迷走ソネット
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蜂楽選手のドリブルから始まった甚八くん曰わく勝つための方程式。次に進化を見せたのは國神選手だった。データ上では不可能だった28m外からの無回転のロングシュート。見事に二点目が決まった。
でも潔選手はまだ見つけられてないみたいだ。自分の武器を使った方程式が。ぎゅっと服の袖を握りしめる。
「本当に思ってた通りの戦いになりましたね。絵心さん」
「うん熱いね。勝つか負けるか、生きる死ぬか。その極限状態の熱狂の中でしかエゴは育たないんだよアンリちゃん、名前」
「うん……」
「死線を超えるためにストライカーは進化を余儀なくされる。俺が観たかったのはコレだ。さぁ魅せろ才能の原石共よ。覚醒の時間だ」
今私は貴重な場面に遭遇しているのかもしれない。人が進化していく過程を。
「アンリちゃん覚醒ってなんだか解る?」
「え? ……えーっと例えばいきなりスーパーパワーに目覚めたり……凡人が超人になったりするアレのことですよね? スーパーサイヤ人的な」
「うん全然違う。それはバカの発想だね。バカ巨乳め……」
「甚八くんそれセクハラとパワハラだから」
「はい、次名前」
「無視かい……今までの積み重ね?」
「半分正解。いいか覚醒とは思考と経験の蓄積の上に起こる学習だ。失敗と試行錯誤を重ねそれでも勝とうと極限に立ち向かう時バラバラだった成功へのピースが噛み合って個人は開花する……」
「つまり覚醒とは個人が己を学習する瞬間だ」
フィールド上の選手たちも学習を重ね続けているのだろうか。自分の武器の使い方を。相手への挑戦を怯むことなく挑み続けている。それはきっと凄いことだ。
「覚醒とは常に極限状態でのみ起こる代物だ……例えば自分より強大な敵と相対したとき弱者は己の能力を集約させることで勝つための新しい方程式を発明する」
モニター上の千切選手は一度速さ勝負で負けた斬鉄選手に挑んでいる。先ほどと違うのは距離の長さ。最速力という武器で彼は戦っている。
「さぁ試合終了まであと30分だ。世界一のストライカーになるのは──この青い熱狂を支配する人間だ」
千切選手はトップで走りつづけ、そのままゴールを決めた。3-3。同点だ。
「すごい……」
息つく間もない攻防戦。ただ観ているだけなのに伝わってくる熱狂。これがブルーロック。世界一のストライカーを決めるほんの前哨戦。まだまだ道は続くのを私は知っているのに観ている熱が止まらない。
「甚八くん、私が観測者って違うと思う」
「なぜだ」
「だってこんなにも一喜一憂して、心が震えて止まらないのに、観てるだけの他人になんてなれないよ」
「……そうか。だったらお前に出来ることを探すんだな。その位置じゃ満足できないならな」
「うん!」