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第1時間目「初めの一歩」

 (僕の名前は速光走太…。なんだかんだあって雄英高校に入学したけど、初日からクラスの中が、なんというか大変なことになってて…、ほら!教室が騒がしくなるよ!)


 走太は顔が石のようにガチガチである。なぜならそう、走太はあの雄英高校に入学するからである。現在走太は1年A組の教室の前。無駄に大きくて重量感のある扉が威厳を示している。走太は制服をピシッと直し、深呼吸をする。そして考える。
走太(今日からプロヒーローを目指すために、想像以上に厳しいことが自分を待っているんだ。)
走太は指で口角を上げた。
走太(でも乗り越えてみせる!みんなを笑顔に、そして世界を救う最高のヒーローを目指すために!教室に入れば、そこはプロヒーローへの第一歩だ!さあ、扉を開けて一歩を踏み出そー)
亜理子「邪魔よ!どきなさい!」
        ドン!!!
走太「ひえええええ!!!!」
走太は転んだ拍子にヒーローへの一歩を踏み出した。それにしてもいきなり押してきて困ると走太は思った。どんな人だろうと思い、相手の顔を見てみようと顔をあげたら、
      バゴーン!!!
走太「痛ええええ!!!!」
今度は髪の毛のようなチクチクした重い物が頭を叩いてきた!気絶しそうなほどの痛みだ。叩かれたのでまた顔が下を向いてしまったが、今度こそ顔をあげてどんな人かを見たら、髪の毛に特徴のある2人の女が言い争っていた。
髪木「はあ?こういう奴に限って試験落ちたと思ったのになんで受かってんだよ!」
男のような口調で中性的な女は、地面につきそうなほど長い弦のようなポニーテールが特徴である。個性は髪なのだろうか。一方で
亜理子「この私、鏡沢ヒーロー事務所の「鏡沢亜理子様」が、特待生試験に落ちるとでも思ったの?」
亜理子という初日から自信ありげな女は、ふわっとしたロングヘア。それと黒い大きなリボンがヨーロッパのお嬢様感を醸し出している。名前、髪型、そしてリボンと、どこかの夢の国に出てきそうだ。
走太(この人の個性は…、鏡、かな?もしあのキャラクターのままならばね…。)
亜理子「てか髪木さん…。いえ、弦サン?あなたみたいな人が雄英に受かったなんて、この学校もおしまいね。」
この2人はどうやら特待生らしい。
走太(クセの強い人が特待生なんだなぁ…。)
亜理子「ま、私が一番だけどね?」
髪木「ふざけんなっ!!!」
髪木という女が頭を振り下げたと思ったら、とても長い髪が走太に向かって飛んできた。
走太(ああ、さっき殴られたのはこの髪のせいなのか。)
と思っていた隙に走太に再び髪木の髪が当たりそうになった。
走太(ヤバイ、気絶するほど痛いのにまた当たったら今度こそオシマイダ。)
すると亜理子は手を髪木に向けると、なんと手元で爆破が起こった!
走太(この人の個性って爆破なんだ…。)
ついさっきに走太はこの女の個性は鏡だと推測したが、どうやら違った。爆破であった。この個性はとある有名なプロヒーローと同じだが、この女も個性が爆破なのは、恵まれた個性。そう、特待生にふさわしい個性である。理由は言わなくとも知っているだろう。さて、髪の毛を爆破された髪木はどうなったのか。走太の脳裏で髪の毛が燃えてパニックになっているのではないかと不安がよぎったが、どうやら燃えてない。強靭な髪だ。代わりに彼女は恐怖で顔が青ざめていた。
髪木「どう、いう、ことだ…?」
その時走太には、髪木が何に疑問を持っているのか分からなかった。
髪木「お前、特待生試験のときにも炎繰り出したり体がでっかくなったり色々やってたけど、爆破を起こすこともできるのか…!?」
走太(も?もということは…、まさか、鏡沢さんは複数の個性持ちなの!?)
