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ハルカユメモノガタリ

人が蝶の夢を見ているのか。
蝶が人の夢を見ているのか。
境目は靄や霞のように曖昧、自分が蝶なのかも蝶が自分なのかもわからない。

「どうか」

紡ぎ出される言葉。
声色は自分のもの。
容姿は自分とよく似た誰か。
長く伸びる金髪に赤い瞳のよく似た青年。
白い儀礼服のようなものを着ていて、頭には黒い双角が生えている。
背中には虹でも纏っているかのような不思議な翅のようなものが見える。

「許してほしいとは言わない。憎んでくれても構わない。これが私の決断だ。お前が愛した世界は私も同じぐらいに愛した世界。だからこそ、友よ」

よく似た青年は相手を慈しむように惜しむように微笑み、涙を流す。
相手に優しく言葉を紡ぐ。


「お前が愛した世界をこれからも愛してほしい。私の代わりに、ずっと…」

よく似た青年は落ちていく。
否、相手…オレが遠ざかっているのだ。
伸び切った弓の弦から矢が放たれたように、あっという間に距離が離れていく。
そしてそこでいつも目が覚める。

誰だったのかわからないあの夢。
そして、その相手であるオレ、結城 悠自身もわからない。
いまはただ、時間の流れに追われているだけの高校生だ。
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