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第8時間目「VSロボット2」

 響を追いかける方は
髪木「音音のやつ、地味に足が早え!」
翼「追いつきそうにない!」
ほとんどはずっと走っているのでこのままスピードを上げるのも苦労であった。だが、1人だけそれが可能だった。
走太「ならば僕の個性を使って響くんに追いついてみせるよ!」
突然走太は立ち止まった。
髪木「どうしたんだ?速光。」
そして走太はクラウチングスタートのポーズをした。すると
     バリバリバリバリ!!!!
なんと走太の体が黄色のイナズマに包み込まれた!
翼「眩しっ!」
髪木「すげー!なんか神秘的だな!」
走太は目で響をとらえる。
走太「行くよー!」
走太は走り出した瞬間、一気に10メートルほど先へ行ってしまった。周りは走太が速すぎて走太の姿が全く見えず、見えたのは走太に取り巻いていた光の残像だけだった。時差で風がビュウウと吹く。気づいたときには、走太は響の近くまで追いついていた。それでも走太はどんどん加速する。そして響が走っているところまであと10メートルを切った。
走太「響くーん!!」
響は呼ばれたのに気付き、走太の方を向く。
響「走太!」
響は呼ばれたのに気づき、走るのをやめた。響が唐突に止まったので、走太はすぐに止まろうと思ったが減速できず、響を通り越してしまった。
走太「あーれー」
      「…………。」
止まれずにどんどん遠ざかっていく走太の姿に、一同は何もツッコむことができなかった。
翼「おーい!音音無事か!?」
響「あ、お前らも来たんだな!」
危険な状況なのに呑気な響の様子に妖子はイラついてしまった。
妖子「あなたたちもって!あなた、あのロボットに1人で立ち向かえるとでも思ったの!?」
響「ごめんごめん。」
響は申し訳なさそうに手を頭の後ろに当てて「えへへ。」と笑った。呆れてため息をつく妖子。
大地「響さん!怪我は無いだべか!?」
響「うん!みんな本当にごめん。」
竜騎「お前もよくせっかちって言われるだろ?俺もよくせっかちなやつだって言われるんだよなー。」
響「オレはせっかちっていうよりは、オレのポリシー?座右の銘?がさ、考えるよりまず行動!だからさ!」
響はにぱっと悪気なく笑う。
翼「なんだかなー、この世を知らないだけなのか?」
妖子「全く…、子供みたいね。」
すると遠くから走太が個性を使った全速力で走ってきた。
走太「大変だ〜!二体目のロボットが現れた〜!」
竜騎「マジかよ!?」
走太は、今度は減速を早めに行ったので、いい感じにみんなの近くで止まることができた。
走太「とにかく!ロボットを早くどうにかしないと!」
鼓膜を破るほどの轟音が鳴り、地面が縦に激しく揺れたと思ったら、突然横からまた同じ形のロボットが現れた。
走太「出たー!!」
髪木「おいおいまたかよ!」
翼「これは…、もう終わりだ。」
大地「都会ってすんげぇところなんだな…。」
翼「都会関係ないけどな。」
走太、髪木、翼、大地、竜騎は目を開いて、顔をアングリしたまま呆然と立っているだけだった。それを見て励まそうとする響。
響「みんな何に驚いてんだよ!勝負はまだ始まってないだろ?」
妖子「勝手に飛び出したあなたが何言ってるのよ!」
響「す、すまん…。」
さっきまで無邪気に笑っていた響も怒られてさすがにシュンとしてしまった。
翼「まあまあ落ち着け。とにかくまた二手に分かれるしかない。」
大地「そうだべな。」
竜騎「とにかく響のことはもういいよな!まずはロボットを片付けんぞ!」
響「竜騎…!うん、オレ絶対にみんなの役に立つから!」
ロボットがまた現れたのなら自分たちは二つに分かれるしかない。もう響は悪くない。それは満場一致だった。そして互いに励ましあって奮起して、ロボットの方を向いた。全員覚悟を決める。
走太「行くよー!」
また二手に分かれたので、一体のロボットにつき3人、4人となってしまった。



