日向ごっこ
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「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
ぷち。そんな音がした。
「泣くなー!!!」
「はいぃっ」
「目の前でいつまでもメソメソメソメソメソメソォ!! うっとうしいんだよっっ」
「はいぃっ」
リンがおっきな声出して透ちゃんに詰め寄ってる。珍しい。まあなんか同意のもと感があるから大丈夫だと判断しておせんべいをいただく。すると籍真さんがにこやかに笑いながらリンに話しかけた。
「依鈴が大声をだすなんて珍しいね」
「ししょーさん」
「お友達がお見舞いに来てくれたからハシャいでいるのかな」
「お……お友達……」
透ちゃんは籍真さんの言葉にお花飛ばして喜んでいる。そしてリンはというと。
──みしみしみし
「…………っ」
透ちゃんのおでこ掴んで照れ隠ししていた。
「仲がいいね」
「ですねぇ」
「ね」
「いやでもアレはちょっと! 止めたほうがっ」
お友達に否定はしてないからいいんじゃない? よかったねリン。
「師範の家 で療養ですか?」
「そうだね。病院も本家も嫌だそうだから」
「……それでムリヤリ帰らせてもまたフラフラ抜け出しかねないし、当分置いてもらうコトに」
「はとりが往診くるからまあ大丈夫でしょ」
今日お見舞い行くって言ったら様子みておいてくれって頼まれたけど元気そうだし。
「……閉じ込められてたんだろ? 慊人に」
「髪も。本田さんには言わないでほしいって。余計な事は耳に入れたくないって。慊人にももう何も言わなくていいって。これ以上関わり合うのは怖いって。……俺も関わらせたくない」
「慊人の野郎ぉ……!!」
「ナマエ急に怒る……」
「私、今慊人の屋敷出禁になってるから! 完全に門前払い!! 文句言いたいこと山ほどあるのに!!」
「出禁は前から……ナマエはパワフルだね……」
どうどうと春と由希に宥められ、大福を献上された。甘いものは好きです。素直に食べてると由希が眉を下げて話し出す。
「……そっか……でも春は凄いな。決断が早い。俺が慰める間も無かったな」
「大丈夫……愛してる」
「そういうセリフはリンにだけ言ってればいいんだよっ」
「えっ」
「えっ?」
「……リンと春ってそういう関係なの?」
「えっ知らなかったの?」
「そういえばナマエには言ってなかった……」
「のけ者反対! 私は真っ先に知られたのに! 詳しくどうぞ!」
「あのときは一回別れてたから……」
「あっやっぱいいです。なんか重いのきそう」
「ナマエ勝手すぎるよ」
一回別れるとか自分に置きかえたら心臓止まっちゃう。絶対聞きたくない。
「ところで潑春……依鈴は結局どこに閉じ込められていたんだい?」
「……猫憑きの……」
「……そう……か…………夾の行きつく場所 だね……」
幽閉。その言葉は出なかったけど全員の頭にあっただろう。どうしようもないやるせなさに目を閉じた。
***
「飽きもせず……今日も慊人に嫌みを言ってきたのか?」
「はーなんですかねぇこの人は……いきなり現れ開口一番……」
「ここは俺の縁側 だ。……おまえが会いに行く度、籠もりかたがひどくなっていく気がするんだがな」
「うっそマジで!? ソレちょーヤバくなぁい!!?」
「……………」
紫呉と同い年である事実が虚しくなるはとりだった。息を吐いて切り替える。
「おまえは……いい年してへそ曲がりすぎる。手の内をひとつもみせてやらないから慊人も益々意固地になるんだ」
「あー……でもそれ、わざとやってるコトだし……」
「わざとなのはわかっている。……いい加減年下相手に意地の張り合いはやめたらどうだ。俺から見てもおまえは時々、慊人を心底嫌ってるみたいだ。……もう少し優しくしてやったらどうだ」
はとりの言葉に紫呉は立ち上がった。はとりに背を向けてあごに手をやり考えるような仕草をとる。
