日向ごっこ
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「本田君?」
「大丈夫? 透ちゃん」
おでこを押さえている透ちゃんにはとりと共に話しかける。何度か声をかけたけど聞こえてなかったみたいだ。すごくびっくりした様子で私とはとりの名前を呼んでいる。
「……どうした頭が痛むのか?」
「あっいえ違うです。今のはえとその、と、と、と言いますかはとりさんは何故こちらにとても突然」
心なしか顔が赤い。風邪じゃないよね? と額で熱を計る。うん、分からん。平熱っぽい気もする。
「昨日慊人と来ていたんだが……色々あって挨拶が遅れた」
「あ……っそれでわざわざ……っありがとうございますっはとりさんはお元気で……」
「すまない。折角皆で遊びに来たのだろうに。一人にしてしまっている」
「そっそんなあのっお謝りにならないで下さい……っ夾君が一緒に居て下さいますし、それは一人ではないという訳でこうして家事もできてしまって実に楽しいですし……っ」
「家事出来て楽しいってお嫁さん適性ありすぎない? 透ちゃん」
「そっそうですか……?」
「そうですよ? ……見習った方がいいかな」
小さい声で呟くと「好きにしろ」とはとりから返ってきた。……それは、どういう意味ですか。透ちゃんの前で聞くわけにも顔に出すわけにもいかず、がんばって無表情を作った。
そんなことを考えていると透ちゃんはうっすら涙を浮かべた。
「えっ、どうしたの? 透ちゃん。やっぱり体調悪い?」
「いえっ……いいえっ……嬉しいです……っありがとうございます。私……私は本当に果報者です……っ。本当に嬉しいです……っですから、大丈夫なのですよ……!」
涙を浮かべながらも笑顔の透ちゃん。……いい子だなぁ本当に。口元が勝手に緩んでしまう。はとりを見ると優しい顔をしていて嬉しくなってしまった。はとりはトンと透ちゃんの頭を撫でてる。全く嫉妬とか出てこない。前はちょっぴり妬いたのに。
「……今日はこれで。夾、一人にさせるなよ」
「透ちゃんまたね」
そう言って二人で別荘をあとにした。
「透ちゃんいい子だね」
「そうだな」
「慊人の毒牙にかけないようにしないと」
「毒牙……」
「ご機嫌とりするかー」
「おまえの機嫌とりは逆効果なときがあるから気をつけろよ」
「その瀬戸際が分からないんだよねぇ」
「だったらやめておけ」
「うーん、じゃああの子達 より私と遊んでる方が楽しいよ作戦はどうですか?」
「…………」
駄目そうだ。十二支は特別。慊人のなかの常識。ただの草摩の中にいるだけの人間には理解できない叶わない絆。十二支にとっても、慊人は特別。形は違うかもしれないけど。それでもそこに入り込むことは慊人は許さない。慊人にとっての関わりの輪は十二支だけ。それ以外は信用していない。
友達と思ってるのは私だけ。子供の頃、楽しく過ごしたことも覚えてないのかもしれない。そう思うと胸のどこかがぴしりと軋んだ気がした。
「ナマエ」
手の甲同士をすりあわせてくるはとり。手はここでは繋げないから。それでも、元気が出た。ふふ、と笑みを零した私を見て、はとりも目元を和らげた。
「はとり大好き」
「ああ」
****
「出かけるのか慊人と紅野は」
「お散歩だってさ」
「本田君の処へ?」
「はてさてどうだかねぇ。どちらにせよ優越感バリバリだろうね。慊人さんは透君にたいして。こうして僕らを取り上げてる訳だからさ」
「慊人みみっちぃなぁ……そして夾がナイトかぁ……大丈夫かな」
そんな会話をした10分後。バシーン! と音を立てて襖が開いた。
「夾を連れてこい。ここに必ず」
再びバシーン! と音を立てて襖が閉まった。明らかに機嫌が悪かった。思い通りにならなかったらしい。夾を呼ぶってことは透ちゃんより夾のほうが目についたってことかな。
