日向ごっこ
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紅葉に誘われて草摩の別荘に避暑に行くことになった。
「いくよー!」
「いやちょっとまって」
「いくのー!」
「明日でしょ? 急すぎるって」
「絶対いくの!!」
押し切られたとも言う。紅葉に弱いのを自覚した。というか話すこともあったのに紅葉は「じゃあトール達も誘ってくるね!」と紫呉にいさんの家に走って行った。天気崩れるって言ってたけど大丈夫かな。帰り迎えに行くか。
「というか水着高校生から買ってない」
水着がないなら避暑どころじゃない。引きこもる前だから高二のときの水着。うーん、買っとこう。体型変わってないけどデザインが今の好みじゃない。
用意してお母さんに車借りるといって外に出ると問診に行っていたのか白衣を着たはとりとばったり会った。思わず車のキーを落とす。顔が熱くなっているのが分かった。そんな私にはとりはため息をついて車のキーを拾ってくれた。
「そんな様子じゃ秘密どころじゃなさそうだな」
「全力で善処します……」
「おまえの親には挨拶したいんだがな」
「……慊人にバレるかもしれないから駄目」
親にも言ってくれるという言葉に高揚して、一気に熱が冷めた。
──慊人。はとりの左目。佳菜さん。慊人が奪ったもの。
慊人ははとりの大切なものを奪った。慊人はなにするか分からない。私相手でも。私だからこそあの時以上に怒るかもしれない。
ぎゅっと口を結ぶ。これは逃げだ。いつかバレてしまう。そしたらもっと怒りを買うかもしれない。私だけならいい。私は言い返せる。怒られたら怒り返せる。でもはとりは出来ない。優しいのと、十二支の呪いがあるからだ。
はとりを守る術が確立してない状態で広めるのは悪手だ。私はそう思うのにはとりは違うらしい。さっそくあの夜私の親に報告しようとしていた。
「俺にも考えがあると言っているだろう」
「信頼してないわけじゃないけど……」
はとりの白衣をぎゅっと握る。それでも、数年前の地獄を思い出してしまう。ひゅ、と息が詰まる。あ、駄目だこれ。
「ナマエ、ゆっくり息を吐け。大丈夫だ。俺はここにいる」
「……、っ……っ!」
「ナマエ。大丈夫だ。大丈夫」
しゃがみこんだ状態で背中を撫でられる。ゆっくり息を吐いてゆっくり吸ってを繰り返してやっと落ちついた。
「落ちついたか?」
「うん……ごめんねはとり」
「感謝の言葉のほうがいいが?」
ぱちりとまばたきする。はとりっぽくない台詞。そう考えるとふっと笑いが零れた。
「ふふ、そうだね。ありがとう」
「ああ」
顔を撫でられる。すり、とすり寄る。温かい大きな手。私も守ってあげたい。この優しい人を。改めてそう思った。
「今日は車に乗るのは止めておけ。俺が運転する。どこに行くつもりだったんだ?」
「水着買いに行こうと思ったの」
「…………」
「はとり?」
なぜかはとりが固まった。
「はとりさーん?」
「……誰に見せる予定だ?」
「うん? 紅葉と、透ちゃんと、由希、夾、あと春もかな? 草摩の別荘に避暑に行くの」
「……ならいい」
「ならいい? なにが?」
首を傾げながら訊ねるけどはとりは答えることはなく、白衣を脱いで私から車のキーをとった。
****
「どれがいいと思う?」
「俺に聞くな」
たしかに。
女性水着店にはとりがいるのは目立っている。格好いいし、私といるから邪な目的でいるとか思われてないと思うけどそれでも目立つのは嫌なのだろう。眉がよっている。
「はとり、店の外にいていいよ?」
「……おまえはどの水着を選ぶつもりだ?」
「え? うーん? 無難にビキニかなぁ。可愛いの多いし」
「…………」
また眉がよった。そして周りを見渡して一つの水着をとって私の身体に当てる。戻してまた当てる。それが10回くらい続いた。なんだこの時間。
「……これにしろ」
「わっ可愛い」
「上も下も脱ぐなよ」
はとりがとったのはレースのトップスとショートパンツがついた水色と白のチェック柄のタンキニ。フリルが所々ついてて可愛い。
「可愛い~可愛い~! これにしよう。はとり選んでくれてありがとう」
「……そんなに純粋に礼を言われることはしていない」
「?」
「とにかく脱ぐなよ」
「はい」
素直に頷くとはとりも納得したように頷いてそのまま水着をレジに持って行った。
「え!? 自分で払うよ!?」
「俺が選んだんだから俺が払う」
「どういう理屈!?」
隣でわーわー言ってるうちにはとりはお金を払ってしまった。店員さんは微笑ましそうな顔してた。笑ってる場合じゃないんですよ。
「お父さんの仕事バイトしてるからお金大丈夫なのに……」
「恋人にプレゼントするのはおかしくないだろう」
「恋人」
「鳩が豆鉄砲食らったような顔をするな」
そう言ってするりと手を握られる。顔がカーッと熱くなる。恋人。すごい響き。店を出て歩き出す。
「飯でも食べて帰るか」
「…………はい。はとり」
「なんだ」
