このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第10時間目「試験の真実」

 そのころ翼、竜騎、響は、たった三人で巨大ロボットに立ち向かわなくてはいけないという絶体絶命のピンチに陥ってた。
翼「俺のキックをおみまいしてやる!」
翼はロボットに向かって全力でキックをしたが、ロボットが硬すぎて自分に反動が返ってきた。
翼「痛っ!なんだこいつ、硬すぎる!」
翼はよろよろと地面に落ちてしまった。響と竜騎は心配になってすぐに駆けつける。
翼「イテテッ…。」
竜騎「大丈夫か!?っておい!腕打撲してるぞ!」
だが翼は二人を心配させないように笑顔で言う。
翼「安心しろ。この傷は小さい、「キッズ(傷)」サイズだ。傷だけに。」
響「うおお!翼天才!」
竜騎「え?大空ってそういうヤツだったの?」
三人は気を取り直してロボットの方を向いた。
竜騎「よっしゃー!オレのドラゴンたちに任せてくれ!行っくぜー!!」
竜騎はドラゴンたちに命令した。ドラゴンたちはすぐにロボットの方へ飛んでいき、噛みついたり体当たりしたりするが、ドラゴンたちでも全く傷すらつかず、力尽きたのかヒョロヒョロと地面に落ちていく。
竜騎「マジかよー!」
ロボットはドラゴンたちに向かって腕を振り下げた。このロボット、ドラゴンたちをぺしゃんこにするつもりなのだ。
竜騎「やべぇ!」
響「オレに任せて!」
響は地面に手のひらをつける。すると地面がロボットに向かって隆起していき、ロボットの腕に隆起した地面が当たったのだ。ロボットはそれを感知して、腕を振り下げるのをやめた。竜騎はその間にドラゴンたちを助けにいく。
竜騎「響ナイス!」
響は鼻の下を指で擦りながら笑う。
響「オレの爆音波で、地面に大きな振動を起こして隆起させたんだ!」
翼、竜騎は響の個性のカッコよさに目を輝かせた。
翼「でもこのままだとロボットにやられるぞ。」
響「いや!オレはまだ戦える!ならばオレだけでも戦える!」
竜騎「だから一人じゃ戦えねぇって!」
竜騎が警告しても響はやる気満々だ。響はにぱっと少年のように笑う。
響「仲間を守るためならどーってこともないぜ!やる気、元気、ヒビキだ!」
竜騎「ええっ…。」
竜騎は響に自滅してほしくないからとても心配していた。だが翼は響のやる気に圧倒されたのだ。
翼「分かった分かった。お前のやる気、元気、ヒビキ、だっけ。それ、すごく感じた。俺も戦う。」
響は目を開かせて嬉しそうに笑った。
響「ありがとう!」
竜騎は、翼が響に乗ったことに目を丸くして、自分が置いていかれないように戦う決心をした。
竜騎「お、お前らー!翼が戦うなら俺も戦うぜ!」
響「龍ヶ崎!ああ、一緒に戦おうぜ!」
すると三人は、遠くから仲間たちが走ってくるのが見えた。
蜘蛛美「皆よ!助けに来たぞ!」
翼「巣胚田、それにみんなも来てくれたんだな。」
月宮「やれやれ、たったの三人で動く鉄の塊と戦うなんて、度胸あるね。」
秀英はメガネをピカッと光らせてインテリジェントに叱った。
秀英「ロボット一体に対する人数が三人だなんて少なすぎる!もっと大人数で戦うべきだ!」
翼「あー、それはいろいろあってー」
響「今みんなが来たんだから、もう大人数だろ!」
翼、秀英は響のポジティブさに驚いたが、それくらいサバサバしてたほうが、ヒーローの心構えとしては良いのだと考えた。すると別で戦っている走太達の方から声が聞こえた。
走太「みんなー!僕たちにも協力してー!あと薫くん!狐さんが怪我してるんだ!助けてほしい!」
薫は妖子の怪我を想像してヒグッと肩を上げた。薫は恐怖を取り除くために頭をブンブンふった。そしてさらさらな髪がぐちゃぐちゃになったまま急いで走太達の方へ走って行った。
竜騎「そうだ!走太たちが危ない!オレも行かなくちゃ!」
竜騎のせっかちが出てしまい、すぐに走太達の方へ行ってしまった。
響「オレも行くー」
響が竜騎について行こうとしたその時、響の肩に手がポンと置かれた。響が振り向くと、そこには響とは正反対の、物静かで穏やかな花夫がいた。
花夫「待て待て。みんなついているんだから焦る必要はないぞ。」
花夫が老人のような速さで響に言い聞かせた。花夫は響をじっとみる。響は花夫の想いを感じとったのか、焦るのをやめ、深呼吸をして、心を整えた。
響「そうだな。ありがとう、花夫。」
花夫は静かに微笑んだ。
響「みんな!また二手に分かれれば、丁度よく戦闘力が同じになるよな!」
秀英「俺もそう考えていた。」
蜘蛛美「妾も行くぞ!」
蜘蛛美がバッと走り出した。
時「蜘蛛美様が行かれるならば、ワタクシも参ります!」
蜘蛛美「そなたは妾の影のようについて来るのぉ。」
時「ワタクシは召使いです。あなたをお守りするのが役目なのです。」
時も蜘蛛美を追いかける。
守「オレも行くッス〜!」
守はノリで行くと決めた。
月宮「ボクもこの流れに乗るよ。」
翼「俺は行かない。」
剛「行かないんかい!」
そして軍勢が加わり、勢力が増した仲間は、ロボットとの決戦を始めたのだった。

