日向ごっこ
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紅野が連れてきたリンの顔色は真っ白で目は虚ろで手足も細くて息をする音がしなかった。
はとりが急いで車を回してる中、言われたのは病院に一緒に行くことじゃなくて、一緒に暮らしている楽羅の家に連絡しろと言われた。命に別状はないからひと息ついてから行け。今のおまえでは不安な者を増やすだけだ、と。
意識がふわふわしてるから洗面所で顔を洗って行こうとしたらはとりの言うとおり酷い顔をしていた。これは、ダメだ。
バシャバシャと顔を洗う。メイクは二の次だ。顔を洗ってはとりと飲みかけていた珈琲をお腹に入れた。まだ暖かいそれは少し身体が動きやすくさせてくれる気がした。
「よし!」
やれることをやろう。歩ける場所から歩いていこう。それが今すべきことだ。
楽羅の家の報告はスムーズに終わった。いや、死ぬほどびっくりしていたんだけど慊人がやったの一言で、皆言葉を出すのを止めていた。楽羅は怒って怒って悲しんで泣いていた。
「もっとちゃんと早く探してあげればよかったのに……!」
後悔する楽羅に何か言えることはなくてギュッと抱きしめた。泣きやむまでぽんぽん、ぽんぽんと背中を叩き続けた。
楽羅が泣き止んだのは夕暮れ時を過ぎたころで「ナマエの服ベチャベチャになっちゃった」と少し笑ったので「今度洋服選びデートしよ?」と誘っておいた。楽羅は涙を端っこに溜めながらも笑って頷いた。
****
「リンー! もう慊人の馬鹿が!! 何やってんだこらー!」
「顔色は戻ったな」
うん、と頷いて頭をぽんぽん叩くはとりに抱きつきたくて仕方なくなる。この憤りを受け止めてほしい。
「あのお局共がぁ! 慊人を甘やかしよって!! くっそ! やっぱり強行突破すればよかった!!」
「おまえ本家に乗り込んだな?」
「乗り込みましたけど入れませんでした!」
普段通りの道を通ったのにバレて追い出された。「当主は今心痛で誰とも会うことはできません。何よりあなたに会うなど到底不可能です」なんて言われて帰ってきたのが馬鹿だった。
ソファーの上で暴れる私にはとりはため息をつく。これはほっとかれるパターンだ。いいです。ほっといてください。この怒りは中々鎮まりません。
「風呂は入ったか?」
「まだです!」
「なら一緒に入るか」
「……………………えっ」
「怒りは収まったな」
「はとりさん」
「なんだ」
「やり手ですね……」
びっくりして怒りどっか行っちゃった。
そう言うとはとりは「それはよかった」と少し笑った。
「一緒に入ってもいいんだぞ」
「お先にお風呂いただきます」
「ああ、ゆっくり浸かってこい」
本当にやり手だ。何年も私の相手してるだけある。あーやもこんな気持ちなのかな。はとりの家のクローゼットの私のエリアからお泊まりセットと寝巻きの着物を出してお風呂に向かう。
お風呂で身体全部洗ってお湯に浸かる。はとりの家の湯船は広々としていてゆったりできる。はあーっと息をついた。
「…………慊人の馬鹿」
何でこんなことしちゃったの。
心痛じゃないよ。痛かったのはリンだよ。何で分かろうとしないの。自分のことだけじゃ、生きていくことなんて出来ないことに、何で気づいてくれないの。
ぽつ、ぽつと水音が鳴る。お風呂場なんて泣きたい放題だ。いっぱい泣いてはとりの前に帰ろう。心配かけないように。あんだけ怒っておきながらなんだって話だけど。
でも分かり合えないのがこんなに悲しいなんて想像できてなかったんだ。
──ガチャリ
「ああ、やっぱり泣いていたな」
「…………うぎゃああああ!?」
「今さら隠してももう何度も見ている」
「TPOがあるんです!?」
「大声を出すな。音が響く」
はとりは当たり前だけど全裸だった。
「なにゆえお風呂に参られた!?」
「一緒に入るかと聞いて否定しなかっただろう」
