回った腕に押されて、無事に身体を起こすことができた。
「だから気ィつけろっつっただろ」
「す、すみません…ありがとうございます…!」
黒曜さんに咄嗟に謝りお礼を述べたが、きつい言葉の割には、彼は私に対し怒っているわけでもないようだった。
それと同時に、身体が離れて胸の高鳴りが少し落ち着いてきた事に安堵を覚える。
「ごめんサキちゃん!」
はじいたような声とともに、真珠さんが眉をハノ字にし、目を丸く見開いて駆け寄ってきてくれる。
大丈夫!?どこか痛むところ無い!?と慌てている真珠さんに大丈夫だと伝えると僅かに安心したようだが、その顔は申し訳なさそうだ。
パチンと顔の前に両手を合わせたかと思うと、真珠さんはくっと頭を下げた。
「ほんっとうにごめん!おれ、気づかなくて…」
「真珠。フロアは危ねえから走るな。わかってんだろ」
「ごめん、黒曜……次から気を付けるよ」
「なら、さっさと動け。公演前に間に合わねぇぞ」
しゅんと俯く真珠さんに、仕事を促す黒曜さん。
「うん……!あ、サキちゃん、お詫びに今度何か奢らせてね。それじゃ…!」
真珠さんは私が何か言う前にサッと立ち去ってしまった。
今日は特に忙しそうなので仕方ない…か。
おい、行くぞ、という黒曜さんの声につられて、私はまた再び歩き出した。
彼の広い背中を見ると、さっき支えてくれたことをつい思い出してしまう。
真珠さんにぶつからなければあんな体験は出来なかっただろうな……。
なんて、無意識に考えてしまい恥ずかしくなる。
ぶつかった事が良かった事なのかそうではなかった事なのか。
考えても整理はつかず、モヤモヤしてしまう私は、天井に浮かぶ大きなクジラの骨を仰ぎ見たのだった。
そんな中、キャストの皆さんもエントランスやバックステージをパタパタと動き回り、忙しそうだ。
「よぉ。今日も来たのか」
「あっ黒曜さん」
せわしなく働いているキャストの方々を眺めていると、いつの間にか前にはすました顔でこちらを見下ろす、黒曜さんの姿があった。
今日はホールスタッフなんだな。
「相変わらず大盛況ですね」
「まぁな。客が多く来ることに越したことはねぇ」
素直に嬉しいって言えばいいのに。という言葉を胸で飲み込む。
口に出せば彼は眉をしかめるだろう。
「今日はCの公演だが、Wのショーの時はこれよりもっと客は入ってる。……まぁいい。案内してやるから来い」
「ありがとうございます」
そう言い、ホールの方へ振り返り歩き出す黒曜さん。
置いていかれないようその後ろを着いていく。
私の方をちらりと見やり、他のやつにぶつからないよう気ィつけろよと忠告してくれた。
確かに、フロア内も注文を取ったり料理を運んでいるキャストの方々は大変そう。
気を付けながら歩かないと……。
ふと、前方から元気な真珠さんの声が聞こえた。
注文を取ってお客さんと話しているようだ。
「じゃ、料理運んでくるから待っててね!」
真珠さんの横を通り過ぎようとした時。
肩に何かぶつかったような強い衝撃が走った。
突然のことに驚いてしまい、小さく短い悲鳴が漏れる。
足元がよろけ、重心が後ろに倒れていくのを感じた。
どうしよう、倒れる。
この後を想像してお尻に来る床からの痛みを覚悟し、きゅっと目をきつくつぶった。
……が、一秒二秒経っても、一向に尻もちをつくことがない。
それより、背中から腕にかけて何か支えられている感覚がある。
「おい、大丈夫か」
黒曜さんの声が上の方で聞こえる。
何事かと思い瞑っていた目を開けると、視界の半分に黒曜さんの姿が映った。
よく見ると黒曜さんの右腕は私の背中に回っており、どうやら倒れそうになった私を咄嗟に支えてくれたようだった。
しかし、突然の距離の近さに動揺してしまいそうになる。
背中と腕越しに感じる男性らしいがっしりとした大きい腕と手。
こんなの、ほとんど片腕で抱かれていると言っても過言ではないのだから。
黒曜さんに身体を預けてしまい、彼との慣れない距離に勝手に高鳴る心臓がうるさい。
顔に少しずつ熱が集まり、恥ずかしさと緊張でじわりと額に汗をかくのが分かった。
目を少し見開いていた黒曜さんとぱちりと目が合うと、彼は安心した息をつく。
私の背中に回った腕に押されて、無事に身体を起こすことができた。
「だから気ィつけろっつっただろ」
「す、すみません…ありがとうございます…!」
黒曜さんに咄嗟に謝りお礼を述べたが、きつい言葉の割には、彼は私に対し怒っているわけでもないようだった。
それと同時に、身体が離れて胸の高鳴りが少し落ち着いてきた事に安堵を覚える。
「ごめんサキちゃん!」
はじいたような声とともに、真珠さんが眉をハノ字にし、目を丸く見開いて駆け寄ってきてくれる。
大丈夫!?どこか痛むところ無い!?と慌てている真珠さんに大丈夫だと伝えると僅かに安心したようだが、その顔は申し訳なさそうだ。
パチンと顔の前に両手を合わせたかと思うと、真珠さんはくっと頭を下げた。
「ほんっとうにごめん!おれ、気づかなくて…」
「真珠。フロアは危ねえから走るな。わかってんだろ」
「ごめん、黒曜……次から気を付けるよ」
「なら、さっさと動け。公演前に間に合わねぇぞ」
しゅんと俯く真珠さんに、仕事を促す黒曜さん。
「うん……!あ、サキちゃん、お詫びに今度何か奢らせてね。それじゃ…!」
真珠さんは私が何か言う前にサッと立ち去ってしまった。
今日は特に忙しそうなので仕方ない…か。
おい、行くぞ、という黒曜さんの声につられて、私はまた再び歩き出した。
彼の広い背中を見ると、さっき支えてくれたことをつい思い出してしまう。
真珠さんにぶつからなければあんな体験は出来なかっただろうな……。
なんて、無意識に考えてしまい恥ずかしくなる。
ぶつかった事が良かった事なのかそうではなかった事なのか。
考えても整理はつかず、モヤモヤしてしまう私は、天井に浮かぶ大きなクジラの骨を仰ぎ見たのだった。
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