 数十分後
二手に分かれてたが、戦っているうち合流していた。なぜならロボットが現れるペースが落ちてきたのでみんなでロボット一体ずつと戦えばよくなったからである。だが生徒たちはこんなにも個性を使うことがなかったので、体力もだんだんなくなっているのであった。
髪木「どんだけロボットいるんだよっ!」
走太「ひ、ひゃーっ!摂氏さんが凍ってるううううう!!」
妖子「まぁ!」
零の個性は絶対零度。どんなものでも凍らせることができるとても強い個性なのだが、使いすぎると自分自身が凍ってしまうのだ。個性をたくさん使う中で、実は零は心の中で自分が凍らないか心配してたが、とうとう凍ってしまった。零が凍ってしまったのを知らない秀英はメガネをキラッと光らせて言った。
秀英「今まで出現したロボットの総数で俺が数えたところだと、二十体以上だ!」
みんなはロボットの多さに驚愕した。
剛「殺す気かー!」
翼「いや、お前はもう死んでると同然だろ。」
剛「そうだね!僕は個性ゴーストだし、もう死んでる…。って死んでないよバカ!」
髪木「つまんねぇよ!!」
翼、剛「「すみません。」」
走太「とにかく、戦わなくちゃ…。」
走太はもうボロボロである。彼の個性はスピード。ただ動きが速くなるだけの個性なので、動かないと個性を出すことができない。つまり彼はとても疲れる個性なのだ。誰よりも走り回り、誰よりも体力を使った走太は、気力だけで動いているのと同然である。
薫「走太くぅん!もう無理しちゃダメだよぉ!」
走太「いや、この試験に落ちたらヒーローになれない。だから諦めちゃダメだ!」
今の走太には薫の心配などいらないのだ。トップヒーローに、そして父のようになるために、ここで砕けてはならない。
走太「おりゃあああ!」
走太は光よりも速いスピードでロボットに体当たりした。だがロボットは頑丈である。逆に走太がダメージを受けたのだった。
走太「ううっ!」
薫「走太くぅん!!」
ロボットに何度も跳ね返されて、走太の体はあざだらけだった。薫は走太の姿を見てあわあわしていた。すると遠くからあの女の、いつもの高飛車な笑い声が聞こえてきた。
亜理子「あら、みんなお疲れね。」
亜理子はまたみんなを哀れむのを楽しむ。
亜理子「やっぱり私が一番!」
髪木「テメェ!今まで何してたんだよ!!」
亜理子は顔を真っ赤にして怒っている髪木を楽しんで見ている。
亜理子「なによ?せっかくあなたが泣いているところを助けてあげたのに?」
髪木はぎくっとした。自分の弱みは誰にもみられたくなかったのだ。髪木は恥ずかしくなってあたふたした。
髪木「お、お前っ!みみみ、見てたのか!?」
月宮「何を特待生同士が言い合っているんだい?」
髪木「なっ、なんでも、ねぇよ!とにかくロボットを片付けんぞっ!」
髪木は顔を手で隠しながら走ってどこかへ行き、月宮は何が起こったのか理解できず、首を傾げて歩いていった。亜理子はお決まりの高笑いをした。そしてロボットの方を見て、余裕な表情で言う。
亜理子「あなたなんて、私の前じゃあ荒くれた子供と一緒よ?こんなの、大人の私なら一人で片付けられるわ!」
それを聞いていた大地が目を丸くして言った。
大地「さっすが特待生だべ!」
大地は亜理子のことを純粋にかっこいいと思った。大地にとって、みんなが恐れるあのロボットに一人で立ち向かうのは、まるで勇者。尊敬すべき人なのだ。
大地「でもオラ、亜理子さんのことお手伝いするだぁ!」
亜理子「いいや、私だけで倒すわ。」
大地は亜理子の言葉に感動した。その状況を見ていた竜騎は今日何度目なのか、またまた焦り始める。
竜騎「待てって!あんなん一人で倒せるとでも思ってるのかよ!」
亜理子「そんな馬鹿みたいな固定観念、この私が壊してやるわ!」
竜騎が驚いている隙に亜理子はもうロボットの方へ向かっていた。そして亜理子は手元で爆破を起こした。先ほどマリアからこっそり借りてきたのであろう。亜理子は強気に笑うと、手元でまた爆破を起こして、爆風で一気にロボットとの距離を詰めた。
亜理子「見てなさい低級生徒たち!これがトップとしての姿よ!」
     Bommmmm!!!!!!!!
亜理子はロボットの顔の前で全身全霊を込めて爆破を起こした。
走太「うわぁぁ!」
月宮の個性フラッシュよりも目を開けていられないほどまぶしい光が放たれ、響の個性爆音よりも体を貫くような轟音と同時に爆発が起こった。周りは溶けてしまうほどとても暑くなった。また、一部は風で飛ばされてしまった。
月宮「彼女、個性の使い方が上手だね!」
響「さすがワイルド!」
亜理子の個性の使い方、そして勇敢さに圧倒される。ロボットも圧倒されたのか、ドゴゴゴと大きな音を立てながら豪快に倒れていった。砂煙も高く舞う。生徒たちはただロボットの状況を見ていた。砂煙がおさまるとそこから出てきたのはバラバラになった鋼の残骸だけだった。亜理子は華麗に着地すると、ドヤ顔で残骸を見た。
亜理子「所詮こんなものね!」
一瞬だけ沈黙が起きたが、すぐに拍手が起きた。中には亜理子をおだてる言葉も発していた。亜理子は自信満々の笑いをした。
亜理子「私はすごいのよ!もっと私を褒めなさい!おーっほっほ!」
亜理子は一躍、1年A組のヒーローとなったのだった。すると遠くからも拍手している音が聞こえた。マリアも拍手していたのだ。
マリア「やるじゃない。あなたたち。この試験を見ていて、連携、個性の活用、とても素晴らしかったわ!」
マリアはニコッと笑う。それを見て生徒たちはわあっと喜んだ。
マリア「そういえば鏡沢さん。あなた私の個性使ってたわね。使い心地どうだったかしら?」
亜理子はさすがに先生の前なので笑ってはいなかったが、自信たっぷりに答えた。
亜理子「私じゃないとすぐに使いこなせないと思います。」
生徒たちは亜理子のプライドにドン引きしたが、マリアは楽しそうに笑った。
マリア「フフフっ。そういう勢いのある子、素敵よ?…話が脱線してしまったわね。」
マリアは気を取り直して言った。
マリア「1年A組、ヒーロー相応試験、合格よ。ようこそ!雄英高校へ!」
生徒たちは一気に表情をパアアと明るくして共に喜びを分かち合ったのだった。




