日向ごっこ
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「正月以来ずっとだ。臥せている。例の如く気持ちから来る病気 だが……今回は少し長いな……」
「由希君に反抗されたのがよっぽどショックだったんでしょ。由希君 に責任をもって看病させたら?」
「……馬鹿を言うな。おまえこそ見舞いにいかないのか? 今日はそのために草摩 に来たんだろう?」
煙草を灰皿におしつけながら言う。横になって肘をついて本を読んでいる男。紫呉は飄々とした口調と顔で口を開く。
「いったよ。いったけど怒られて門前払い。僕の態度がおきに召さなかったらしく」
そういって何かを思い出すかのようにして紫呉の目線は上を向く。
「よく言う……慊人 こそ紅野を選んだくせに」
「……選んだ 訳じゃなく、神様にでもお気に入りぐらい出来るんだろう。十二支達 の中で」
「だけどはとり。十二支 達は覚えたことがないかい? 紅野に、違和感を。紅野 は……そう紅野 はもしかしたら」
「…………」
無言を返す。もしかしたら。ナマエにも話したことだ。荒唐無稽な話。そう、そのはずだ。そうでなくては──。
「認めないかい?」
紫呉は言葉を突き詰める。はとりの思考を刺すかのように。
「怖いから? 哀しいから? 疎む気持ちがありながら愛着心も拭えないから? “絆”に? 狡いね? ナマエを選ぼうとしているのに?」
「……おまえに狡いとは言われたくない」
「はは、そうだねそう僕は……アレ? コレ前にも誰かに言ったな……誰だったっけ? まぁいいか? そうデス。僕は力も無く器も小さくてくだらない、最低な男デス」
「おまえの最も最低な所はそれを自覚していながら微塵も“悪い”と思ってはいない事だ」
そう言いつつも紫呉の言葉は頭に残った。
──もし。もしそれが来たら。俺は、ナマエはどうなるのだろうか。
「はとりー紫呉にいさんーお茶淹れたよ。襖開けてー」
「…………」
「ありがとうはとり」
襖を開けたはとりに笑顔を向けて隣を通ってテーブル前に膝をつき、お茶を置いていくナマエ。
「何の話してたの?」
「うん? わ・い・だ・ん」
「!??」
「信じるな」
驚愕してこちらを見るナマエの頭をぽん、と叩いて宥める。
「えーでもはーさんだってまだまだ枯れちゃいないでしょ? ナマエ」
「なななななんで私に言うのっ」
「え? だって君達、」
「それ以上言ったら追い出す」
「ごめんなさい」
混乱しているナマエの頭を撫でて落ちつかせてやると顔をほんのり赤くしてから部屋から出て行った。
「若妻が可愛いときですか?」
「おまえは本当に懲りないな」
ため息をついてナマエの淹れたお茶を飲む。慣れ親しんだ味。心が落ちつく気がした。
「慊人に言うときは決まったの?」
「……今はまだ慊人が不安定なときだからな。火に油を注ぐようなものだ」
「安定してるときなんてナマエとじゃれてるときくらいでしょ。ナマエが正月の挨拶に行ったときは体調も良くなったらしいしね。まぁおつきのお局達からさっさと追い出されたみたいだけど。だからサラッと言っちゃえばいいんだよ」
「そのナマエを取り上げる話をするんだ」
「はーさんを取り上げる話でもあるからね」
どうなるんだろうね、慊人。
そう言って紫呉は笑った。
****
はとりが家にいる。おじいちゃんおばあちゃんお母さんお父さんの兄弟その配偶者達その子ども 達。そんな親戚一堂勢揃いのなか、はとりがいる。間違え探しだったら秒で見つかるくらい浮いている。いや、はとりも親戚なんだけどさ。なんで???
目を間抜けに開けていた自覚がある。いとこ達はそんな私をみて「はとり兄さん本当にナマエでいいのかよ」と言った。
「顔は満点だし頭もいいけどアホだぞ」
「料理の腕も並だし」
「がさつだし」
「大ざっぱで繊細さの欠片もない」
「「「嫁にするにはビミョーだぜ?」」」
いとこ達の暴言を拾う余裕もなく、ギッギッギッと両親の方をみる。お父さんは少し気まずげな顔をしたけどお母さんは満面の笑みだった。その意味はというと。
「なんで知ってるのーっ!!!」
「はとりくんが夏に挨拶に来てくれたのよー」
「めっちゃ前!! ていうか付き合いたて!!」
「隠せている気でいるナマエ可愛かったわぁ」
「お母さん楽しんでただけでしょ!」
「うふふ」
うふふじゃないんですけど!
地団駄踏む勢いの私を落ち着けと言わんばかりに頭を撫でてくるはとり。普段はこれで絆されるけど今日は違うからね!
