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第5時間目「救助活動」

 先程助けた女性は腕に大きな切り傷を負っていた。彼女は辛そうに傷を押さえている。
花夫「ふむ、女性は岩の破片に切られたのか。」
髪木「どうすんだよ〜!俺は包帯とか持ってねぇし…。おい鏡沢!持ってるか!?」
亜理子「トップヒーローになる私が傷を負うなんて無いわ。だから包帯だとか持ってるわけないじゃない!」
髪木「コイツマジでウゼェ!!」
髪木は顔を真っ赤にして憤怒した。その時だった。
薫「あのぉ、傷を見せてくれませんかぁ?」
髪がサラサラで、オッドアイの優しそうな目の男が女性の元へ駆け寄った。女性が男に傷を見せると、男は口を押さえてオロオロした。
薫「わ〜っ!痛そぉ!この傷じゃ大きすぎて絆創膏でも覆いきれないなぁ…、包帯もないしぃ…。そぉだぁ!まだ使ってないハンカチがあったんだぁ!」
    (女子より女子力高っ…!)
全員をそう思わせてしまうほど女子力が高い男は甘露薫。個性はアロマ。自分から発するアロマで人の心を癒すことができる、サポート系ヒーローなのだ。
女性「すみません、本当に…。」
薫「いいんですよぉ!当たり前のことをしただけですぅ!今から手当てしますねぇ!」
すると薫の体から暖かい日のお花畑を思わせる、花々のいい香りが漂ってきた。女性だけでなく、周りも心がリラックスした。
薫「今から消毒しますねぇ。痛いですけどぉ、我慢してくださいねぇ。」
薫はずっと持ち歩いているポシェットから消毒液を取り出し、女性の傷に塗った。本来は相当痛いだろうが、薫の個性のおかげでリラックスしているからか、女性もあまり辛そうではなかった。
薫「次にぃ、ハンカチを巻きますねぇ。あ、今日まだ使ってないのでぇ、安心してくださぁい!」
薫は女性の傷をハンカチで巻いた。真っ白で清潔感のあるハンカチだ。薫はハンカチを巻き終わるとふぅと息を吐いた。
薫「歩けますかぁ?」
女性「はい!」
薫「よかったですぅ!一緒に安全な場所へ行きましょう!そうだぁ、みんなぁ!ぼくは救助した人の手当てに専念するからぁ、ぼくのところに連れてきてねぇ!」
薫と女性は一緒に遠くへ歩いて行った。女子は全員思った。
    (ま、負けたっ…!)


 漸く救助活動を本格的に始めることができるようになった生徒たち。周りを見渡すと、木々が倒れて荒れた森、広くて泥で少し濁った池、土砂崩れが起こった斜面、地震で崩壊したビルなど、本当に事故や災害が起こった後みたいな光景で、高い雄英クオリティを物語っている。
走太「ここはみんな得意な場所に行くべきだと思う!」
髪木「花夫はやっぱり森の中が一番得意だよな!」
亜理子「私は足りないところをフォローするわ!だって私はなんでもできるものね!」
翼(マネしてるだけじゃねーの…?)
そしてそれぞれ分かれた。


 森では
花夫「これは酷いな。木を元に戻さなければならん。」
すると遠くから子供が泣き叫ぶ声が聞こえた。
子供「わーん!ママ〜!」
近くにいた高身長の男と低身長で黒のおかっぱ頭の女が駆け足で声の元へ行く。
蜘蛛美「時よ、ここで子供が泣いておるぞ。どのようにあやせばよいのじゃ?」
時「蜘蛛美様、ここはまずどうしたのか聞くべきではないでしょうか。」
蜘蛛美「そうじゃの。」
古風の口調の女は巣胚田蜘蛛美。彼女の個性はもちろんクモ。クモっぽいことならなんでもできるのだ。そして彼女に仕えているのは止皆賀時。彼の個性はストップ。指先で触れたものの動きを止めてしまうのだ。
蜘蛛美「何かあったのじゃ?」
子供「ママとはぐれちゃった〜!」
時「大丈夫ですよ。あなたのお母様は必ず見つかるでしょう。」
時が励ましても不安が残るせいか子供は泣き止まない。2人はどうやって子供を元気付けようか悩む。悩む。
蜘蛛美「そうじゃ!」
蜘蛛美は急に何かが降ってきたかのようにひらめいた。そして手をあやとりで遊ぶときのように動かし始めた。子供は不思議そうな顔で見つめる。そして
蜘蛛美「できたぞ。「でく」じゃ!」
蜘蛛美は個性を使ってクモの糸を操り、ヒーローデクの形を作ったのだ。確かに、円の上にVの形がくっついているのがデクに見える。子供は目を輝かせて「大好きなんだ!デク!」と言った。
蜘蛛美「元気な姿をそなたの母上に見せて、喜ばせてやるのじゃ。」
子供は元気にうなずいた。
時「さすが蜘蛛美様です!」
蜘蛛美「昔に父上が妾によくやってくれたのを思い出したのじゃよ。」
そして蜘蛛美、時、子供は薫がいる、安全な場所へ向かったのだった。


 池では
亜理子「結局田舎っぺの男と2人きりなのね。」
大地「田舎もいい場所だべ。」
影無「あ、あのぉー。」
亜理子「それにしても汚いわね、この池。ちゃんと掃除してるのかしら?」
大地「一応災害の後っていう設定だから、汚れてるんだと思うべなあ。」
影無「気付いてますかー。」
亜理子「溺れそうで必死に浮いてる人はいなさそうだけど、沈んでる人はいるかもしれないわね。」
大地「ならばオラに任せるだ!あ、亜理子さんもせっかくだから、オラの個性使って助けてほしいだよ!」
亜理子「当たり前よ。トップヒーローとしてね。」
大地と亜理子は個性ダーウィンで水の中へ入って行った。
影無「…。」
最後まで気づいてもらえなかった男は影無カイム。個性は皆無で、存在感がなくなる個性だ。常時発動型のせいなのか、普段誰にも気づいてもらえないこともあるらしい。
影無「まあ、いつものことだし…。」
 

