迷走ソネット
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食堂事件から少しして。潔選手のチームZはチームYとの試合に勝利した。潔選手のシュートが決定打となって。甚八くんと観ていたのだけど潔選手の悩みは解決したのだろうか。今回はストライカーとしてシュートを決めた、よね? かっこよかったもん。
「日本サッカーやW杯優勝に導く世界一のストライカーを誕生させるために高校生FW300人を集めて育成するこの青い監獄プロジェクト。そろそろJFUに経過を報告する時期なんですが進捗はいかがでしょう絵心さん」
「ちょっとまってアンリちゃん。今から至福の時間だから」
「甚八くん早くして。私の焼きそばが伸びる」
「好きですよねー絵心さんも名前ちゃんも。カップ麺かカップ焼きそばばっかり食べてません?」
「反動ですよ、現役時代の」
「私は食堂行きたいけど夜の人が少ない時間しか駄目って甚八くんがいうから」
「同じ年頃の異性を男共の巣窟にやって変に集中切らされたら困るんでね」
「異性……?」
甚八くんは私のことミジンコかなにかかと思ってるからそんな風に思ってるのは意外すぎた。というかウーバー来てくれたら一番いいのにここ絶妙に田舎だから来てくれなさそう。ピザならいけそうだけどピザばっかりはさすがに駄目だ。
「……というか洗濯、掃除ぐらいは自分でやってくださいよ! もぉー」
「代わりのきく仕事はやらない主義なんで。てかサッカー以外はやらなくていいって契約でしょ?」
「え? そうなの?」
「そうですよ。名前のもそうなってる」
「ええー! 初耳!」
「食事もアンリちゃんにどうにかしてもらえば?」
「…………」
「名前ちゃん!?」
ちょっと迷ったけどさすがにアンリちゃんの仕事量増やすのは憚れる。私は甚八くんみたいに図太くないのだ。ちょっと迷ったけど。
「……で、順調なんですかその青い監獄一次選考の方は?」
「うん順調順調。まあ見てろ。そろそろスパイスの時間だ。名前、モニターの準備してて」
「焼きそば混ぜ終わったらね」
***
潔選手は同じチームの人達とフィールドを駆け巡っている。さっきの甚八くんの演説が効いたのかな。
「……下位の人間にひっくり返されたんだから燃えないワケないよなぁ。一人の突出した存在が競争のスパイラルを生む。これが青い監獄だ。世界一熱い場所にしか英雄は生まれない」
食堂にいたときと全く表情が違っている。ほんの数日でこんなに人って変われるんだ。なんか……すごいな。……いいなぁ。
「潔選手ってチームを引っ張る力があるのかな」
「おまえやけに潔世一に執心じゃないか。試合も熱心に観てたしな」
「え、」
そうかな……? イヤだって食堂で言いたい放題したからさすがに気にかけると思うんだけど。
「コンプライアンス的にダメな感じ……? ひいきっぽい?」
「いや別に。好きにしたらいい。観測者から贔屓がでるのは当然だ」
「私観測者なんだ」
「おまえは俺に言われて物作ってるだけだからな」
「合ってるけどなんかもやっとする言い方」
「だが邪魔だけはするなよ」
「………」
「おい、返事」
「……あい」
食堂事件は邪魔だったかもしれないとは甚八くんには言えなかった。ごめんなさい潔選手。