碧い宝石
your name?
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『今暇か?』
風丸から携帯に届いた一通の通知。
暇だよ、と送りどうしたんだろうと考えた。
修学旅行の真っ最中。
深い森の中にある宿泊施設に泊まりに来ていた。
ナイトウォークも終え、後は自由時間となっていた時だった。
他のみんなは星を見に行ったり部屋に遊びに行ったり。
各々でゆっくり過ごしている時間だった。
また通知が鳴る。
『少し外に散歩しに行かないか?』
先も送ったように暇だった私は、誰かと過ごせるのが嬉しくて風丸の誘いに乗ったのだった。
沖縄と言っても夜は冷えるのでパーカーを着こんで部屋を出た。
広場に向かえば先に着いていたであろう風丸が視界に入る。
少し冷たい夜風に長く青い髪をなびかせた後ろ姿が振り返った。
「来たな。寒くないか?」
「うん、大丈夫」
「そうか、少し歩こうぜ」
そう言って歩き出した風丸の隣に並ぶようについて行った。
端正な顔立ちに、サラサラの青い髪。
微笑が良く似合っていて、相手への気遣いもする所がさすがイケメンだなと不覚にも少しときめいてしまった。
辺りは山奥だから街灯もほとんどなく、静かな闇に包まれていた。
暗くても夜目が利けば道はわかるくらいだ。
宿泊施設と反対方向に進む風丸に少し不安を抱く。
「ねぇ……どこ行くの?」
「行けるところまで行ってみようかなって」
「それ、大丈夫?」
「安心しろ。森には入らないさ」
口元に軽い笑みを浮かべる風丸。
普段のまともな風丸を思い出して、まあ風丸なら大丈夫かなと不安をかき消した。
夜の森は少し鬱蒼としているが、遠くから聞こえてくる野鳥の鳴き声がのどかに感じる。
ふと空を見上げると、あまりの光景に私は感嘆の声をあげた。
「見て、星がきれい…」
「ん?…あぁ、本当だな…」
都会では見られない程の無数の星が空いちめんに輝いていた。
あまりの美しさに目を奪われていて、風丸の顔がすぐ横に近づいていたのに気づかなかった。
「!かっ、かぜま」
唇にふわっとした感覚がした。
何が起きたか理解するのに時間はかからなかった。
突然の事に目をキュッと閉じ、体を固くしてしまった。
しばらくして風丸の顔が離れる。
風丸の片手が私の背中に回されていたようで、すぐに距離が離れるわけじゃなかった。
未だに至近距離で、顔に熱が集まっていくのがわかる。
驚きと恥ずかしさのあまり言葉が出ない。
「すまないっ……ちょっと、抑えられなかった」
「へ…………」
暗くて顔色はうかがえないが、軽く目を逸らし申し訳なさそうな表情の風丸。
そう言われても、まともに返事が出来ない。
この状況をどうしたらいいのかわからない。
「つい…××が可愛くて……」
「かっ、かわっ…!?」
「もしかして、初めてだったか…?」
「あ……うん……っ」
つい小声になってしまった。
そう、さっきの風丸とのキスは私のファーストキスだった。
突然の事だったが、風丸になら悪い気はしなかった。
可愛いかったと言われたら気が気でないが。
伏せがちだった目を少しあげると、星空をバックに風丸が映る。
なんともロマンチックに思えてきて、この状況に、風丸に酔ってきた。
彼の広い胸元に手をあてる。
雰囲気に呑まれて、今度は私から彼にキスをしてしまった。
唇の感触が気持ち良い。風丸は拒まなかった。
「××……」
「風丸……っ」
むしろ、お互いを求めるようなキスになっていく。
角度を変えて何度も食み、ついには舌が絡み合う。
唾液が混ざり、どちらのものかわからない。
離れた時には名残惜しそうに銀色の糸がひいていた。
身体が熱い。
それはお互い同じで、私たちの間を吹き抜ける少し冷たい夜風が心地良い。
風丸の熱っぽい視線が私にむけられる。
彼の片手が私の頭を撫でた。
「…好きだ。××」
「ん……私も」
夜の森の中、満天の星空の下、風に吹かれた森の草木のザワザワとした音が耳に残っていた。
-END-
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