「はとりも何で言っちゃったの!」
「それが礼儀だろう」
「ド正論ですけど! でも、」
慊人が。そう続けようとしたら目元を優しく触れられた。顔を上げるとふわりと笑うはとりがいた。
「大丈夫だ」
「っ、」
「そうよ~皆そんなにお喋りと思ってるのナマエは」
「身内傷つけれるの分かってて言うわけねーだろばーか」
「本当に勉強だけできてもの典型だなおまえはばーか」
「はとり兄さんのことだけ考えてたらいいんだよばーか」
「いとこ共がうるさいんですけど!!」
励ましてくれてるの分かるけど暴言をつき足すんじゃない。頭がこんがらがる。頭があー! ってなっていると「ナマエ」と静かな声で呼ばれて背筋がピンとなる。
「おじいちゃん……」
「座りなさい。はとりくんも一緒に」
「…………………怒られますか?」
「座りなさいと言ったらいつもその質問するのもいい加減止めなさい。今日はこれからの話をしに来た」
これからの話?
首を傾げながらおじいちゃんの前に座る。はとりも私の隣に座った。
「まず、二人の仲を祝福する。おめでとう」
「あ、ありがとうございます……?」
「ありがとうございます」
はとりが頭を下げたので慌てて私も下げた。なんか変な感じだ。
「そして大前提として話す。ナマエ、大前提だからな? 先走って行動するんじゃないぞ? いいな? ちゃんと話を聞きなさい」
「すごい念入りに話すねおじいちゃん」
「本題に入るが」
「あ、はい」
「当主に二人の仲を認められなかった場合の外での居場所は複数用意した。見つかることはないだろう」
「…………え?」
外での居場所?
つまり、慊人に反対されたら私とはとりは外に出るってことだ。呪われて、慊人から離れられないはとりが、外に行く。しかもおじいちゃんの口振りからして今の紫呉にいさんのように時折帰ってくるとかじゃなくて。
「はとりが慊人から離れたらどうなるか分からないでしょ!?」
「だからこれは最終手段だ。ちゃんと聞きなさいナマエ。そもそもはとりくんもその覚悟で提案してきた」
「はとりが提案してきた!?」
ぐるりとはとりに顔を向けると涼しい顔で頷かれた。
「な、なんではとり」
「おまえが傷つけられそうになったときは、だ」
「っ、」
「同じ事を繰り返すわけにはいかない」
脳裏に浮かぶのは壊れてしまった佳菜さんの姿。それをみるはとり。倖せが、崩れてしまった瞬間。
「はとりくんに危害を加えようとした場合でも同じように外に行ってもらうことになっている」
「はとりのときも……」
「当たり前だ。片方が傷ついて平気でいられるなら共に歩く意味がないだろう」
おじいちゃんの言葉に反射的に頷く。それはその通りだ。はとりが傷つくところなんかみたくない。そんな目に会わしたくない。
「まあそもそも、そんな状態にしないよう万全を期すつもりだがな」
「な、なにをするつもりでしょうか、おじいちゃん」
おじいちゃんの目が急に怖くなったから敬語が飛び出た。おじいちゃんが怒ると怖い。子どものときからの常識である。
「話し合うときは我が家から人を出す。お前たち二人で行こうなんて思うな。それこそ絆 の思うつぼだ。そもそもうちがどれだけ草摩の株を有していると思う。他の家にも根回しはした。本家 に好き勝手にされて鶏冠に来ている家は大勢いる。第一にあの当主はまだ幼すぎる。本家から離して一から学びなおさせる方が草摩の為だ」
「……慊人を下ろすの? 当主から」
「お前たちへの対応次第だ。そこで変われたのならよし、変わらなかったらそれまでだ」
「……私たち責任重大では?」
「元々そういう話が出ていた。タイミングよくお前たちの話が出た」
「利用しますって言っちゃってますけど」
「こちらも協力するからとんとんだ」
「孫の恋愛なんだと思ってるのー! おじいちゃんのばかー!」
背後でいとこ達が「やっぱじいちゃんこえー」と言っている。私もそっち側がよかったです!
