日向ごっこ
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3ヶ月にも及ぶ「本日の慊人の屋敷チャレンジ」そう。リンとの一件があってから約3ヶ月。私は慊人と会っていない。警備(対わたし)が厳重となって会えずじまいだ。ほんとに腹立つ。でも今日は雨だ。視界も悪かろう。見つかる確率も減っているはずだ。そんなことを思いながら中を進んでいくと悲鳴のような声で「紅野さん……!!」と声がした。ただ事じゃない雰囲気を察して中に入っていくと背中を押さえてふらついている紅野と口元を押さえる女中さんがいた。すぐさま紅野に近寄る。
「紅野? どうした? 体調わる……い」
ぽた。そんな音がして赤い水が流れた。
「紅野!? なんで血が……っ、ああもういいや! そこの人! はとり呼んできて! あと寝床も!! ……早くっ!!」
「は、はい!!」
雨に打たれていたので縁側に紅野を引っ張って座らせる。シャツを脱いでそれで背中の傷口を強く両手で押さえた。ら、その手を紅野本人に掴まれた。
「……慊人」
「は!? 慊人がなに!!」
「追わないと……どこか……走っていって……追わないと」
「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「いいから、俺のことは……早く……っ慊人を」
「~っ!! 紅野が死んで慊人に一生後悔させるつもり!? これ慊人がやったんでしょ!? 自己犠牲もいい加減にして!!」
「っ、」
「慊人は他の人に探させる。紅野は治療に専念する。今できるのはこれがベスト」
「…………」
「壁側に行ける? 寄りかかった方が楽でしょ」
「……もっと、早く」
「喋らなくていいから」
「もっと、早く、君を慊人に会わせてあげるべきだった」
「…………」
「そしたら、慊人は……」
そこで紅野の言葉は途切れた。私の方へ身体が倒れ込む。慌てるけど体勢的に避けられない。変身する……! と思いながらも紅野を支える。でも紅野は変身せず、男性の姿のままだった。
「えっ……?」
困惑しながらも紅野の背中に手を回して傷口を押さえ続ける。熱い血が手に染み渡るような感覚がした。
──慊人が紅野を離さなかった理由。
それが分かった瞬間、慊人の孤独が一気に身に降りかかってきた気がした。信じていたものが崩れていた。小さい頃からそう信じさせられてきた絆 。慊人の唯一。それが欠けてしまっていた。怖かっただろう。哀しかっただろう。……どうすればいいか分からなかっただろう。
私はなにをやっていたのだろう。
「ナマエッ!!」
「……はとり」
「紅野、は……」
やってきたはとりは私と紅野の体勢を見て目を見開いたが、すぐさま切り替えて紅野の肩に腕を回して抱え込んだ。
「そのまま傷口を押さえていろ。ゆっくり動かすぞ。寝床を用意させている」
「うんっ!」
「寝かせたらおまえは手を肘まできちんと洗え。ケガしてる場所はないな? 決して触るんじゃないぞ」
「うん、分かった」
「あと服をちゃんと着ろ」
「…………そうでした」
その言葉で強張った身体が少し楽になった気がした。シャツ脱いだからキャミソール姿なのすっかり忘れていた。緊急事態だから恥ずかしいとかないのが幸い。
「はとり」
「なんだ」
「慊人に会いたい」
「……すぐに会える」
うん、会いたい。会って話がしたい。
****
「──……慊人……大丈夫か?」
「……大丈夫、僕は大丈夫……」
「慊人」
私が呼びかけると慊人はぴくりと肩を揺らした。病院から帰ってきて早々で悪いけど言いたいことがたくさんある。
「慊人そっち行くからね」
「っ、」
息を飲んだ慊人の前に膝をつく。慊人は視線を下に向けて私を見ようとしない。
でも知ったことか。
手を伸ばして背中に回す。子どものときぶりの抱擁だった。思ってたより慊人は大きくない。私でも手が回せるくらいだった。
「ごめんね」
「なんで、おまえが謝るんだよ……っ」
「慊人のことちゃんと見てなかったから。寂しい思いさせたから。哀しい思いさせて、独りにしてたから」
だから、ごめんね。
そう言ってギュッとすると耳元で嗚咽が聞こえた。
「……おまえは、他人だろ……? 約束も、絆も、永遠もない他人で……っだからずっと、おまえが怖かった……っ」
「うん」
「それなのに、笑って呼ぶから……っ、…………本当は、一緒に……っ」
「うん」
「隣に……、」
「いるよ。友達だもん」
そう言うと弱々しい力で私の背中に手が回った。
「慊人。約束はあるよ」
「……?」
「小さい頃、約束した。“また明日遊ぼう”って」
「っ、」
「これからも約束はできるよ?」
「僕が泣いても、ごねても……?」
「それはその時ちゃんと文句いうから大丈夫。だから慊人も泣いてもごねてもいいんだよ。片方だけが我慢するのは友達じゃない。それでケンカしても仲直りすればいい。それだけだよ」
「………うん……っ」
ぎゅうっと力が込められる。私も同じだけ力を返した。
