日向ごっこ
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「リン、スケッチブックと鉛筆とか持ってきたよ」
「だからなんだ」
「絵、好きだったでしょ? 小さい頃から。暇つぶしに何か描いてみたら?」
「…………」
しぶしぶといった感じでスケッチブックを受け取るリンに笑いながら渡す。まだ外で動くには早いってはとりが言ってたし気分転換になればいいな。
「よいしょ」
「! おまえ出て行かないのか!?」
「ここで課題やろうと思って」
「出ていけよ!」
「私は空気。空気なの~」
「出ていく気ないな……!!」
にぎぎとするリンに笑顔を向けてバッグからノートパソコンを取り出す。リンは私が言っても聞かないとこあるの知ってるからか舌打ちしてスケッチブックを開いた。しばらく何も鉛筆は動かなかったみたいだけどシャ、シャと少しずつ何かを描き始めた。
よしよし。家にいるだけじゃ気が滅入るからね。これ経験談。まあ私ははとりに会いに行くのが安心に繋がってたからちょっと違うかもしれないけど。
鉛筆の滑る音とパソコンのキーを打つ音が鳴りはじめて一時間ほど経って。リンの後ろから透ちゃんが現れた。あら? なかなか久しぶりじゃないか? 私、結構リンの所に来てるけど1ヶ月くらい透ちゃん見てないぞ? すれ違ってたのかな。でもそれだったら籍真さんが「透さんが来てくれたんですよ」って嬉しそうに教えてくれそうだし。……なにかあった?
少しの不安をもとに透ちゃんはリンの描いているものを覗き込む。しばらく見てたけど何を描いているのか分かったらしい。
「──……“それでも歩く”……ですか?」
バン! とスケッチブックを閉じたリンは顔を赤らめて振り返る。
「お……っおまえいつから……何勝手に見……っ離れろ!!」
「す、すみませんっ集中されていらしたので声をおかけするタイミングが……つかめず……っですが依鈴さん凄いですっ絵をお描きになることが……」
「こんなのは“絵”じゃない!! ただのラクガキだ!!」
バサッとスケッチブックを投げるリン。一瞬私の方をみて目を歪めたのが分かった。照れ隠しなの分かってるから大丈夫。ラクガキに一時間も使わないよ。にこりと笑うとリンは視線を逸らした。
「……何もすることなくて、働くのも……難しくてだからただヒマつぶしに」
そう言ったリンに透ちゃんは投げられたらスケッチブックを拾って胸に抱いた。
「気持ちのこもった絵にラクガキも何もないです。大切です……っ」
透ちゃんの言葉に照れくさそうにしたリンは透ちゃんからスケッチブックを立ち上がって取り返して口を開いた。
「今日は……何の用で来たんだ」
「あ……はい。えと……先日、失礼な形で別れたまま御無沙汰して……しまったので……」
「ああ……アレ。あんなのどうだっていいけど……夾 のとこをつっつかれるのが嫌で来なかったとか?」
……これ私が聞いちゃいけない話では?
立ち去ろうと腰を上げたけどリンはそのまま話し出す。
「……なんで夾? よりによって。猫憑きだよ。あいつがどうなるとか役目とか、アタシ達がどう見てるかとかもう知ってるんだろ? ……同情してるの?」
透ちゃんは表情のない顔でリンを見つめる。どこか遠くで何かを考えているような表情だった。透ちゃんは静かに立ち上がった。
「こんな……残酷で欲深い……気持ちは同情……なんでしょうか……? だって私……っ、十二支の皆さんを守りたいだとか解放したいだとかそんなの詭弁です……っ! 本当の気持ち隠して誤魔化して……卑怯です」
「私は、私はただ夾君を……っ夾君をただ何からも草摩からも呪いからも誰からも奪われたくない! 夾君が一番大切だから……っ!」
猫憑きの夾を透ちゃんが好きになった。言葉からそう分かり、心から何かにじむようなものがあふれてきた。透ちゃん、そう声をかけようとした瞬間、楽羅が現れて透ちゃんを殴った。……殴った?