「そうは言っても……所詮僕の“優しさ”なんて急拵えの後付け品だし……君のような“本物”には敵わないんだよなぁ……。何故だろう僕はそれを“悲しい”とは思わないけれど。何故だろう例えば両親 の愛というモノも別段欲しいと思わなかったし、正直物の怪憑きという現実も僕自身にとっては大した痛手でもないし……」
「……こんな人間こそ本当に夢にみるべきだったのは…………。でもまっ、ともかく僕は元来優しい人間でもないからってコトで! ね!」
「努力する前に放棄するか」
はとりがそう言うと紫呉は出入り口まで足を進める。ゆったりとした速度で。
「……慊人がもっと君のように寛大で紅野クンのように無心なそんな“優しさ”を僕にまで欲しがっているのだとしても、無茶な話だ。僕は慊人 の“父親”になりたいわけじゃないんだよ」
いつもの飄々とした姿とは違う顔。心からの本音を言っているようにみえた。紫呉はその言葉を最後に立ち去って行った。
「………」
「あれ? 紫呉にいさんの声したけど気のせい?」
「ナマエ」
逆の戸口から入ってきたのはナマエだった。学校帰りらしい。通学用のバッグを持っていた。
「おかえり」
「ただいま! はとり」
笑顔で駆け寄ってくるナマエ。片腕を軽く開いたら喜んでそこに入り込んできて軽く頭を腕に当ててきた。抱きしめてはやれない。それでも倖せそうな顔をする。心が温かくなるのが分かる。頬が自然と緩んだ。
「今日はどうだった」
「んー三年生になったからねぇ。やっぱ就職の話とか出るよね~」
「おまえは親父さんの跡を継ぐのか?」
「そのつもりだけど、他にも いるしなぁ。私じゃなくてもって感じもする。お父さんの仕事の手伝いは楽しいんだけどね」
「そうか。まだ時間はあるからじっくり決めろ」
「うん!」
話しているだけで愛してると伝えてくる真っ直ぐな目。声のトーン。笑顔。紫呉 はほしくないのだろうか。この愛おしい存在が。それとも手に入れる為に今ももがいている最中なのだろうか。はとりには分からない。紫呉のやり方も考えも。
「ナマエ」
「んー?」
「紫呉の慊人への態度をどう思う」
「えー……すごくおちょくってる?」
ナマエですらこれだ。慊人に伝わるはずがない。それでも父親になる気はないと言ったのだからやり方は変える気はないのだろう。そう考えるとたいそう我慢強いとも言える。その時がくるのをずっと待っているのだから。
「ナマエ」
「はーい」
「愛してる」
「っ! びっくりしたぁ急に言うんだもん」
「嫌か?」
「そんなわけない! 私も大好き!」
友人として出来るのは。早く愛してるといえるようになる日が早めに訪れることを祈ることだけだった。
「…………」
「…………」
「…………」
ぷち。そんな音がした。
「泣くなー!!!」
「はいぃっ」
「目の前でいつまでもメソメソメソメソメソメソォ!! うっとうしいんだよっっ」
「はいぃっ」
リンがおっきな声出して透ちゃんに詰め寄ってる。珍しい。まあなんか同意のもと感があるから大丈夫だと判断しておせんべいをいただく。すると籍真さんがにこやかに笑いながらリンに話しかけた。
「依鈴が大声をだすなんて珍しいね」
「ししょーさん」
「お友達がお見舞いに来てくれたからハシャいでいるのかな」
「お……お友達……」
透ちゃんは籍真さんの言葉にお花飛ばして喜んでいる。そしてリンはというと。
──みしみしみし
「…………っ」
透ちゃんのおでこ掴んで照れ隠ししていた。
「仲がいいね」
「ですねぇ」
「ね」
「いやでもアレはちょっと! 止めたほうがっ」
お友達に否定はしてないからいいんじゃない? よかったねリン。
「
「そうだね。病院も本家も嫌だそうだから」
「……それでムリヤリ帰らせてもまたフラフラ抜け出しかねないし、当分置いてもらうコトに」
「はとりが往診くるからまあ大丈夫でしょ」
今日お見舞い行くって言ったら様子みておいてくれって頼まれたけど元気そうだし。
「……閉じ込められてたんだろ? 慊人に」
「髪も。本田さんには言わないでほしいって。余計な事は耳に入れたくないって。慊人にももう何も言わなくていいって。これ以上関わり合うのは怖いって。……俺も関わらせたくない」
「慊人の野郎ぉ……!!」
「ナマエ急に怒る……」
「私、今慊人の屋敷出禁になってるから! 完全に門前払い!! 文句言いたいこと山ほどあるのに!!」