「慊ちゃん、大好きだよ」
慊人の母親に頬を叩かれて言えなくなった呼び名。私はそのまま呼び続けていこうとしたけど、慊人が泣くから呼ばなくなってしまった。それでも慊人から教えてくれた秘密。嬉しくてそう呼んだら慊人も笑ってくれて。
『僕もナマエが大好き』
倖せだった。あの頃に戻れるかな。戻れたらいいな。そう願って慊人を抱きしめ続けた。
「紅野? どうした? 体調わる……い」
ぽた。そんな音がして赤い水が流れた。
「紅野!? なんで血が……っ、ああもういいや! そこの人! はとり呼んできて! あと寝床も!! ……早くっ!!」
「は、はい!!」
雨に打たれていたので縁側に紅野を引っ張って座らせる。シャツを脱いでそれで背中の傷口を強く両手で押さえた。ら、その手を紅野本人に掴まれた。
「……慊人」
「は!? 慊人がなに!!」
「追わないと……どこか……走っていって……追わないと」
「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「いいから、俺のことは……早く……っ慊人を」
「~っ!! 紅野が死んで慊人に一生後悔させるつもり!? これ慊人がやったんでしょ!? 自己犠牲もいい加減にして!!」
「っ、」
「慊人は他の人に探させる。紅野は治療に専念する。今できるのはこれがベスト」
「…………」
「壁側に行ける? 寄りかかった方が楽でしょ」
「……もっと、早く」
「喋らなくていいから」
「もっと、早く、君を慊人に会わせてあげるべきだった」
「…………」
「そしたら、慊人は……」
そこで紅野の言葉は途切れた。私の方へ身体が倒れ込む。慌てるけど体勢的に避けられない。変身する……! と思いながらも紅野を支える。でも紅野は変身せず、男性の姿のままだった。
「えっ……?」
困惑しながらも紅野の背中に手を回して傷口を押さえ続ける。熱い血が手に染み渡るような感覚がした。
──慊人が紅野を離さなかった理由。
それが分かった瞬間、慊人の孤独が一気に身に降りかかってきた気がした。信じていたものが崩れていた。小さい頃からそう信じさせられてきた
私はなにをやっていたのだろう。
「ナマエッ!!」
「……はとり」
「紅野、は……」
やってきたはとりは私と紅野の体勢を見て目を見開いたが、すぐさま切り替えて紅野の肩に腕を回して抱え込んだ。
「そのまま傷口を押さえていろ。ゆっくり動かすぞ。寝床を用意させている」
「うんっ!」
「寝かせたらおまえは手を肘まできちんと洗え。ケガしてる場所はないな? 決して触るんじゃないぞ」
「うん、分かった」
「あと服をちゃんと着ろ」
「…………そうでした」
その言葉で強張った身体が少し楽になった気がした。シャツ脱いだからキャミソール姿なのすっかり忘れていた。緊急事態だから恥ずかしいとかないのが幸い。
「はとり」
「なんだ」
「慊人に会いたい」
「……すぐに会える」
うん、会いたい。会って話がしたい。
****
「──……慊人……大丈夫か?」
「……大丈夫、僕は大丈夫……」
「慊人」
私が呼びかけると慊人はぴくりと肩を揺らした。病院から帰ってきて早々で悪いけど言いたいことがたくさんある。
「慊人そっち行くからね」
「っ、」
息を飲んだ慊人の前に膝をつく。慊人は視線を下に向けて私を見ようとしない。
でも知ったことか。
手を伸ばして背中に回す。子どものときぶりの抱擁だった。思ってたより慊人は大きくない。私でも手が回せるくらいだった。
「ごめんね」
「なんで、おまえが謝るんだよ……っ」
「慊人のことちゃんと見てなかったから。寂しい思いさせたから。哀しい思いさせて、独りにしてたから」
だから、ごめんね。
そう言ってギュッとすると耳元で嗚咽が聞こえた。
「……おまえは、他人だろ……? 約束も、絆も、永遠もない他人で……っだからずっと、おまえが怖かった……っ」
「うん」
「それなのに、笑って呼ぶから……っ、…………本当は、一緒に……っ」
「うん」
「隣に……、」
「いるよ。友達だもん」
そう言うと弱々しい力で私の背中に手が回った。
「慊人。約束はあるよ」
「……?」
「小さい頃、約束した。“また明日遊ぼう”って」
「っ、」
「これからも約束はできるよ?」
「僕が泣いても、ごねても……?」
「それはその時ちゃんと文句いうから大丈夫。だから慊人も泣いてもごねてもいいんだよ。片方だけが我慢するのは友達じゃない。それでケンカしても仲直りすればいい。それだけだよ」
「………うん……っ」
ぎゅうっと力が込められる。私も同じだけ力を返した。
「慊ちゃん、大好きだよ」
慊人の母親に頬を叩かれて言えなくなった呼び名。私はそのまま呼び続けていこうとしたけど、慊人が泣くから呼ばなくなってしまった。それでも慊人から教えてくれた秘密。嬉しくてそう呼んだら慊人も笑ってくれて。
『僕もナマエが大好き』
倖せだった。あの頃に戻れるかな。戻れたらいいな。そう願って慊人を抱きしめ続けた。