影無(僕、だれにも気付かれてないから、どこの集団にも入れないなー。)
影無は走太たちについて、ロボット一体と戦う人数が少なすぎて絶対に勝ち目はないことが分かっていた。でもみんなはヒーローになりたい気持ちが強いから戦うのだということも分かっていた。だからこそ影無は、自分ならではの方法を使ってみんなを助ける方法はないか考えた。
影無(いいこと思いついたー。)
影無はクルッと半回転して、なぜかマリアの方へ走っていった。



 走太たちは
走太「僕たち側は狐さん、髪木さん、古代くんだね!特に特待生さんがいてくれてなんだか安心するよ!」
髪木は褒められたからか「へっ!」と言って歯を出して笑った。
髪木「あの女には負けてらんねーっつーの!!」
この話を聞いていた大地は突然真剣な顔になる。
大地「オラも特待生っつーもんじゃねぇが、必ず力になるだよ!」
妖子も力強く頷いた。走太はみんながいてくれて本当に心強いと感じた。
走太「みんな!戦うよ!」
3人「うん!」
妖子「でも私、ロボットと同等に戦えるかもしれないわ!」
周りは妖子の発言に耳を疑った。
髪木「本気かよ?あんな巨大なんだぜ?どうやってやるんだ?」
3人は妖子の方を向く。すると妖子は突然体育着を脱ぎ出した。下着ごと一気に脱いだため、3人は妖子の上半身裸の姿を見てしまったのだ。3人はもちろんフリーズする。





走太「ぎ、ぎゃあああああああきつねさあんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
走太は赤面させて手で顔を隠した。パニックになりすぎたからか、鼻血を噴水のように飛ばしながら気絶して倒れてしまった。
大地「妖子さんのおっぱい、随分とでけーな!田舎もんは野菜ばっかり食ってるから貧乳ばっかりだべ。」
髪木「お、おい古代!女の裸見るなよ!」
大地は髪木の方を向き、髪木のおっぱいをじっと見た。そして疑うような声で言った。
大地「弦さんのおっぱい小せえなぁ。推定Aカップだな。おめぇ本当は田舎もんだな?」
大地は変態というわけではなく、ただ純粋にそう思っていただけだった。だが髪木にとってそれは関係なかった。髪木はゆっくり顔をうつむける。よくよく見ると拳を力強く握りしめすぎて力こぶが出ている。髪木はこれまでにない低い声でゆっくりと言った。
髪木「おっぱいなんて、小さくたっていいだろうが…。」
髪木はギッと大地のほうを見た。
大地「つ、弦さん…?」
今の髪木の顔はまさに般若だ。
髪木「おっぱい小さくて悪かったなゴラァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
髪木は怒りマックス、渾身の髪の一振りをした。
大地「ぐふっ」
大地は頭を殴られて気絶した。髪木はとてもスッキリしたようだ。
髪木「ふぅ…。ん?」
髪木はふと横を向くと妖子はもう全裸だった。髪木と妖子の目が合ってしまった。気まずくなって目をそらす髪木。
妖子「別にいいのよ?だって見られるのも仕方ないから。私の個性、こうしないと使いにくいし。」
髪木「お、おう…。」
髪木はそれでも気まずかった。女同士であれ、人の裸を見るのは嫌なのだ。そんな髪木の心情に気付くわけがなく、妖子は「やるわよ。」と言った。すると妖子の体から白い煙が出てきた。髪木は煙に気付いて妖子のほうを向いた。そのときにはもう煙で妖子の姿が見えなかった。すると代わりに黒い影が現れた。
髪木「なんだ!?」
煙の中から何かがぐんぐん大きくなっていた。そして煙の中からロボットが出てきたのだ。
髪木「ろ、ロボット!?」
ロボットから声が聞こえた。それは妖子の声だった。
妖子「髪木さん!私よ、狐よ!私、ロボットに化けたのよ!」
髪木はなぜ妖子がロボットになったのかまだ分からなかったが、ようやく変化という個性はモノに化けることができるという個性だと理解した。
妖子「それに体格差が無くなればロボットと同等の力になれるでしょ?」
髪木は妖子の考えについて、なるほどよく考えた、だからロボットになったのか、頭がいいなと思った。
妖子「戦うわ!」
妖子はロボットの頭に向かって殴った。ロボットがバランスを崩している間にもう一発殴った。
髪木(結構原始的〜。)
髪木は華麗な女性にしては戦い方のギャップに驚いたのだった。妖子は順調にロボットを壊している、はずだった。
妖子「ダメね…。全然凹まないどころか傷もつかないわ!」
髪木「なんだって!?」
髪木はその時に秀英が言っていたことを思い出した。