「出禁は前から……ナマエはパワフルだね……」
どうどうと春と由希に宥められ、大福を献上された。甘いものは好きです。素直に食べてると由希が眉を下げて話し出す。
「……そっか……でも春は凄いな。決断が早い。俺が慰める間も無かったな」
「大丈夫……愛してる」
「そういうセリフはリンにだけ言ってればいいんだよっ」
「えっ」
「えっ?」
「……リンと春ってそういう関係なの?」
「えっ知らなかったの?」
「そういえばナマエには言ってなかった……」
「のけ者反対! 私は真っ先に知られたのに! 詳しくどうぞ!」
「あのときは一回別れてたから……」
「あっやっぱいいです。なんか重いのきそう」
「ナマエ勝手すぎるよ」
一回別れるとか自分に置きかえたら心臓止まっちゃう。絶対聞きたくない。
「ところで潑春……依鈴は結局どこに閉じ込められていたんだい?」
「……猫憑きの……」
「……そう……か…………夾の行きつく
幽閉。その言葉は出なかったけど全員の頭にあっただろう。どうしようもないやるせなさに目を閉じた。
***
「飽きもせず……今日も慊人に嫌みを言ってきたのか?」
「はーなんですかねぇこの人は……いきなり現れ開口一番……」
「ここは俺の
「うっそマジで!? ソレちょーヤバくなぁい!!?」
「……………」
紫呉と同い年である事実が虚しくなるはとりだった。息を吐いて切り替える。
「おまえは……いい年してへそ曲がりすぎる。手の内をひとつもみせてやらないから慊人も益々意固地になるんだ」
「あー……でもそれ、わざとやってるコトだし……」
「わざとなのはわかっている。……いい加減年下相手に意地の張り合いはやめたらどうだ。俺から見てもおまえは時々、慊人を心底嫌ってるみたいだ。……もう少し優しくしてやったらどうだ」
はとりの言葉に紫呉は立ち上がった。はとりに背を向けてあごに手をやり考えるような仕草をとる。
「そうは言っても……所詮僕の“優しさ”なんて急拵えの後付け品だし……君のような“本物”には敵わないんだよなぁ……。何故だろう僕はそれを“悲しい”とは思わないけれど。何故だろう例えば
「……こんな人間こそ本当に夢にみるべきだったのは…………。でもまっ、ともかく僕は元来優しい人間でもないからってコトで! ね!」
「努力する前に放棄するか」
はとりがそう言うと紫呉は出入り口まで足を進める。ゆったりとした速度で。
「……慊人がもっと君のように寛大で紅野クンのように無心なそんな“優しさ”を僕にまで欲しがっているのだとしても、無茶な話だ。僕は
いつもの飄々とした姿とは違う顔。心からの本音を言っているようにみえた。紫呉はその言葉を最後に立ち去って行った。
「………」
「あれ? 紫呉にいさんの声したけど気のせい?」
「ナマエ」
逆の戸口から入ってきたのはナマエだった。学校帰りらしい。通学用のバッグを持っていた。
「おかえり」
「ただいま! はとり」
笑顔で駆け寄ってくるナマエ。片腕を軽く開いたら喜んでそこに入り込んできて軽く頭を腕に当ててきた。抱きしめてはやれない。それでも倖せそうな顔をする。心が温かくなるのが分かる。頬が自然と緩んだ。
「今日はどうだった」
「んー三年生になったからねぇ。やっぱ就職の話とか出るよね~」
「おまえは親父さんの跡を継ぐのか?」
「そのつもりだけど、
「そうか。まだ時間はあるからじっくり決めろ」
「うん!」
話しているだけで愛してると伝えてくる真っ直ぐな目。声のトーン。笑顔。
「ナマエ」
「んー?」
「紫呉の慊人への態度をどう思う」
「えー……すごくおちょくってる?」
ナマエですらこれだ。慊人に伝わるはずがない。それでも父親になる気はないと言ったのだからやり方は変える気はないのだろう。そう考えるとたいそう我慢強いとも言える。その時がくるのをずっと待っているのだから。
「ナマエ」
「はーい」
「愛してる」
「っ! びっくりしたぁ急に言うんだもん」
「嫌か?」
「そんなわけない! 私も大好き!」
友人として出来るのは。早く愛してるといえるようになる日が早めに訪れることを祈ることだけだった。