……でも一番心配なのは。
「はとりはこれでいいの……?」
慊人が変わらなかったら離れ離れ。はとりの中の十二支が泣くことになる。耐えられるのだろうか。神様から離れて暮らした十二支の話なんて聞いたことがない。
はとりの両手を包む。大きくて包みきれなかったけどこれでいい。少しでもはとりに寄り添いたい。はとりの顔を見つめる。はとりも真剣な表情を崩さなかった。
「俺 が決めたことだ」
「!」
「俺の中の十二支ではなく俺がナマエと共に生きていくと決めた。だからこれでいい。もうおまえなしの未来は考えられない……だから側にいてくれ」
優しい懇願に目頭が熱くなる。ぽたぽたと雫が落ちていく。はとりはふ、と顔を緩めて優しく私の手をほどいて頬を包んでくれる。
「ナマエ、返事をくれ」
「……うん……っ一緒がいい。はとりと一緒がいい」
倖せだと思った。好きな人が一緒に生きていくことを誓ってくれた。一緒に生きていってもいいって言ってくれた。家族もそれを認めてくれている。祝福してくれている。私達を守ろうとしてくれている。果報者だ。誰が何といっても。
──それなのに私の頭の隅っこには独りでポツンと立つ慊人の姿があった。
「由希君に反抗されたのがよっぽどショックだったんでしょ。
「……馬鹿を言うな。おまえこそ見舞いにいかないのか? 今日はそのために
煙草を灰皿におしつけながら言う。横になって肘をついて本を読んでいる男。紫呉は飄々とした口調と顔で口を開く。
「いったよ。いったけど怒られて門前払い。僕の態度がおきに召さなかったらしく」
そういって何かを思い出すかのようにして紫呉の目線は上を向く。
「よく言う……
「……
「だけどはとり。
「…………」
無言を返す。もしかしたら。ナマエにも話したことだ。荒唐無稽な話。そう、そのはずだ。そうでなくては──。
「認めないかい?」
紫呉は言葉を突き詰める。はとりの思考を刺すかのように。
「怖いから? 哀しいから? 疎む気持ちがありながら愛着心も拭えないから? “絆”に? 狡いね? ナマエを選ぼうとしているのに?」
「……おまえに狡いとは言われたくない」
「はは、そうだねそう僕は……アレ? コレ前にも誰かに言ったな……誰だったっけ? まぁいいか? そうデス。僕は力も無く器も小さくてくだらない、最低な男デス」
「おまえの最も最低な所はそれを自覚していながら微塵も“悪い”と思ってはいない事だ」
そう言いつつも紫呉の言葉は頭に残った。
──もし。もしそれが来たら。俺は、ナマエはどうなるのだろうか。
「はとりー紫呉にいさんーお茶淹れたよ。襖開けてー」
「…………」
「ありがとうはとり」
襖を開けたはとりに笑顔を向けて隣を通ってテーブル前に膝をつき、お茶を置いていくナマエ。
「何の話してたの?」
「うん? わ・い・だ・ん」
「!??」
「信じるな」
驚愕してこちらを見るナマエの頭をぽん、と叩いて宥める。
「えーでもはーさんだってまだまだ枯れちゃいないでしょ? ナマエ」
「なななななんで私に言うのっ」
「え? だって君達、」
「それ以上言ったら追い出す」
「ごめんなさい」
混乱しているナマエの頭を撫でて落ちつかせてやると顔をほんのり赤くしてから部屋から出て行った。
「若妻が可愛いときですか?」
「おまえは本当に懲りないな」
ため息をついてナマエの淹れたお茶を飲む。慣れ親しんだ味。心が落ちつく気がした。
「慊人に言うときは決まったの?」
「……今はまだ慊人が不安定なときだからな。火に油を注ぐようなものだ」
「安定してるときなんてナマエとじゃれてるときくらいでしょ。ナマエが正月の挨拶に行ったときは体調も良くなったらしいしね。まぁおつきのお局達からさっさと追い出されたみたいだけど。だからサラッと言っちゃえばいいんだよ」
「そのナマエを取り上げる話をするんだ」
「はーさんを取り上げる話でもあるからね」
どうなるんだろうね、慊人。
そう言って紫呉は笑った。
****
はとりが家にいる。おじいちゃんおばあちゃんお母さんお父さんの兄弟その配偶者達その
目を間抜けに開けていた自覚がある。いとこ達はそんな私をみて「はとり兄さん本当にナマエでいいのかよ」と言った。
「顔は満点だし頭もいいけどアホだぞ」
「料理の腕も並だし」
「がさつだし」
「大ざっぱで繊細さの欠片もない」
「「「嫁にするにはビミョーだぜ?」」」
いとこ達の暴言を拾う余裕もなく、ギッギッギッと両親の方をみる。お父さんは少し気まずげな顔をしたけどお母さんは満面の笑みだった。その意味はというと。
「なんで知ってるのーっ!!!」
「はとりくんが夏に挨拶に来てくれたのよー」
「めっちゃ前!! ていうか付き合いたて!!」
「隠せている気でいるナマエ可愛かったわぁ」
「お母さん楽しんでただけでしょ!」
「うふふ」
うふふじゃないんですけど!
地団駄踏む勢いの私を落ち着けと言わんばかりに頭を撫でてくるはとり。普段はこれで絆されるけど今日は違うからね!