秀英「あのロボットの攻撃方法は殴る、レーザービーム、視野は360度センサーが付いているから奇襲も不可能。鋼の強度はアメリカ軍が極秘製造法を使って作ったからそう簡単には凹まない!」



妖子「ならば引きずり倒してみせるわ!」
妖子はロボットの腕をつかんだ。殴るという動作は封じることができたが、ビームを発射するという動作は封じることはできない。妖子はロボットからレーザーが発射されることを忘れてしまっているようだ。
髪木「まずい!狐!今すぐその手を離せ!」
妖子「ええっ?」
髪木が警告したのも遅かった。ロボットは妖子に向けてレーザービームを撃ったのだ。それは太くて赤かった。ビームは妖子の腕に当たった。妖子の腕は粉々に砕け、辺りに散らばった。妖子は「キャアッ!」と悲鳴を上げ、変身する時と同じ煙を発しながら倒れていった。
髪木「狐っ!!!!」
煙が収まり、妖子の姿が見えた。妖子は元の姿に戻っている。髪木は嫌な予感がしてすぐに妖子のもとへ駆けつけた。真っ赤な物体が見えて一瞬体がゾワっとした。嫌な予感は当たっていた。妖子の腕が真っ赤に染まっていたのだった。
髪木「大怪我じゃねぇかっ!」
妖子「気にしないで、私、だい、じょうぶ、よっ…!」
妖子は力を振り絞って立とうとしたが立てずに力が抜けて倒れてしまった。倒れた衝撃で腕の痛みが悪化してしまい、妖子はさっきよりもギュッと腕を押さえている。とても辛そうだ。妖子のことを本当に申し訳なく思う髪木。
髪木「お前はもう休んでくれ!」
髪木は妖子の方に向かって立て膝をついて、妖子の怪我をしている方の手を握った。そして顔をロボットの方に向けた。自分たちは抵抗すらできない。無力さを感じた。
髪木(俺はヒーローになるんじゃないのか!?なのにロボットに何もできないだなんて!)
髪木は苦しそうに血が出ている腕を押さえている妖子を見る。応急手当てもできない自分に、もっと無力さを感じた。
髪木(仲間も守れないのか!?狐がこんなに助けを求めているのに、何をしているんだ俺!)
ロボットはこちら側に向かって歩いていた。どうやら気絶している男子の方に向かって歩いている。髪木は立ち向かおうと思い、立とうとしたが、その瞬間脳内に、妖子がロボットのレーザーに攻撃され悲鳴を上げて倒れていった姿が遮った。髪木は恐怖で力が出なくなってしまった。髪木の脳内に、髪木の母の笑顔がぼんやりと浮かんできた。
髪木(母さんに誓ったのに…。どんなに辛いときも、強い人でいるって…!)
髪木に追い討ちをかけるように、脳内に走太が言ったことを思い出した。



走太「特待生さんがいてくれてなんだか安心するよ!」



髪木(特待生なのに、特待生なのに…!)
髪木の瞳から悔し涙がこぼれた。だがロボットは非情だ。髪木のことも気にせずに男子達にどんどん近づいてくる。ロボットは男子達のところに到着すると、大きく腕を上げた。男子達をペチャンコにするつもりなのだ。髪木はもう絶望するしかなかった。本当にロボットが彼らをペチャンコにすることはないが、2人が死んだとされて不合格になり、連帯責任でみんな在学免除されるだろう。
髪木(俺のせいでみんなの夢を壊してしまうんだな…。)
ロボットは一気に腕を振り下ろした。
髪木(もう終わりだな…。)
髪木の目は、さっきまでの鋭さも失っていた。
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