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第17時間目「B組」

 雄英高校1年A組は、今日もヒーローになるための授業を受けた。特に体育は他の科とは全く異なっていて、主に個性を使った授業をするのだ。A組は疲労困憊。まだまだ体力が追い付かないのであった。
走太「ふぁぁぁ…。眠いなぁ。早く寮生活にならないかなぁ。」
翼「相棒、寮生活は体育祭が終わるまでバタバタするからって理由で六月からなんだぞ。」
走太「え〜っ、そんなぁ…。」
走太は大あくびした。それに続いて翼と薫もあくびをする。
翼「俺の背中が筋肉痛だ。」
薫「ごめんねぇ、ぼくぅ、個性使いすぎてぇ、もうアロマ出せないやぁ…。」
薫の個性アロマは、使いすぎるとアロマが出せなくなってしまうのだ。
剛「眠気もプルスウルトラだ〜、なんてね。ふぁ〜っ。」
髪木「いつ以来だ?こんなに静かな教室は。」
A組は亜理子が委員会で教室にいないのもあってか、珍しく静かだ。誰かのあくびが聞こえるほどの静けさが教室を包んだ。




     ガラピシャッ!!!
夏火「うおおおおおおおおおっす!!!!!!みなさぁん!!こんにちはーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
走太「うわぁ!だ、誰!?」
扉を勢いよく開けてA組に入ってきたのは、この教室の生徒ではない女だった。髪は真っ赤でまだ春なのに半袖、体は火傷だらけ。
夏火「みなさんどうしてボーッとしてるんですか!?まだまだ昼休みじゃないですか!!」
翼「もう昼休みだから寝てるんだよ。」
夏火「全く!熱さが足りませんね!B組の方が活発ですよ!!」
髪木「ん?アイツ特待生試験にいたヤツじゃね?」
どうやらこの女は同じヒーロー科であるB組の生徒らしい。
零「そこの人誰?てか、暑苦しい。私が本当に凍らせるけど、それでもいい?」
珍しく無口な零が喋った。それほど耳障りだったのだろう。それでも女は冷めない。むしろ燃えさかった。
夏火「おお!あなたは氷の個性なんですね!!私の個性は焼きつくすなんですよ!対照的な個性同士、よろしく!!あ、私は火村夏火って言います!よろしくお願い…、しまーーーーーーーーーーーーすっっっっっ!!!!!」
髪木「まじでうるせぇな!」
剛「なんかヤバイやつ来ちゃったじゃん!ねぇ零さん!早く凍らせてよ!」
零「…。やっぱり無理かな。」
剛「無理なんかーい!」
翼「随分と暑いな。「夏が(夏火)」来たからなんだな。なんてな。」
剛「悪いけど今の状況じゃ誰も寒くならないからね。」
誰もこの女を止められない。もう眠くても眠れない。A組が絶望したその時。いきなり夏火に後ろから水が飛んできた。
夏火「うわぁ!」
夏火は背中側だけびしょ濡れになった。
水輝「ドアホ!いきなりA組さんに迷惑かけんなや!」
夏火「お!!滝川さん!!」
A組に入ってきたのは春なのに日に焼けた男だった。
水輝「みんなホンマにすまんな。学級委員として謝る。」
早い展開に理解が追いつかないA組の生徒たち。するともう1人B組の生徒であろう人たちが入ってきた。
感奈「んもう!夏火ったらまたこんなことして!」
メガネをかけた真面目そうな女が来た。
秀英「可愛い…、タイプ!」
髪木「いきなりナンパかよ。」
秀英はジーっと頬を染め、鼻を膨らませながら女を見た。
髪木「おい気持ち悪りぃぞクソメガネ!」
秀英「クソメガネ言うな!」
水輝「実はな、せっかく同じヒーロー科やから、仲良くしたいと思うてA組に来たんやけど、このアホンタランが先に突っ走ってしまってな。」
男は夏火を叩く。夏火は反省しているようだ。感奈は困った顔をしてため息をついた。
感奈「A組さんごめんなさいね。全く、夏火は個性だけじゃなくて性格まで火傷するほど熱いのよ…。」
響「熱い…?」
「熱い」という言葉に響が反応した。そして響はゆっくりと夏火に近く。
響「キミ!熱いんだね!オレ、熱いヤツ好きだ!」
夏火は目を丸くして響を見た。そして嬉しそうに言った。
夏火「あなたも熱いんですか!?いいですねいいですね!!」
響と夏火はガチッと握手した。2人の気持ちが一致したのを確認したのだ。堅い絆ができた瞬間だった。そして楽しそうに「ファイアー!!」と叫びながら教室の外に出て行ってしまった。
翼「似た者同士だ。」
走太「そうだね…。」
一方でB組の二人は申し訳なさそうにしていた。
水輝「ウチの火村がすまんのぉ。せや、せっかくだから自己紹介でもするわ。ワシは滝川水輝じゃ。個性はアクアジェット。B組で学級委員をやらせてもろうてる。」
大地「水輝さん!」
大地が突然水輝の方へ歩いて行った。