「はとりも何で言っちゃったの!」
「それが礼儀だろう」
「ド正論ですけど! でも、」
慊人が。そう続けようとしたら目元を優しく触れられた。顔を上げるとふわりと笑うはとりがいた。
「大丈夫だ」
「っ、」
「そうよ~皆そんなにお喋りと思ってるのナマエは」
「身内傷つけれるの分かってて言うわけねーだろばーか」
「本当に勉強だけできてもの典型だなおまえはばーか」
「はとり兄さんのことだけ考えてたらいいんだよばーか」
「いとこ共がうるさいんですけど!!」
励ましてくれてるの分かるけど暴言をつき足すんじゃない。頭がこんがらがる。頭があー! ってなっていると「ナマエ」と静かな声で呼ばれて背筋がピンとなる。
「おじいちゃん……」
「座りなさい。はとりくんも一緒に」
「…………………怒られますか?」
「座りなさいと言ったらいつもその質問するのもいい加減止めなさい。今日はこれからの話をしに来た」
これからの話?
首を傾げながらおじいちゃんの前に座る。はとりも私の隣に座った。
「まず、二人の仲を祝福する。おめでとう」
「あ、ありがとうございます……?」
「ありがとうございます」
はとりが頭を下げたので慌てて私も下げた。なんか変な感じだ。
「そして大前提として話す。ナマエ、大前提だからな? 先走って行動するんじゃないぞ? いいな? ちゃんと話を聞きなさい」
「すごい念入りに話すねおじいちゃん」
「本題に入るが」
「あ、はい」
「当主に二人の仲を認められなかった場合の外での居場所は複数用意した。見つかることはないだろう」
「…………え?」
外での居場所?
つまり、慊人に反対されたら私とはとりは外に出るってことだ。呪われて、慊人から離れられないはとりが、外に行く。しかもおじいちゃんの口振りからして今の紫呉にいさんのように時折帰ってくるとかじゃなくて。
「はとりが慊人から離れたらどうなるか分からないでしょ!?」
「だからこれは最終手段だ。ちゃんと聞きなさいナマエ。そもそもはとりくんもその覚悟で提案してきた」
「はとりが提案してきた!?」
ぐるりとはとりに顔を向けると涼しい顔で頷かれた。
「な、なんではとり」
「おまえが傷つけられそうになったときは、だ」
「っ、」
「同じ事を繰り返すわけにはいかない」
脳裏に浮かぶのは壊れてしまった佳菜さんの姿。それをみるはとり。倖せが、崩れてしまった瞬間。
「はとりくんに危害を加えようとした場合でも同じように外に行ってもらうことになっている」
「はとりのときも……」
「当たり前だ。片方が傷ついて平気でいられるなら共に歩く意味がないだろう」
おじいちゃんの言葉に反射的に頷く。それはその通りだ。はとりが傷つくところなんかみたくない。そんな目に会わしたくない。
「まあそもそも、そんな状態にしないよう万全を期すつもりだがな」
「な、なにをするつもりでしょうか、おじいちゃん」
おじいちゃんの目が急に怖くなったから敬語が飛び出た。おじいちゃんが怒ると怖い。子どものときからの常識である。
「話し合うときは我が家から人を出す。お前たち二人で行こうなんて思うな。それこそ
「……慊人を下ろすの? 当主から」
「お前たちへの対応次第だ。そこで変われたのならよし、変わらなかったらそれまでだ」
「……私たち責任重大では?」
「元々そういう話が出ていた。タイミングよくお前たちの話が出た」
「利用しますって言っちゃってますけど」
「こちらも協力するからとんとんだ」
「孫の恋愛なんだと思ってるのー! おじいちゃんのばかー!」
背後でいとこ達が「やっぱじいちゃんこえー」と言っている。私もそっち側がよかったです!
……でも一番心配なのは。
「はとりはこれでいいの……?」
慊人が変わらなかったら離れ離れ。はとりの中の十二支が泣くことになる。耐えられるのだろうか。神様から離れて暮らした十二支の話なんて聞いたことがない。
はとりの両手を包む。大きくて包みきれなかったけどこれでいい。少しでもはとりに寄り添いたい。はとりの顔を見つめる。はとりも真剣な表情を崩さなかった。
「
「!」
「俺の中の十二支ではなく俺がナマエと共に生きていくと決めた。だからこれでいい。もうおまえなしの未来は考えられない……だから側にいてくれ」
優しい懇願に目頭が熱くなる。ぽたぽたと雫が落ちていく。はとりはふ、と顔を緩めて優しく私の手をほどいて頬を包んでくれる。
「ナマエ、返事をくれ」
「……うん……っ一緒がいい。はとりと一緒がいい」
倖せだと思った。好きな人が一緒に生きていくことを誓ってくれた。一緒に生きていってもいいって言ってくれた。家族もそれを認めてくれている。祝福してくれている。私達を守ろうとしてくれている。果報者だ。誰が何といっても。
──それなのに私の頭の隅っこには独りでポツンと立つ慊人の姿があった。