日向ごっこ
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「はーさんやっと自覚したの?」
「なにがだ」
「ナマエが特別だって」
紫呉の言葉に含んでいた珈琲を吹き出しそうになった。その原因となった男は「図星だ~! やだ~!」と嬉しそうにはしゃいでいる。年を考えろ。文句を言いたいが喉につっかえてなかなか話せない。落ちついたのはしばらく経ってからだった。
「…………隠していたつもりだったんだが」
「隠せてなかったでしょ。ナマエが小さいときから一番可愛がってたし」
「それとこれとは話が別だろう」
「はーさんが穏やかな顔みせるのはナマエと一緒のときがダントツだったよ。佳菜さんと会うまでは」
「…………」
「僕はナマエとくっつくと思ってたから意外だったけどはーさんが倖せそうだったからね。こんな事もあるのかと思ったけど最近はまた違うみたいだしぃ~」
「いくつ離れてると思ってるんだ」
「ナマエもう成人でしょう? 関係ないでしょ」
「…………」
「そうやっていいわけしながらも口実作って行動を共にしてるのならそれはもう一緒に生きていきたいってことなんだと思いますよ」
「…………また、同じ事になったら」
せっかく笑えるようになったナマエを佳菜と同じ目に合わせてしまったら。
はとりが怖いのは結局そこだ。ナマエが壊れたら。あの笑顔が曇ってしまったら。もうはとりは前を向けなくなってしまう。足元から全てが崩れてしまう。ナマエを失ったら、生きていけるのだろうか。
「それナマエにも言った?」
「!」
「話し合いは和解の第一歩でしょうに」
「……おまえがそれを言うのは違和感が凄いな」
「それを言うのはなしでしょ~。それにナマエだってはーさんに隠してることあるし似た者同士だねぇ君達は」
「隠してること……?」
「ナマエが家から出られなくなった理由」
「!!」
「はーさんには死んでも話さない理由」
****
「ナマエ」
「あ、はとり。紫呉にいさんとの話終わった?」
「ああ」
「りっちゃん残していくの大丈夫かな? 紫呉にいさんにいいように弄ばれてそう……」
眉を寄せるナマエ。利津の名前が出たことに再び沸き立つほのかな嫉妬心。「大好き」だと目の前で言われて落ち着けるほどまだ大人はできてはなかったことを自覚した。友人としての好きだと今は分かっているというのに。
「ナマエ」
「うん?」
こちらを見てくる信頼の目。これが当たり前だった。ナマエが小さなときから変わらなかった。いつから隠していたのだろうか。いつからナマエの心境は変わったのだろうか。
『佳菜さんと一緒になるってはーさんが言ったときのナマエ。必死に隠して偉いと思ったよね。鋭いはーさんがずっと見てきたナマエの変化に気づかないくらいだったんだから。それではーさんの倖せを第一に願ってたよ』
『でもはーさんの倖せは壊れちゃって。ナマエは思ったんだろうね。佳菜さんみたいにはとりも壊れたらどうしようって。消えていったらどうしようって。そしたらはーさんのいる場所以外が怖くなっちゃったんだからナマエの一途さも筋金入りだね。今身体が安定してるのははーさんがナマエから見て安定してるからだろうし。多分、はーさんにいい人が出来たらナマエは笑顔で祝福。病気も完治するだろうね』
『ナマエははーさんが倖せならそれでいいんだよ。病気になるくらい好きなくせに。真っ直ぐすぎるのも考えものだね』
「ナマエ」
「だからなに? はとり」
「大切にすると誓う。もう絶対にお前に心配かけないことも。だから俺と生きてほしい」
「え……」
「いつからかは分からない。でも埋まった隙間にお前がいた。いてくれた。もう離せないことも悟った」
「まって、はとり」
「待たない。好きだナマエ」
「っ、」
ずっと心配をかけていた。見守っているつもりで見守られていた。倖せを願ってくれていた。はとりの毎日にナマエがいた。その事実に癒されていたことに気づいたら、愛おしいと思っていることに気づいたら、手を伸ばして掴みたいと思った。
両肩を掴む。許される距離はここまで。震える肩も抱きしめてやることも出来ない。狭い背中に腕を回すことも出来ない不完全な身体。それでも欲してくれるのなら。誰がなんと言おうと守ろうと誓った。あのとき守れなかった分まで。絶対に。
「……って、いいの?」
「なんだ?」
「わたしが、はとりのこと、好きっていって……いいの?」
「いい。言っていいから、泣くな」
頬に手を添えて涙を拭う。どんどん出てくる涙がきりがない。しかしそれだけはとりへの想いを秘めていたのだと思うと悪くない気分になる。泣かせているくせに勝手だ。
「はとり、好き」
「ああ」
「子供のときからずっと好き」
「ああ」
「大好き」
はとりの両腕に手を添えてくる。弱々しい力が愛おしい。額を合わせるとすり寄ってきた。涙で濡れた瞳がはとりを写す。柔らかく弧を描く。好きだと伝えてくる。自分も伝えられているだろうか。そう思いながら顔を寄せて口づけた。倖せだと思った。