大地「オラ、古代大地っていうだ!おんめぇもここら辺の人じゃないなぁ!」
水輝「おお。ワシは大阪から来たんや。」
大地「オラは山奥から来たべ!同じ地方もん同士、よろしく頼むだよ!」
大地が握手を求めると、水輝は爽やかに笑って握手した。
感奈「アタシは遠藤感奈っていうの。個性はテレパシー。変なことを考えたら、アタシがビシッとお仕置きするわよ!」
感奈の個性を聞いた瞬間、秀英がギクッとした。
月宮「どうしたんだい?そんな怖い顔して。」
秀英「あ、いや、なんでもない。やっぱり告白するのはやめておこうか…。」
月宮「ふーん。」
秀英はなぜか悲しそうな顔をしてため息をついた。そのことを知らないまま、感奈は話を続けた。
感奈「ちなみにアタシは副学級委員よ。滝川がたまーに暴走するから、それをなだめてあげてるの。」
水輝「おいおい遠藤。ワシは学級委員や。暴走なんかしないで。」
感奈「前なんてヒーロー相応試験の時は「ワシが頑張らないで誰が頑張るねん!?」って張り切って怪我だらけになったじゃない。」
水輝「迷惑かけてもうてすまんのぉ…。」
水輝は恥ずかしそうに手を頭に当てた。すると花夫が感奈に近づいて言った。
花夫「遠藤さん。私は植木花夫という。私も副学級委員なんだ。よろしく頼むよ。」
感奈「植木さん、よろしく頼むわね!」
花夫と感奈も握手した。
薫「なんだかぁ、B組の人もいい人だねぇ!僕ぅ、仲良くしたいよぉ!」
ここまではA組、B組共にいい雰囲気だった。あの女が来るまでは。
亜理子「なんの騒ぎかしら?」
髪木「あぁ、鏡沢戻ってきたんだな。今B組さんが来てくれたから話していたんだぜ。」
亜理子「B組…。」
亜理子は水輝、感奈の顔をゆっくりと見る。いきなりじろじろ見られて2人は困っていた。
水輝「ご、ごきげんよう。」
感奈「な、なに?」
突然、亜理子は笑い始めた。
亜理子「特待生がいないクラスなんて、低級クラスよ!」
感奈「え?」
A組は絶望した。
亜理子「いい?この私鏡沢亜理子様、そう!トップヒーローになるこの私がいるクラスは優秀じゃなきゃダメなのよ!だからといって私のクラスメートも私より劣るけどね!」
感奈「なんかよく分からないけど、サイテーね…。」
感奈の発言が聞こえてしまった髪木は焦り始めてすぐに亜理子を止めに行った。
髪木「おいテメー!クラスに優秀もなにもねぇだろ!す、すまねぇ!こいつプライドが高いんだよ!」
亜理子「本当のこと言ってるだけよ?」
髪木「だからそういうことじゃないー」
水輝「面白いやないか。」
髪木「はあ?」
水輝の意外な言葉に周りは目を丸くした。水輝は興味がありそうに亜理子を見た。
水輝「同じトップヒーローを目指すクラス同士、甲乙も自然とついてくるわい。だから、ワシらB組だって負けてないこと証明せなあかんのぉ。」
亜理子も楽しそうに水輝を見る。
亜理子「自信があるのね。まあいいわ!」
亜理子は水輝を指差して堂堂たる態度をとった。
亜理子「今日は委員会で体育祭の話を聴いてきたのよ。体育祭まで早いものであと1ヶ月!そこで戦うとしましょう!」
水輝「ほう、体育祭か。面白いやないか…!」
亜理子と水輝の間にバチバチッと電気が走る。2人は自信満々の笑みを浮かべていた。この空間こそ、誰も止められなくなった。しかし、戦いの終わりを告げるかのように、チャイムが鳴った。
亜理子「体育祭、楽しみにしてるわ。」
水輝「ワシもじゃ。」
水輝は教室に帰って行った。
感奈「ちょっと滝川!待ちなさいよ!あ、A組さんまたね!」
水輝を追いかけて感奈も帰った。しばらくして響が教室に戻ってきた。
響「いやー、火村のやつ、ワイルドだったぜ!なにしろ、春なのに半袖だもんな!しかも個性は「焼きつくす」!オレもホットになったぜ!…どうしたんだみんな?そんな変な空気になってて。」
もちろん先ほどの亜理子と水輝の件である。本当は亜理子を除いてみんなB組と仲良くなりたかった。切磋琢磨する仲間でありたかった。だが亜理子がいる限りもう無理だと確信して、気まずくなっているのである。だが一部は響と夏火が橋渡し役になってくれるかもしれないという期待もあった。
響「そういえば、B組にオレの双子である韵音がいるんだぜ!個性は「美爆音」!オレとは少し違う雰囲気の個性だぜ!」
気まずい沈黙。
響「なんだよー!みんなオレの話に興味ないなら、オレ、授業まで寝てるからな!」
興味がないわけではなかった。ただ、ここでB組に融和的な発言をすると亜理子がなにを言い出すか分からなかったので黙っていただけだったのだ。

 A組とB組の因縁は、まだ始まったばかりだ。
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