「察してください! いつもは察するでしょ!」
「知らないな」
はとりはのんびりとお湯をかけて身体を洗い始めた。なんだか見るのも恥ずかしくて視線を上にやる。身体先に洗う派なんだと知ってしまってなんだか落ちつかない。そしてふと気づく。
「またびっくりして泣きやんじゃった」
「泣いてもいいぞ」
「涙腺がびっくりしましたって言ってて無理」
「ならいい。でも泣くなら俺の前にしろ」
「……面倒では?」
「ひとりで泣かれる方が立つ瀬がない。俺がひとりで落ち込んでいたらすっ飛んでくるだろう」
「もちろんです」
「それと同じだ。頼れ」
「……はい」
そう言ってはとりは頭を洗い出した。髪の毛もこもこでも格好いいってどうなってるんですか。
そんなこんなではとりも湯船に入ってきた。向かい合って私は三角座りで座る。せめてもの抵抗だ。
「足伸ばしていいんだぞ」
「大丈夫です」
「俺の上に乗せていい」
「大丈夫です!」
頑なな私をくつくつ笑いながら髪を上げるはとり。一々格好良くてのぼせそうだ。
「上がったら髪を乾かしてやる」
「私が好きなやつ……いつもしてくれないのに」
「今日だけな」
そうは言ってもいつも違う形ではとりには甘やかされている。……好きだなぁ。そうじんわりと心に染みてきた。
***
はとりの家の電話が鳴った。なんだか今日は離れがたかったので廊下までくっついていく。
「依鈴がいなくなった……?」
でもその言葉に温まった身体が冷めていくのが分かった。すぐさま玄関へ行こうとしたのをはとりに止められる。
「なんで!」
「探すのは潑春に電話をしてからだ」
「なんで春!?」
「あと寝巻きから着替えろ」
「それはそう!」
バタバタ走ってクローゼットに行って寝巻きを脱いで服を着替える。はとりもやってきて服を着替えていた。早く早くと急かしてはとりの着替えを待った。
一晩中探してリンを見つけたのは春で。ホッとすると共にはとりの采配すごいね、と言ったら微妙な顔された。なんで。
はとりが急いで車を回してる中、言われたのは病院に一緒に行くことじゃなくて、一緒に暮らしている楽羅の家に連絡しろと言われた。命に別状はないからひと息ついてから行け。今のおまえでは不安な者を増やすだけだ、と。
意識がふわふわしてるから洗面所で顔を洗って行こうとしたらはとりの言うとおり酷い顔をしていた。これは、ダメだ。
バシャバシャと顔を洗う。メイクは二の次だ。顔を洗ってはとりと飲みかけていた珈琲をお腹に入れた。まだ暖かいそれは少し身体が動きやすくさせてくれる気がした。
「よし!」
やれることをやろう。歩ける場所から歩いていこう。それが今すべきことだ。
楽羅の家の報告はスムーズに終わった。いや、死ぬほどびっくりしていたんだけど慊人がやったの一言で、皆言葉を出すのを止めていた。楽羅は怒って怒って悲しんで泣いていた。
「もっとちゃんと早く探してあげればよかったのに……!」
後悔する楽羅に何か言えることはなくてギュッと抱きしめた。泣きやむまでぽんぽん、ぽんぽんと背中を叩き続けた。
楽羅が泣き止んだのは夕暮れ時を過ぎたころで「ナマエの服ベチャベチャになっちゃった」と少し笑ったので「今度洋服選びデートしよ?」と誘っておいた。楽羅は涙を端っこに溜めながらも笑って頷いた。
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「リンー! もう慊人の馬鹿が!! 何やってんだこらー!」
「顔色は戻ったな」
うん、と頷いて頭をぽんぽん叩くはとりに抱きつきたくて仕方なくなる。この憤りを受け止めてほしい。
「あのお局共がぁ! 慊人を甘やかしよって!! くっそ! やっぱり強行突破すればよかった!!」
「おまえ本家に乗り込んだな?」
「乗り込みましたけど入れませんでした!」