「そういうコトはちゃんと本人に言いなさい!!」
「お……っおまえの理屈を透 に押しつけるなよ!!」
「あんたは黙っ……」
「おまえそんなに偉いのかよ!! 殴っていいほど偉いのかよ!! ふざけるな……ふざけんな!! 殴っていいほど……」
「ちょ……っどうしたの? 何事? 何かあっ」
「ごめん……」
そういって楽羅はリンに抱きついた。言い合いは止まった。止まったのはいい。いいけど。
「いや二人とも口はさんでごめんだけど透ちゃんをみて?」
途中でやってきた邦光さんと一緒に倒れ込んだ透ちゃんを覗き込む。……動かない。
「……透さん、透さん? 透さんうわっしっかり!!」
「あっ私すごい思いっきり……!!」
「やってたよねぇ……」
これ起きるのいつになるんだろうか。……起きるよね? 透ちゃん。
****
やってきた夾と一緒に透ちゃんは帰っていった。起きてよかった。いやほんとに。楽羅の馬鹿力なめちゃいけない。邦光さんが楽羅に二人が帰ることを伝えても楽羅は「謝らないからね!!」とつーんとしてる。素直な楽羅のこの態度も珍しい。……夾絡みだからかな。
「い、依鈴さんには謝ったクセに……」
「透君はいいの! 違うの! こぶしでわかりあったの!!」
「手を出したのはおまえだけだっ」
「殴ったのは楽羅だけだよ」
リンと内容が重なったけど楽羅は無視して膝を抱えている。
「こぶしって男の友情じゃないんだから……」
「……男の人はさ……自分の夢とか願いとかをさ他人に託すことができていいね。私にも……できるかな……」
楽羅は振り返って邦光さんの奥にいる籍真さんを見る。涙を浮かべて。
「だって同情なんかじゃないもの。あの気持ち、ウソじゃないもんっ託せるもんっ」
そう言ってリンの肩にしがみつく楽羅。
「バカみたい。そういうとこホントウザイ」
「うあああんっなぐさめてよぅぅぅ」
「ほら、楽羅。ナマエねえちゃんが慰めてあげる。がんばったね。えらかったえらかった」
「もっと言ってっ!!」
「楽羅はいい子。人の倖せを願えるいい子だよ」
本当に。
リンごと楽羅を抱きしめる。
「楽羅にもやってくるよ。楽羅の倖せが。優しい子だもん」
「……ナマエ~~っ!!」
楽羅は泣き続けた。リンも悪態をつきながらも楽羅の手を払ったりしなかった。
「だからなんだ」
「絵、好きだったでしょ? 小さい頃から。暇つぶしに何か描いてみたら?」
「…………」
しぶしぶといった感じでスケッチブックを受け取るリンに笑いながら渡す。まだ外で動くには早いってはとりが言ってたし気分転換になればいいな。
「よいしょ」
「! おまえ出て行かないのか!?」
「ここで課題やろうと思って」
「出ていけよ!」
「私は空気。空気なの~」
「出ていく気ないな……!!」
にぎぎとするリンに笑顔を向けてバッグからノートパソコンを取り出す。リンは私が言っても聞かないとこあるの知ってるからか舌打ちしてスケッチブックを開いた。しばらく何も鉛筆は動かなかったみたいだけどシャ、シャと少しずつ何かを描き始めた。
よしよし。家にいるだけじゃ気が滅入るからね。これ経験談。まあ私ははとりに会いに行くのが安心に繋がってたからちょっと違うかもしれないけど。
鉛筆の滑る音とパソコンのキーを打つ音が鳴りはじめて一時間ほど経って。リンの後ろから透ちゃんが現れた。あら? なかなか久しぶりじゃないか? 私、結構リンの所に来てるけど1ヶ月くらい透ちゃん見てないぞ? すれ違ってたのかな。でもそれだったら籍真さんが「透さんが来てくれたんですよ」って嬉しそうに教えてくれそうだし。……なにかあった?