「……もしや、嵐の予感ってやつカシラ?」
「……おまえは本当に楽しそうだな」
「紫呉にいさん、はとりとあーやっていう友達がいてよかったね」
「どういう意味かなナマエちゃん?」
そういう意味です。
にっこり笑顔を見せられてはとりの横に行く。はとりいるから怖くないもんね。ここから動かないけど。
「夾はどうするかな……」
子供の頃。夾が数珠を外した姿を慊人と見た。酷い腐臭に私はすぐに気絶した。数珠が外れて怖がっている夾に対して何もせず、それどころか傷つけた。謝ったことはない。謝るなんてただの私の自己満足だ。私だけがすっきりする最低の行為。夾も謝られるなんてこと望んでなんかいない。夾がほしいものはそんなものじゃない。夾がほしいものをくれる人はたった一人しかいない。
でもきっと夾はそれを手に入れることは望まない。
「紫呉にいさん、猫憑きで外で暮らした人って本当にいないの?」
「いたら籍真殿が既にどうにかしてるだろうねぇ」
「…………」
「安易な同情は夾も望んでいないと思うよ」
「紫呉」
「いいよ、はとり。紫呉にいさんの言うとおりだよ」
夾に対して何かしてあげれたことなんてないくせに、簡単に同情している。最低だ。
それでもどうかと誰かに願う。夾を助けてあげてほしいと。
「これ僕が泣かしたんじゃないからねはーさん」
「勝手に水が出てるだけです。泣いてない」
「ナマエ、こっちを向け」
「これではとりに甘えるのは違うと思う」
「泣いてる恋人を放っておく男にしてくれるな」
優しく手を引かれて座っているはとりの足の間に膝がつく。上からはとりを見る。後頭部に手が回り、額同士があたって目が合う。優しい目。全部許してくれそうな温かい目。涙が自然と流れて落ちていった。
「みんなが笑えたらいいのに」
「ああ」
「それだけでいいのに」
「そうだな」
それがどうしても難しくて苦しい。
どうしたらいいか分からずしばらくはとりの腕の中にいた。
「大丈夫? 透ちゃん」
おでこを押さえている透ちゃんにはとりと共に話しかける。何度か声をかけたけど聞こえてなかったみたいだ。すごくびっくりした様子で私とはとりの名前を呼んでいる。
「……どうした頭が痛むのか?」
「あっいえ違うです。今のはえとその、と、と、と言いますかはとりさんは何故こちらにとても突然」
心なしか顔が赤い。風邪じゃないよね? と額で熱を計る。うん、分からん。平熱っぽい気もする。
「昨日慊人と来ていたんだが……色々あって挨拶が遅れた」
「あ……っそれでわざわざ……っありがとうございますっはとりさんはお元気で……」
「すまない。折角皆で遊びに来たのだろうに。一人にしてしまっている」
「そっそんなあのっお謝りにならないで下さい……っ夾君が一緒に居て下さいますし、それは一人ではないという訳でこうして家事もできてしまって実に楽しいですし……っ」
「家事出来て楽しいってお嫁さん適性ありすぎない? 透ちゃん」
「そっそうですか……?」
「そうですよ? ……見習った方がいいかな」
小さい声で呟くと「好きにしろ」とはとりから返ってきた。……それは、どういう意味ですか。透ちゃんの前で聞くわけにも顔に出すわけにもいかず、がんばって無表情を作った。
そんなことを考えていると透ちゃんはうっすら涙を浮かべた。
「えっ、どうしたの? 透ちゃん。やっぱり体調悪い?」
「いえっ……いいえっ……嬉しいです……っありがとうございます。私……私は本当に果報者です……っ。本当に嬉しいです……っですから、大丈夫なのですよ……!」
涙を浮かべながらも笑顔の透ちゃん。……いい子だなぁ本当に。口元が勝手に緩んでしまう。はとりを見ると優しい顔をしていて嬉しくなってしまった。はとりはトンと透ちゃんの頭を撫でてる。全く嫉妬とか出てこない。前はちょっぴり妬いたのに。