「なにがだ」
「ナマエが特別だって」
紫呉の言葉に含んでいた珈琲を吹き出しそうになった。その原因となった男は「図星だ~! やだ~!」と嬉しそうにはしゃいでいる。年を考えろ。文句を言いたいが喉につっかえてなかなか話せない。落ちついたのはしばらく経ってからだった。
「…………隠していたつもりだったんだが」
「隠せてなかったでしょ。ナマエが小さいときから一番可愛がってたし」
「それとこれとは話が別だろう」
「はーさんが穏やかな顔みせるのはナマエと一緒のときがダントツだったよ。佳菜さんと会うまでは」
「…………」
「僕はナマエとくっつくと思ってたから意外だったけどはーさんが倖せそうだったからね。こんな事もあるのかと思ったけど最近はまた違うみたいだしぃ~」
「いくつ離れてると思ってるんだ」
「ナマエもう成人でしょう? 関係ないでしょ」
「…………」
「そうやっていいわけしながらも口実作って行動を共にしてるのならそれはもう一緒に生きていきたいってことなんだと思いますよ」
「…………また、同じ事になったら」
せっかく笑えるようになったナマエを佳菜と同じ目に合わせてしまったら。
はとりが怖いのは結局そこだ。ナマエが壊れたら。あの笑顔が曇ってしまったら。もうはとりは前を向けなくなってしまう。足元から全てが崩れてしまう。ナマエを失ったら、生きていけるのだろうか。
「それナマエにも言った?」
「!」
「話し合いは和解の第一歩でしょうに」
「……おまえがそれを言うのは違和感が凄いな」
「それを言うのはなしでしょ~。それにナマエだってはーさんに隠してることあるし似た者同士だねぇ君達は」
「隠してること……?」
「ナマエが家から出られなくなった理由」
「!!」
「はーさんには死んでも話さない理由」
****
「ナマエ」
「あ、はとり。紫呉にいさんとの話終わった?」
「ああ」
「りっちゃん残していくの大丈夫かな? 紫呉にいさんにいいように弄ばれてそう……」
眉を寄せるナマエ。利津の名前が出たことに再び沸き立つほのかな嫉妬心。「大好き」だと目の前で言われて落ち着けるほどまだ大人はできてはなかったことを自覚した。友人としての好きだと今は分かっているというのに。
「ナマエ」
「うん?」
こちらを見てくる信頼の目。これが当たり前だった。ナマエが小さなときから変わらなかった。いつから隠していたのだろうか。いつからナマエの心境は変わったのだろうか。
『佳菜さんと一緒になるってはーさんが言ったときのナマエ。必死に隠して偉いと思ったよね。鋭いはーさんがずっと見てきたナマエの変化に気づかないくらいだったんだから。それではーさんの倖せを第一に願ってたよ』
『でもはーさんの倖せは壊れちゃって。ナマエは思ったんだろうね。佳菜さんみたいにはとりも壊れたらどうしようって。消えていったらどうしようって。そしたらはーさんのいる場所以外が怖くなっちゃったんだからナマエの一途さも筋金入りだね。今身体が安定してるのははーさんがナマエから見て安定してるからだろうし。多分、はーさんにいい人が出来たらナマエは笑顔で祝福。病気も完治するだろうね』
『ナマエははーさんが倖せならそれでいいんだよ。病気になるくらい好きなくせに。真っ直ぐすぎるのも考えものだね』
「ナマエ」
「だからなに? はとり」
「大切にすると誓う。もう絶対にお前に心配かけないことも。だから俺と生きてほしい」
「え……」
「いつからかは分からない。でも埋まった隙間にお前がいた。いてくれた。もう離せないことも悟った」
「まって、はとり」
「待たない。好きだナマエ」
「っ、」
ずっと心配をかけていた。見守っているつもりで見守られていた。倖せを願ってくれていた。はとりの毎日にナマエがいた。その事実に癒されていたことに気づいたら、愛おしいと思っていることに気づいたら、手を伸ばして掴みたいと思った。
両肩を掴む。許される距離はここまで。震える肩も抱きしめてやることも出来ない。狭い背中に腕を回すことも出来ない不完全な身体。それでも欲してくれるのなら。誰がなんと言おうと守ろうと誓った。あのとき守れなかった分まで。絶対に。
「……って、いいの?」
「なんだ?」
「わたしが、はとりのこと、好きっていって……いいの?」
「いい。言っていいから、泣くな」
頬に手を添えて涙を拭う。どんどん出てくる涙がきりがない。しかしそれだけはとりへの想いを秘めていたのだと思うと悪くない気分になる。泣かせているくせに勝手だ。
「はとり、好き」
「ああ」
「子供のときからずっと好き」
「ああ」
「大好き」
はとりの両腕に手を添えてくる。弱々しい力が愛おしい。額を合わせるとすり寄ってきた。涙で濡れた瞳がはとりを写す。柔らかく弧を描く。好きだと伝えてくる。自分も伝えられているだろうか。そう思いながら顔を寄せて口づけた。倖せだと思った。