少しの不安をもとに透ちゃんはリンの描いているものを覗き込む。しばらく見てたけど何を描いているのか分かったらしい。
「──……“それでも歩く”……ですか?」
バン! とスケッチブックを閉じたリンは顔を赤らめて振り返る。
「お……っおまえいつから……何勝手に見……っ離れろ!!」
「す、すみませんっ集中されていらしたので声をおかけするタイミングが……つかめず……っですが依鈴さん凄いですっ絵をお描きになることが……」
「こんなのは“絵”じゃない!! ただのラクガキだ!!」
バサッとスケッチブックを投げるリン。一瞬私の方をみて目を歪めたのが分かった。照れ隠しなの分かってるから大丈夫。ラクガキに一時間も使わないよ。にこりと笑うとリンは視線を逸らした。
「……何もすることなくて、働くのも……難しくてだからただヒマつぶしに」
そう言ったリンに透ちゃんは投げられたらスケッチブックを拾って胸に抱いた。
「気持ちのこもった絵にラクガキも何もないです。大切です……っ」
透ちゃんの言葉に照れくさそうにしたリンは透ちゃんからスケッチブックを立ち上がって取り返して口を開いた。
「今日は……何の用で来たんだ」
「あ……はい。えと……先日、失礼な形で別れたまま御無沙汰して……しまったので……」
「ああ……アレ。あんなのどうだっていいけど……
……これ私が聞いちゃいけない話では?
立ち去ろうと腰を上げたけどリンはそのまま話し出す。
「……なんで夾? よりによって。猫憑きだよ。あいつがどうなるとか役目とか、アタシ達がどう見てるかとかもう知ってるんだろ? ……同情してるの?」
透ちゃんは表情のない顔でリンを見つめる。どこか遠くで何かを考えているような表情だった。透ちゃんは静かに立ち上がった。
「こんな……残酷で欲深い……気持ちは同情……なんでしょうか……? だって私……っ、十二支の皆さんを守りたいだとか解放したいだとかそんなの詭弁です……っ! 本当の気持ち隠して誤魔化して……卑怯です」
「私は、私はただ夾君を……っ夾君をただ何からも草摩からも呪いからも誰からも奪われたくない! 夾君が一番大切だから……っ!」
猫憑きの夾を透ちゃんが好きになった。言葉からそう分かり、心から何かにじむようなものがあふれてきた。透ちゃん、そう声をかけようとした瞬間、楽羅が現れて透ちゃんを殴った。……殴った?
「そういうコトはちゃんと本人に言いなさい!!」
「お……っおまえの理屈を
「あんたは黙っ……」
「おまえそんなに偉いのかよ!! 殴っていいほど偉いのかよ!! ふざけるな……ふざけんな!! 殴っていいほど……」
「ちょ……っどうしたの? 何事? 何かあっ」
「ごめん……」
そういって楽羅はリンに抱きついた。言い合いは止まった。止まったのはいい。いいけど。
「いや二人とも口はさんでごめんだけど透ちゃんをみて?」
途中でやってきた邦光さんと一緒に倒れ込んだ透ちゃんを覗き込む。……動かない。
「……透さん、透さん? 透さんうわっしっかり!!」
「あっ私すごい思いっきり……!!」
「やってたよねぇ……」
これ起きるのいつになるんだろうか。……起きるよね? 透ちゃん。
****
やってきた夾と一緒に透ちゃんは帰っていった。起きてよかった。いやほんとに。楽羅の馬鹿力なめちゃいけない。邦光さんが楽羅に二人が帰ることを伝えても楽羅は「謝らないからね!!」とつーんとしてる。素直な楽羅のこの態度も珍しい。……夾絡みだからかな。
「い、依鈴さんには謝ったクセに……」
「透君はいいの! 違うの! こぶしでわかりあったの!!」
「手を出したのはおまえだけだっ」
「殴ったのは楽羅だけだよ」
リンと内容が重なったけど楽羅は無視して膝を抱えている。
「こぶしって男の友情じゃないんだから……」
「……男の人はさ……自分の夢とか願いとかをさ他人に託すことができていいね。私にも……できるかな……」
楽羅は振り返って邦光さんの奥にいる籍真さんを見る。涙を浮かべて。
「だって同情なんかじゃないもの。あの気持ち、ウソじゃないもんっ託せるもんっ」
そう言ってリンの肩にしがみつく楽羅。
「バカみたい。そういうとこホントウザイ」
「うあああんっなぐさめてよぅぅぅ」
「ほら、楽羅。ナマエねえちゃんが慰めてあげる。がんばったね。えらかったえらかった」
「もっと言ってっ!!」
「楽羅はいい子。人の倖せを願えるいい子だよ」
本当に。
リンごと楽羅を抱きしめる。
「楽羅にもやってくるよ。楽羅の倖せが。優しい子だもん」
「……ナマエ~~っ!!」
楽羅は泣き続けた。リンも悪態をつきながらも楽羅の手を払ったりしなかった。