普段通りの道を通ったのにバレて追い出された。「当主は今心痛で誰とも会うことはできません。何よりあなたに会うなど到底不可能です」なんて言われて帰ってきたのが馬鹿だった。
ソファーの上で暴れる私にはとりはため息をつく。これはほっとかれるパターンだ。いいです。ほっといてください。この怒りは中々鎮まりません。
「風呂は入ったか?」
「まだです!」
「なら一緒に入るか」
「……………………えっ」
「怒りは収まったな」
「はとりさん」
「なんだ」
「やり手ですね……」
びっくりして怒りどっか行っちゃった。
そう言うとはとりは「それはよかった」と少し笑った。
「一緒に入ってもいいんだぞ」
「お先にお風呂いただきます」
「ああ、ゆっくり浸かってこい」
本当にやり手だ。何年も私の相手してるだけある。あーやもこんな気持ちなのかな。はとりの家のクローゼットの私のエリアからお泊まりセットと寝巻きの着物を出してお風呂に向かう。
お風呂で身体全部洗ってお湯に浸かる。はとりの家の湯船は広々としていてゆったりできる。はあーっと息をついた。
「…………慊人の馬鹿」
何でこんなことしちゃったの。
心痛じゃないよ。痛かったのはリンだよ。何で分かろうとしないの。自分のことだけじゃ、生きていくことなんて出来ないことに、何で気づいてくれないの。
ぽつ、ぽつと水音が鳴る。お風呂場なんて泣きたい放題だ。いっぱい泣いてはとりの前に帰ろう。心配かけないように。あんだけ怒っておきながらなんだって話だけど。
でも分かり合えないのがこんなに悲しいなんて想像できてなかったんだ。
──ガチャリ
「ああ、やっぱり泣いていたな」
「…………うぎゃああああ!?」
「今さら隠してももう何度も見ている」
「TPOがあるんです!?」
「大声を出すな。音が響く」
はとりは当たり前だけど全裸だった。
「なにゆえお風呂に参られた!?」
「一緒に入るかと聞いて否定しなかっただろう」
「察してください! いつもは察するでしょ!」
「知らないな」
はとりはのんびりとお湯をかけて身体を洗い始めた。なんだか見るのも恥ずかしくて視線を上にやる。身体先に洗う派なんだと知ってしまってなんだか落ちつかない。そしてふと気づく。
「またびっくりして泣きやんじゃった」
「泣いてもいいぞ」
「涙腺がびっくりしましたって言ってて無理」
「ならいい。でも泣くなら俺の前にしろ」
「……面倒では?」
「ひとりで泣かれる方が立つ瀬がない。俺がひとりで落ち込んでいたらすっ飛んでくるだろう」
「もちろんです」
「それと同じだ。頼れ」
「……はい」
そう言ってはとりは頭を洗い出した。髪の毛もこもこでも格好いいってどうなってるんですか。
そんなこんなではとりも湯船に入ってきた。向かい合って私は三角座りで座る。せめてもの抵抗だ。
「足伸ばしていいんだぞ」
「大丈夫です」
「俺の上に乗せていい」
「大丈夫です!」
頑なな私をくつくつ笑いながら髪を上げるはとり。一々格好良くてのぼせそうだ。
「上がったら髪を乾かしてやる」
「私が好きなやつ……いつもしてくれないのに」
「今日だけな」
そうは言ってもいつも違う形ではとりには甘やかされている。……好きだなぁ。そうじんわりと心に染みてきた。
***
はとりの家の電話が鳴った。なんだか今日は離れがたかったので廊下までくっついていく。
「依鈴がいなくなった……?」
でもその言葉に温まった身体が冷めていくのが分かった。すぐさま玄関へ行こうとしたのをはとりに止められる。
「なんで!」
「探すのは潑春に電話をしてからだ」
「なんで春!?」
「あと寝巻きから着替えろ」
「それはそう!」
バタバタ走ってクローゼットに行って寝巻きを脱いで服を着替える。はとりもやってきて服を着替えていた。早く早くと急かしてはとりの着替えを待った。
一晩中探してリンを見つけたのは春で。ホッとすると共にはとりの采配すごいね、と言ったら微妙な顔された。なんで。