 斜面では
翼「誰か土砂に飲み込まれた人はいるのか?」
剛「これじゃあ泥が邪魔で分からないね…。」
2人が困っていた時に、近くで「うわ〜」と汚物を見るような目で泥をかき分けていた男がいた。髪の毛を染めていて、金のピアスやブレスレットをつけていて、まさにギャル男だ。
守「きったね〜。」
       グニャッ
守「デュエ〜!!」
翼「そりゃ泥なんだから仕方ねえだろ。」
翼と剛は呆れながら男に近づいた。
守「ウンコじゃないスか…。」
剛「ウンコ…?」
守「こんなのウンコみてーじゃないスか!」
剛「ちょっと、ウンコって、汚い言葉は言っちゃダメ!」
守「だって泥の感触?色?ウンコじゃないスか!」
剛「感触?もしかしてウンコ触ったことあるの!?」
守「あるわけないじゃないスか!ウンコなんかアンタみたいに死んでも触りたくねーッス!」
剛「だーかーら!ボクは死んでない!てか、死んだからってウンコは触らないからね!」
翼「ウンコウンコばっかり、「クソ」みてーにうるせぇよっ!!」
剛・守((あー、言いたかったんだなー。))
流れる沈黙。突然守がなにかひらめいたようだ。
守「そーだ、バリア張ってかき分けよう!我ながら名案ッス!」
翼・剛「…。」
後輩口調でアホの塊である男は盾山守。個性はバリアで、自分の体の周りに頑丈なバリアを張ることができるのだ。守は手の周りに薄くて透明なバリアを張って泥をかき分け始めた。
守「これなら汚くないッス!」
翼と剛は少しだけモヤモヤしたが、個性の使い方は様々であるという結論で終わらせた。ただ
翼「そんなんじゃ日が暮れるぞ?」
守「だって、この方法じゃないと人見つけられないじゃないスカ。」
翼は剛をじっと見た。
剛「な、何か…。」
翼「死野田、お前泥をすり抜けて人を探してこい。」
剛「え!?い、嫌だよ!さっき守がウンコとか言ったから!」
守「頼むッスよー!」
守はニヤニヤしながら剛を見る。さすがの剛も守にイラついたようだ。
剛「絶対ヤダ!」
翼「頼むって。」
守「頼むッスよー!」
あまりにも守がヘラヘラしていたため、翼は守を叩いた。守は素直に謝った。そして翼は剛に向かって手を合わせて「いつか借りは返す。」と言った。剛は唸りながらやるかやらないかで迷ったが、決心した。
剛「あーっ!分かった、行けばいいんでしょ!行けば!」
守「さすがゴースト!ヒューヒュー!」
翼・剛((こいつ鏡沢とは別の意味でムカつくわー))
だが剛は考えた。自分は漢だ。一回やると決めたものをやっぱりやらないとするのは情けない。剛は腹をくくる。
剛「うわぁ、うわぁ…。うおーっ!」
剛が泥の中で人を見つけたおかげで3人は救助活動を成功させたのだった。剛はウンコの中に入ったと考えてしまい気分が悪くなったのだが。


 ビルでは
走太「すごいなー、これ…。」
髪木「酷い壊れ具合だぜ…!」
全壊したビルの前で圧倒される2人。早速救助活動を開始しようとするが、グチャグチャに積み重なった瓦礫やビルに置いてあった机や棚が邪魔をして人を見つけられない。下を覗こうとしても、影のせいで真っ暗で何も見えない。
髪木「暗くて奥まで覗けねーな。」
走太「さすがにライトは持ってないし…。」
走太と髪木が困っていた時だった。
月宮「ボクでいいのなら手伝ってあげるよ。」
月宮は個性フラッシュで指を光らせた。明るい場所でも光を感じてしまうほど眩しい。そして瓦礫の下の真っ暗な部分を照らす。
月宮「誰か下敷きになっている!早急に助けるよ!」
真っ先に飛び出したのは竜騎だった。
竜騎「オーケー!さあドラゴンたち、自慢のパワーを見せてやれ!」
ドラゴンたちは竜騎から離れて人の上に乗っかっている瓦礫をどかし始めた。しばらく経って男性が出てくると、ドラゴンたちは男性を、1匹のドラゴンは膝に、もう1匹のドラゴンは両脇の下に巻きついて、そのまま竜騎たちの元に運んできた。
男性「助けてくれてありがとう。それにしてもこのドラゴンたちすごいね。」
竜騎「だろー!コイツらは力ありまくりなんだぜー!」
ドラゴンたちは「シャーッ!!」と竜騎に応えた。竜騎もよしよしでドラゴンたちに応える。
男性「まだ下敷きになっている人がいるんだ。」
走太「分かりました!すぐに助けます!」
竜騎「よっしゃー!気張ってこーぜ!」
みんなは奮起して救助活動を続けた。


 順調に救助活動を進める生徒たちを見ていたマリアは、見事な個性の活用と生徒同士での連携に感心していた。だが、マリアはまだまだ合格とは認めていなかった。
マリア「これからが本番よ。私を楽しませてちょうだい。」
ふふっと笑って、これからの事を見守ることにした。
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