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第13時間目「頂上決定戦」

 ジャンケン。それは安全かつ平等に決められる、銀河で一番素晴らしい決め方である。
          (秀辞苑より)




 戦いの時が来た。そう、今からクラスで誰がトップにふさわしいか蹴りがつけられる。
マリア「まずは誰でもいいからニ人組を作ってジャンケンしてちょうだい。」
走太「それじゃあ…。」
走太は髪木と目が合った。
走太「あ、髪木さん、ジャンケンしよう!」
髪木は静かに首を横に振った。
髪木「俺は白黒つけたい相手がいるんだ。」
髪木はバッと指を指した。そこには堂々たる態度の亜理子がいた。
髪木「そこの高飛車!プライドの塊!お前はまだまだトップじゃないことをここで知らしめてやるぜっ!」
亜理子はこれを聞いて高笑いした。そして髪木を馬鹿にしたような顔で言った。
亜理子「私をなんだと思っているの?長髪女サン?私は本当のことを言っているだけよ?だって私が一番だもの!」
髪木と亜理子の間に火花が散り、誰も仲裁出来ない空間になった。仲が悪い二人だが、息ぴったりに深呼吸した。
髪木「決めるとするか…。」
亜理子「そうしましょう。」
ここで勝てば実質特待生、いや、クラスでトップとなれる。ジャンケンという戦いに懸ける二人の思いは誰よりも強かった。そして出す手の形を決断した。
髪木「最初はグー、」
亜理子「ジャンケン…」
        ポン!
髪木はグー、亜理子はパーを出した。
亜理子「やっぱり私の勝ちね!」
髪木「く、クソっ…!」
亜理子は「こんなもんよ!」と髪木に勝ち誇った顔をした。一方で髪木は頭を抱えて悔しがる。一旦白黒がハッキリとした瞬間であった。
髪木「次は絶対に負けねぇからな!」
亜理子「何度やったって同じよ!」
近くにいた翼が髪木に質問をした。
翼「なんでグーを出したんだ?」
すると髪木はニタっと笑って言った。
髪木「グーってさ、一番シンプルで気合が入っていてカッコいいだろ?俺はジャンケンで最初に出すのはグーって決めてるんだぜ!」
響「グーってワイルドだ!」
響はグーのカッコよさに興奮した。
竜騎「おっと!お前たちのジャンケン、攻略出来ちゃったぜ?」
亜理子「もうツルサンと音音サンが私に勝てることは二度とないわね!おーほっほっほっ!」





秀英「さあ、俺たちもやるか。」
走太「そうだね!秀英くん!」
走太と秀英の運命の一戦が始まろうとしていた。秀英は頭脳フル回転で走太が出す手の形を分析し始めた。
秀英(実は勝率が一番高いのはチョキであるという研究結果があると前に本で読んだ。ここはチョキを出すべき…。だが相手はそうとう固くなっている。速光は緊張で力が入って手の形を変えられずにグーを出すだろう。だから俺はパーを出すか…。いや、ここはやはりチョキか…?いや、相手はグーを出すと判断してパーを出そう!)
走太、秀英は出す手の形を決めた。秀英はメガネをカチャッと直してジャンケンに臨んだ。
走太「いくよ!最初はグー…。」
秀英「俺の証明に間違いはない!!!!」
        ポン!
秀英が見たのは、走太のチョキの形の手だった。
秀英「ぐ、ぐわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」



 そこからどんどん人数を絞っていき、最後の五人で決着をつけることにした。残ったのは走太、翼、亜理子、花夫、そして剛だった。
走太「結局ここまで残っちゃった…。」
剛「ここまで来たら、学級委員になるしかないよね!」
花夫「最近の若者は勢いがすごいな。圧倒されるぞ。」
翼「おいおい、植木も俺たちと同じ年齢だろ。それともなんだ?植木はもう年老いて「おるど(おるの)」か?」
花夫「座布団一枚だな。はっはっはっ。」
四人は楽しそうにしているが、一人だけ気合が違う者がいた。
亜理子「私が絶対学級委員になるもの!そうじゃないと納得いかないわ!」
亜理子の心には燃え盛る炎があった。亜理子にとって学級委員になることは自分のプライドにかけて、とても重要なことなのだ。
亜理子「この戦い、負けられないわ…!」
   (一人だけ空気が違うなー。)
五人は自分が出す手の形を決めた。後は自分を信じて勝利を掴み取るしかない。
花夫「最初はグー」
走太「じゃんけん…」
       ポン!!!!
翼、花夫はパー。走太、亜理子、剛はグーを出していた。
翼「き、キターー!!!」
花夫「勝ってしまったみたいだな。」
走太「負けたー!」
剛「悔しいな!ねっ、亜理子さん!…亜理子さん?」
亜理子は下をうつむいて肩を震わせていた。目元は前髪の影で隠れて見えなかった。
剛「亜理子さん、負けは負け。仕方ないよ…。」
亜理子は肩をヒクッとさせた。
剛「もう諦めよう?」
亜理子「…。ふ、ふふ…」
剛「…。え?」
亜理子「ふふふっ、ふふっ!おーほほほっ!」
亜理子は突然に大きな声で笑い始めた。しかも今までにないほど長い時間笑っている。
翼「何があった?」
亜理子「いえ!大空サンと植木サンが仕事で困って苦しそうにしている姿を思い浮かべたら、私おかしくなって!おーほっほっほっ!」
    (プライド高っ…!)
秀英「やはり彼女の言動がやたらと鼻に付く…。」
月宮「ま、そういう人なんだよ。ある意味前向きな人でいいんじゃない?」
亜理子は笑いが止まらなくなった。
亜理子「困ったときは、いつでも替わってあげるわ!ほほほほほっ!!」
走太「普通は助けてあげる…、じゃなくて?」
亜理子「せいぜい頑張ることね!おーほっほっほっ!」





 本当の最後は翼が学級委員、花夫が副学級委員という結果で終わった。そして亜理子は体育委員になったが、自分が体育委員になるのがもったいないと相変わらずの心構えであった。
走太(これくらいの勢いのほうがいいのかもしれないね…。)
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