 その後生徒たちは教室に戻った。マリアは鍵を閉める前に最終確認をするため、TDLに残っていた。
マリア(今日の試験、これで五回目ね。)
ヒーロー相応試験ができた理由は、六年前に政府がヒーローに大切なのは個々の力ではなく連携であるという見解を示したからである。そこで文部科学省が、各学校のヒーロー科に生徒同士での連携重視で授業をするように指示が出されたのだ。雄英高校では個々の力を試す体力測定を廃止して、今年からヒーロー相応試験を実施することになったのだ。その改革は新聞の一面載ったり、テレビのトップニュースになるほど大きな話題を呼んだ。
マリア(あの子たち、思ってたよりもやるじゃない。本当に期待してもいいのかもしれないわね。)
期待する一方で、実はマリア、不可解なことがあった。
マリア(本当はあのロボット、爆破だけで壊れるロボットじゃないのよね。しかももっとロボットが起動するはずだったのに…。まさかロボットの寿命が来たかしら?随分と早いわね。)




 亜理子が爆破でロボットを倒す前のことを覚えているだろうか。そう、みんながヒーロー相応試験に合格できたのは、影無のおかげといってもいいだろう。(忘れてたら第8時間目を読み返して下さい!)





 クラスメートがロボットと戦っている間、影無はマリアのところへ急いで向かった。早くしないとみんなが倒れてしまって、試験に合格出来なくなると思ったからである。TDRはとても広い。影無は迷子になりながらも約三分かけて、ようやくマリアのところへ到着した。マリアは影無の個性のせいか、影無のことに気づいていない。ただ楽しそうにロボットと戦う生徒たちをじっと見ているだけだ。影無はたとえ個性で存在感を消しても気づかれるのが不安だったので、こっそりマリアに近づいていった。影無が狙っているのはマリアの足元に置いてあるリモコン。このリモコン1つでロボットを起動させたり、ロボットを停止させたりできる、言い換えるとロボットの本当の命なのだ。影無はマリアに気づかれないようにリモコンをスッととった。そして忍足でマリアから離れていった。遠くに離れてから間違えて変なボタンを押さないように、ロボット停止ボタンを探してちゃんと確認してから押した。すると動いていたロボットの動きが停止した。そしてまだまだ起動していないロボットも、起動できなくなった。ロボットの動きが停止したあと、とてつもない地響きが聞こえた。そう、亜理子が爆破を起こしたのである。亜理子が爆破を起こしたのとロボットが停止したタイミングがたまたま合ったから、まるで亜理子がロボットを倒したように見えたのである。





 影無は、自分の手柄を奪われてもいいと考えている。むしろ奪われたほうがいいのだ。自分の個性は「皆無」。元々目立たないので、目立たずに人を助けるほうが自分にしっくりくるのだ。
影無「いつも通りだし、いいや。」
1/1ページ
スキ