迷走ソネット
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《それではまず投票を集計し、第一第二希望を加味した結果、振り分けられるチームを発表いたします──》
AIアナウンスと共に大画面モニターにチーム振り分けが現れるようパソコンを操作する。Aチームが少し多い結果となった。ちなみにメンバー振り分けのガラガラ演出は私のお手製だ。わくわくするでしょガラガラ。甚八くんには何でもいいって言われたけど。分かってないな甚八くん。演出って大事なんだよ。
《Aチーム一人目……七星虹郎!!》
《続いて二人目……氷織羊!!》
《そしてAチーム三人目は──……潔世一!!》
潔くんが早速一試合目だ! がんばれ! パソコンを操作しながらエールを送る。続いて対戦相手のBチームのチーム振り分けを行う。
《一人目志熊恭平!!》
《二人目皿斑海琉!!》
《最後に三人目──……千切豹馬!!》
一次選考と二次選考4thステージで一緒だった千切選手と戦うのはやりにくそうだ。が、がんばれ。私は評価基準とか全く分からないから応援することしか出来ない。
AチームとBチームで試合のある人はビブスを付けて入場ゲートへ向かって行った。私は残りの23人の振り分けをやらなくてはならない。……ガラガラも自動設定でやれば良かった。回すの二回で充分だった。楽しそうとかそういうのいらなかった。その後手動ガラガラマシーンと化した。虚無顔で手を動かす私に甚八くんはバカめ、といった。異議なし。
***
Aチーム対Bチームの現在の試合の感想。潔くんずっとストーカーされてる。糸師選手と士道選手の相性悪すぎ。乙夜選手忍者だった。実際に末裔らしい。……忍者!? すごくない!? なんで昨日言ってくれなかったの! 俺忍者って!
そんなことを思いつつ烏選手にマークされ続けあまり動けていない潔くんを見守る。3-4でBチームからのボールだ。潔くんは烏選手に向かっていく。……と思いきや間に入ったのは糸師選手。死体蹴りやめろハイエナ烏といって煽ってる。やっぱ口悪い。というか潔くんのこと死体呼ばわり! 口悪い!
マッチアップした二人は互いに手を使って距離感をとりあっている。そこに入ったのは潔くん。糸師選手と烏選手の死角からボールを奪い取った。ほら死体じゃないぞ! 糸師選手!
潔くん、七星選手、氷織選手の連動でカウンターアタックが始まる。三人のパスワークで中盤が切り崩されていく。潔くんがサイドへボールをやり、氷織選手がフリーとなった。そしてゴール前のポイントに走り始める潔くん。そこに氷織選手はシュートを切り込んだ。いけ!
そう願うも潔くんの足は一歩ボールに届かなかった。あああおしいぃ! そのボールを乙夜選手がクリアした。そこに走ってくるのは烏選手と糸師選手だ。互いにハンドを使って牽制しあっている。
『これだから面倒臭いんじゃ非凡は!!』
『だったらすっこんでろクソ烏……!!』
競り勝ったのは糸師選手だ。ゴールが決まり4-4となった。
最後の決戦。乙夜選手と烏選手のパスワークで始まり、烏選手にボールが渡ったところで糸師選手と潔くんが烏選手を挟んだが、抜けたスペースからのシュートで右サイドの千切選手へのパスが回ろうとしていた。
『シャッハァ! 千両役者参上!!』
それをカットしたのは士道選手だった。こぼれ球をとったのは七星選手。すぐさま潔くんへパスが回る。詰めてきた烏選手、乙夜選手を糸師選手と七星選手のトライアングルで抜けていく。中盤を競り渡った状態で潔くんは左サイドの氷織選手へとボールを回した。すぐさま千切選手がセンタリングを阻止すべくマークにつく。今ゴール前は混戦状態になっていた。
氷織選手がパスシュートを撃つ。そのボールの先に向かったのは士道選手と糸師選手。そして二人の間を抜けた潔くんだった。潔くんはそのままダイレクトシュートを決めた。5-4。チームAの勝利だ。
「よし!」
「名前」
「あ、はいすみません」
「違う。今のシュートのカラクリが分かったか?」
「ううん、分からない」
「“挑戦的集中”への没頭状態。『FLOW』
奇跡を起こす方程式に足を踏み入れたな潔世一」
この甚八くんは内心燃えてるやつだ。つまりすごいことしたんだ潔くん。うむむ、分からないのが悔しい。そう思いながらモニターをみると糸師選手と士道選手が殴り合っていた。なんで? 君たち勝った側でしょ?