「……今日はこれで。夾、一人にさせるなよ」
「透ちゃんまたね」
そう言って二人で別荘をあとにした。
「透ちゃんいい子だね」
「そうだな」
「慊人の毒牙にかけないようにしないと」
「毒牙……」
「ご機嫌とりするかー」
「おまえの機嫌とりは逆効果なときがあるから気をつけろよ」
「その瀬戸際が分からないんだよねぇ」
「だったらやめておけ」
「うーん、じゃあ
「…………」
駄目そうだ。十二支は特別。慊人のなかの常識。ただの草摩の中にいるだけの人間には理解できない叶わない絆。十二支にとっても、慊人は特別。形は違うかもしれないけど。それでもそこに入り込むことは慊人は許さない。慊人にとっての関わりの輪は十二支だけ。それ以外は信用していない。
友達と思ってるのは私だけ。子供の頃、楽しく過ごしたことも覚えてないのかもしれない。そう思うと胸のどこかがぴしりと軋んだ気がした。
「ナマエ」
手の甲同士をすりあわせてくるはとり。手はここでは繋げないから。それでも、元気が出た。ふふ、と笑みを零した私を見て、はとりも目元を和らげた。
「はとり大好き」
「ああ」
****
「出かけるのか慊人と紅野は」
「お散歩だってさ」
「本田君の処へ?」
「はてさてどうだかねぇ。どちらにせよ優越感バリバリだろうね。慊人さんは透君にたいして。こうして僕らを取り上げてる訳だからさ」
「慊人みみっちぃなぁ……そして夾がナイトかぁ……大丈夫かな」
そんな会話をした10分後。バシーン! と音を立てて襖が開いた。
「夾を連れてこい。ここに必ず」
再びバシーン! と音を立てて襖が閉まった。明らかに機嫌が悪かった。思い通りにならなかったらしい。夾を呼ぶってことは透ちゃんより夾のほうが目についたってことかな。
「……もしや、嵐の予感ってやつカシラ?」
「……おまえは本当に楽しそうだな」
「紫呉にいさん、はとりとあーやっていう友達がいてよかったね」
「どういう意味かなナマエちゃん?」
そういう意味です。
にっこり笑顔を見せられてはとりの横に行く。はとりいるから怖くないもんね。ここから動かないけど。
「夾はどうするかな……」
子供の頃。夾が数珠を外した姿を慊人と見た。酷い腐臭に私はすぐに気絶した。数珠が外れて怖がっている夾に対して何もせず、それどころか傷つけた。謝ったことはない。謝るなんてただの私の自己満足だ。私だけがすっきりする最低の行為。夾も謝られるなんてこと望んでなんかいない。夾がほしいものはそんなものじゃない。夾がほしいものをくれる人はたった一人しかいない。
でもきっと夾はそれを手に入れることは望まない。
「紫呉にいさん、猫憑きで外で暮らした人って本当にいないの?」
「いたら籍真殿が既にどうにかしてるだろうねぇ」
「…………」
「安易な同情は夾も望んでいないと思うよ」
「紫呉」
「いいよ、はとり。紫呉にいさんの言うとおりだよ」
夾に対して何かしてあげれたことなんてないくせに、簡単に同情している。最低だ。
それでもどうかと誰かに願う。夾を助けてあげてほしいと。
「これ僕が泣かしたんじゃないからねはーさん」
「勝手に水が出てるだけです。泣いてない」
「ナマエ、こっちを向け」
「これではとりに甘えるのは違うと思う」
「泣いてる恋人を放っておく男にしてくれるな」
優しく手を引かれて座っているはとりの足の間に膝がつく。上からはとりを見る。後頭部に手が回り、額同士があたって目が合う。優しい目。全部許してくれそうな温かい目。涙が自然と流れて落ちていった。
「みんなが笑えたらいいのに」
「ああ」
「それだけでいいのに」
「そうだな」
それがどうしても難しくて苦しい。
どうしたらいいか分からずしばらくはとりの腕の中にいた。