迷走ソネット
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馬狼を仲間に引き入れ、3人でトレーニングをし就寝時間となった。結局ベッドは潔が二段ベッドの下。文句がないわけではないが、すでに就寝している天才二人に苦情を言うのも憚られる。はあ、と息を吐いて寝床を整え横になる。ベッドの天井を仰いで目を瞑る。さっさと寝よう。そう思った瞬間ポカンと頭に浮かんだのはひとりの女の子だった。
ブルーロックに存在する同年代の女の子はたった一人しかいない。絵心名前。絵心甚八曰わくブルーロックの頭脳。その言葉通り、施設の機器、直近で言えばブルーロックマンを作り、管理しているのが彼女らしい。同い年とは思えないその所業。きっと彼女も天才と呼ばれる立場の人間なんだろう。
そう感想しながらも思い浮かんだのは名前のどこか落ち着かない挙動不審感。人なれしていないわんこのような姿を思い出し、ひとりで笑いを噛みしめた。最初に話しかけたとき絶対に困ってたよな、と少々性格の悪いことを考える。あの時は自分もまいっていたが、それ以上に名前も困っていたに違いない。
(それなのにアドバイスしてくれたんだよな)
なぜかハンバーグを献上されてしまったが。
あの子はきっと人見知りなのだろう。二回目に話しかけたときも恐る恐るといった様子だった。しかも食べようとしていた焼き魚を献上しようとしていた。そんなに腹ペコなイメージを持たれているのだろうか。いや、食べ物が質素でげんなりしていたのは間違いないが。
意外だったのが、久遠に対して怒っていた様子だったこと。直接何か言ったわけではないが、憤りを隠せておらずムカついてます! と顔に書いてあった。恐らくあの試合を観たのだろう。玲王達が断らなかったら文句のひとつやふたつ言いそうな勢いだった。人見知りなのによく行こうと思ったなと今にして思う。職員でもあるのにいいのかと思わないわけでもないが、単純に嬉しくもあった。この子いい子なんだな、と思ったのだ。
その後、玲王の家が自分のスポンサーだとしてくるりと手のひら返ししたのはひとまず置いておく。長いものには巻かれる主義なのかもしれない。
(……今思えばよく下の名前で呼んでいいか聞けたよな)
あの絵心甚八と一緒くたにしたくなかったのも理由のひとつではある。マムシとポメラニアンくらい生態が違うので。
それでも今までの人生で女子の下の名前を呼ぶなんて行為は幼稚園以来ではないだろうか。そう思うと少し気恥ずかしさが勝ってきた。口元に手をやってこそばゆいのを隠す。隠さないと声に出してしまいそうだった。
(……普通に可愛いんだよな名前ちゃん)
見た目も言動も中身も。人見知りなことだって可愛く見えてくる。だって人見知りなのに、きっと話すのもいっぱいいっぱいだろうに一生懸命こちらを励まそうとしてくれる。
(あーだめだ。これ以上考えたら深みにハマる)
今は勝ち上がることだけ考えなくてはならない。凜に勝って蜂楽を取り返すのだ。そう言い聞かせた。言い聞かせないと何かが変わるそんな予感がしたからだ。
それでもまた会ってしまったら。おろおろしながらこちらを見る目をみたら。
自分は話しかけてしまうのだろう。そう思った。