迷走ソネット
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目的のカラオケルームまで四人で歩いていたときだった。なにやら前方が騒がしい。
「最低! 誰この女!」
「どーゆーつもりでデートとか言ったの!?」
「ちょ待ってよぉーいいじゃん3人で楽しめばさぁー」
「触んなこの浮気クソ男!」
「死ね! 信じられない!」
そう言ってカラオケルームから出てきてすれ違った女性二人。すれ違う直前で名前を逆サイドへやる。なんか怖かったので。おそらく修羅場だ。
「うわちゃー」
「すごい……」
「見るな見るな」
玲王にそう言われたが視線を問題のカラオケルームへやってしまった。するとそこにいたのは見覚えのある人物で。
「え、あ! 愛空!?」
「痛ってぇ……お? お前らおっす」
頬を押さえて呑気に挨拶してくる愛空。カラオケルームに入るとその頬は真っ赤になっているのが分かった。
「お前あんだけサッカーじゃ頼りになるのに……外じゃだらしないタイプかよ」
「結構年上のお姉さん達だったよね?」
「ディフェンスできなかった?」
「へへへ見られちまったなぁ……お、お前らも可愛い子連れてるじゃん」
「一緒にすんな!」
すかさずそう返すと鷹揚に笑って流された。名前は潔の後ろで人見知りしている。チャラ男は許容するのに時間がかかるのかもしれない。
「お前らも休暇か? U─20もみんないるぜ」
「え」
***
「ほら」
「タマシイレボリューション!!」
「二階席ぃぃ!!」
連れられた広めのカラオケルームではジャージ姿のU─20の面々の姿があった。愛空だけナンパしてたらしい。
「あ! 潔世一!」
「あぁん!?」
「憎き宿敵青い監獄」
「何しに来たおめぇらぁ!?」
U─20の勢いに名前が完全に潔の後ろに隠れてしまった。腰の辺りを掴まれているのが分かる。怖がらせないでほしい。
「いや別に……たまたま近くにいたから……」
そう言っていると右方向から遅れてブルーロックの面々がやってきた。なんだかややこしくなってきた気がする。
「喧嘩?」
「おーおー皆さんおそろいで」
「加勢しようか潔?」
「シャキーン」
「シュワッチ!」
「おぉん!?」
「よっしゃ。じゃあせっかくだし晩飯でも賭けてボウリング対決といきますか」
場所を移動してボウリングフロントへやってきた。対決は決定事項のようだ。見事に対立しあっている。
「名前、大丈夫?」
「だ、大丈夫……! 近寄らなければ……!」
珍獣かなにかだと思われているぞU─20。この様子だと名前はボウリングに参加出来ないだろう。そもそも女子を賭けに参加させるのもどうかと思うが。一応参加するか聞いたが無言で首を横にブンブンさせていた。
「おれの名前『かいぶつ』にしてくれ♪」
「俺は『オシャ仏』で」
「俺は『ニンジャリバンバン』」
「うっさい! ボケABCでえぇか?」
名前の設定もすみ、ボールをボールリターンへ運ぶ。名前はボール選びの時からずっと潔にくっ付いて回っている。よほどU─20が怖いらしい。役得だなとか思ってはいけない。そんなことを考えながら隣のレーンへ視線をやる。
「え……ちょま」
「ん?」
「あそこで一人でやってる人……なんか見覚えが……」
「なんと美しいオシャフォーム!」
その人物が投げたボールは綺麗にカーブを描き、見事ストライクを決めていた。
「すっげ上手すぎ!」
「つかあのツンツン頭! 馬狼じゃーん!!」
「マジ?」
「なにやってんだよお前ー」
「凄いね馬狼選手……!」
「!!? んあ!? 何でいんだお前ら!? 俺の趣味の聖域に!」
「これマイボール? すげー」
「汚ぇ手で触んな!」
「次投げていい?」
「殺すぞ!」
「ギャハハハ」
「ぷはっ」
好き勝手にされる馬狼に笑いが止まらない。どうやらこのノリだと馬狼も参加の流れになってしまいそうだ。
***
「ほぃ」
千切の投げたボールは見事スペアを決めた。
「しゃあナイスお嬢ぉ!!」
「接戦! 接戦!」
「お互いラスト一投で決まるぞ!」
U─20のラストプレイヤーは蛇来だ。チームから応援されるなか、何かをぶつぶつ唱えている。
「……ゴラッソ仏よ、我に力を与えたまえ……南無妙法蓮 GET GOAL 南無妙法蓮 GET GOAL……エル・ゴラッソ!!」
勢いよく投げられたボールは真っ直ぐ進んでいき、見事ストライクを決めた。ゴラッソ仏やべえ。
「いけ! こっちのラス投!」
「「凪ぃ!!」」
こちらのラストは凪だった。気迫が全く感じられないがまあ大丈夫だろう。決めるときは決める男である。そう思っていたら自分の足に引っかかって見事にこけた。おじいちゃんか。
ドテッゴロゴロゴロ。そんな鈍い音をさせながら進んでいくボールはなぜかピンを全部倒してストライクとなった。まさかの同点である。
「んあ?」
「な、凪くん大丈夫?」
「ん。へーき」
「ちゃんと投げろバーカ!」
「これで同点♪」
千切達が喜んでいる背後で乙夜たちはナンパをしていた。自由すぎる。
「おいまだ決着ついてねーぞー。ボウリング延長戦なー」
その言葉に断りを入れる。高校の友達と会う約束があるのだ。
「帰っちゃうの……?」
「うぐっ、ごめんな。約束してて」
見るからにしょんぼりする名前に良心が痛んだが約束は約束だ。
「そっか。約束は大事だもんね。またね、潔くん」
「うんまたな名前、皆! 楽しんで!」
そう言った瞬間、あれ名前は大丈夫か……? と不安になって振り返ったが蜂楽が一緒にいた。さすが相棒。頼りになる男である。
楽しかった。素直にそう思える一日だった。