「水着ありがとう。大切にする」
そう言うとはとりは緩やかに口角を上げて握った手をぎゅっとしてくれた。
「いくよー!」
「いやちょっとまって」
「いくのー!」
「明日でしょ? 急すぎるって」
「絶対いくの!!」
押し切られたとも言う。紅葉に弱いのを自覚した。というか話すこともあったのに紅葉は「じゃあトール達も誘ってくるね!」と紫呉にいさんの家に走って行った。天気崩れるって言ってたけど大丈夫かな。帰り迎えに行くか。
「というか水着高校生から買ってない」
水着がないなら避暑どころじゃない。引きこもる前だから高二のときの水着。うーん、買っとこう。体型変わってないけどデザインが今の好みじゃない。
用意してお母さんに車借りるといって外に出ると問診に行っていたのか白衣を着たはとりとばったり会った。思わず車のキーを落とす。顔が熱くなっているのが分かった。そんな私にはとりはため息をついて車のキーを拾ってくれた。
「そんな様子じゃ秘密どころじゃなさそうだな」
「全力で善処します……」
「おまえの親には挨拶したいんだがな」
「……慊人にバレるかもしれないから駄目」
親にも言ってくれるという言葉に高揚して、一気に熱が冷めた。
──慊人。はとりの左目。佳菜さん。慊人が奪ったもの。
慊人ははとりの大切なものを奪った。慊人はなにするか分からない。私相手でも。私だからこそあの時以上に怒るかもしれない。
ぎゅっと口を結ぶ。これは逃げだ。いつかバレてしまう。そしたらもっと怒りを買うかもしれない。私だけならいい。私は言い返せる。怒られたら怒り返せる。でもはとりは出来ない。優しいのと、十二支の呪いがあるからだ。
はとりを守る術が確立してない状態で広めるのは悪手だ。私はそう思うのにはとりは違うらしい。さっそくあの夜私の親に報告しようとしていた。
「俺にも考えがあると言っているだろう」
「信頼してないわけじゃないけど……」
はとりの白衣をぎゅっと握る。それでも、数年前の地獄を思い出してしまう。ひゅ、と息が詰まる。あ、駄目だこれ。
「ナマエ、ゆっくり息を吐け。大丈夫だ。俺はここにいる」
「……、っ……っ!」
「ナマエ。大丈夫だ。大丈夫」
しゃがみこんだ状態で背中を撫でられる。ゆっくり息を吐いてゆっくり吸ってを繰り返してやっと落ちついた。
「落ちついたか?」
「うん……ごめんねはとり」
「感謝の言葉のほうがいいが?」
ぱちりとまばたきする。はとりっぽくない台詞。そう考えるとふっと笑いが零れた。
「ふふ、そうだね。ありがとう」
「ああ」
顔を撫でられる。すり、とすり寄る。温かい大きな手。私も守ってあげたい。この優しい人を。改めてそう思った。
「今日は車に乗るのは止めておけ。俺が運転する。どこに行くつもりだったんだ?」
「水着買いに行こうと思ったの」
「…………」
「はとり?」
なぜかはとりが固まった。
「はとりさーん?」
「……誰に見せる予定だ?」
「うん? 紅葉と、透ちゃんと、由希、夾、あと春もかな? 草摩の別荘に避暑に行くの」
「……ならいい」
「ならいい? なにが?」
首を傾げながら訊ねるけどはとりは答えることはなく、白衣を脱いで私から車のキーをとった。
****
「どれがいいと思う?」
「俺に聞くな」
たしかに。
女性水着店にはとりがいるのは目立っている。格好いいし、私といるから邪な目的でいるとか思われてないと思うけどそれでも目立つのは嫌なのだろう。眉がよっている。
「はとり、店の外にいていいよ?」
「……おまえはどの水着を選ぶつもりだ?」
「え? うーん? 無難にビキニかなぁ。可愛いの多いし」
「…………」
また眉がよった。そして周りを見渡して一つの水着をとって私の身体に当てる。戻してまた当てる。それが10回くらい続いた。なんだこの時間。
「……これにしろ」
「わっ可愛い」
「上も下も脱ぐなよ」
はとりがとったのはレースのトップスとショートパンツがついた水色と白のチェック柄のタンキニ。フリルが所々ついてて可愛い。
「可愛い~可愛い~! これにしよう。はとり選んでくれてありがとう」
「……そんなに純粋に礼を言われることはしていない」
「?」
「とにかく脱ぐなよ」
「はい」
素直に頷くとはとりも納得したように頷いてそのまま水着をレジに持って行った。
「え!? 自分で払うよ!?」
「俺が選んだんだから俺が払う」
「どういう理屈!?」
隣でわーわー言ってるうちにはとりはお金を払ってしまった。店員さんは微笑ましそうな顔してた。笑ってる場合じゃないんですよ。
「お父さんの仕事バイトしてるからお金大丈夫なのに……」
「恋人にプレゼントするのはおかしくないだろう」
「恋人」
「鳩が豆鉄砲食らったような顔をするな」
そう言ってするりと手を握られる。顔がカーッと熱くなる。恋人。すごい響き。店を出て歩き出す。
「飯でも食べて帰るか」
「…………はい。はとり」
「なんだ」
「水着ありがとう。大切にする」
そう言うとはとりは緩やかに口角を上げて握った手をぎゅっとしてくれた。