と思った走太のことを知る由もなく、走太同様に亜理子を複数の個性持ちだと思った髪木のことを嘲た。
亜理子「おーほっほっ!頭がお固いのね!私の個性は「鏡」よ。つまり、人の個性を鏡のように真似できるの!そんなのも分からないの?」
走太(そういうことか。つまり今鏡沢さんが使っていた個性は、誰かから真似してきたということなんだ。それは分かったけど。…なんやこいつウザっ。)
走太は亜理子の言動にドン引きした。一方で髪木のほうは
髪木「テンメー…、馬鹿にするのも、いい加減にしろぉおおおおっ!!!!!」
鼓膜が破れそうなほど大きな声で怒鳴る。
走太(彼女の性格じゃそうなるか…。)
髪木「俺の怒りの一発をくらえぇぇぇぇ!!!!」
人一倍小さいであろう彼女の堪忍袋の緒が切れた。髪木は構えの姿勢を取り、全力を込めるために大きく息を吸った。そして大きく、大きくのけ反った。個性を発動する準備ができたようだ。彼女は200%の怒涛の髪の一振りをしようとした。だが、また亜理子の爆破で返り討ちにされるだけだろう。無意味だ。走太は髪木を止めたいけれど、転んだままの態勢ではできない。
走太(もう手遅れだ…。)
突然、髪木の肩に誰かの手が乗っけられた。
翼「もうやめておけ。怒りまかせに個性を使うなんて、ヒーローとしてやってはいけない。」
走太(そっか。2人の会話しか見てなかったから僕を含めてクラスには3人しかいないのかと思っていたよ。)
走太は一瞬悪い感情が出て、もっと早く止めてほしかったとも思った。
髪木「チッ!」
髪木は刺さりそうなほど鋭い目で亜理子を睨む。亜理子は勝ち誇った顔で髪木を偉そうに見る。一言で表すなら修羅場だ。そんな2人の因縁や空気を気にせずに男は言う。
翼「鏡沢。お前は人を馬鹿にするな。ヒーローがそんなことを言うなんていけない。」
この男は正義感が強い。
走太(確かに、このバチバチな空間を止めるなんて相当勇気がいるよね。この人は決心するまでに時間がかかっただけなんだ。本当はいい人なんだ。さっきはあんなことを思っちゃって申し訳ないなぁ。)
翼「髪木。お前は挑発に乗ってはいけない。長髪だけに。」
走太はさっきの言葉を取り消した。
翼「…。なぁ。」
走太「僕?」
翼「いつまでその態勢でいるんだ。早く立ちなよ。」
この男、よく見ると宗教画に出てきそうなほど大きくて真っ白で立派な翼が背中に生えていた。この翼がこの男を真っ直ぐな人間だと物語っている。
翼「それよりもみんな席に座ろう。初日からガチャガチャ騒いでいたら先生に叱られて面倒くさいことになるだろ?」
亜理子は翼の顔をじろじろ見ながら言った。
亜理子「それにしてもあなた、特待生試験で見なかったわね。私の記憶のせいかしら?」
翼「俺は一般入試で入ったんだ。」
亜理子「なーんだ!おっほほほほ!」
亜理子は手を口に重ねて高飛車な笑いをした。
亜理子「なら、私はあなたより強いってことでいいわね!」
髪木は今にも亜理子に手を出しそうになったが、翼はすぐにそれを察したようで髪木をなだめた。そして呆れのため息をつく。
翼「そうやって余裕の気持ちでいると、他の人にすぐに抜かれちまうぞ。競争心は持っておいた方がいいと思うけどな。」
髪木は「そーだそーだ!」と口を尖らせる。走太も翼に同情した。だが亜理子は余裕な表情でいた。
亜理子「なによ?トップでいることぐらい簡単よ!あなたたちに抜かされなければいいんだから!」
3人は諦めて席に座った。
亜理子「私を越したいなら、せいぜい努力することね!おーほっほっ!」
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