ライン風シリーズ
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「はい。去年の水着がこちら」
じゃん! とわざとらしく身体に巻いていたタオルを外すナマエ。そしてそこから現れた肌色に黒のコントラスト。比率的には肌色が多い。なんせ黒のビキニだ。三角ビキニというらしいそれは谷間がばっちり見えている。諏訪は大きくため息をついた。
「なんだよー去年と同じ反応してー」
「下着じゃねーか」
「それも去年言ってた。洸太郎、相変わらずこの水着好きじゃないねぇ」
「なんでてめーの女の肌を他のヤローに見せなくちゃいけねえんだよ」
「その言葉ときめく」
「茶化すな」
「本気です」
本気ならもっと控えめなモノ着てくれや。力なくそう言うと「任せなさい」と言ってナマエは部屋から出て行って着替えに行った。そして私服に戻ったナマエはローテーブルのノートパソコンを開く。諏訪が来る前にいくつか見繕っていたらしい。水着のサイトだった。
「うーん。やはりビキニが多い」
「ビキニの検索チェック外せ」
「一気に検索数減る」
「いいんだよそれで」
ナマエの隣で肘をついてノートパソコンを覗く。ナマエ曰わくビキニ抜きの水着達。それでも肌色が多い。
「服みたいなのがお好み?」
ナマエが指差したのはワンピースみたいな水着だった。迷わず頷くとナマエは「えー」と不服な様子。
「はっきり言わせていただきますけど」
「なんだ」
「洸太郎をドキッとさせる為に露出の多い水着を着る乙女心を察してくださいよ」
「裸知ってんのに今さらなんだ」
「隠された場所があるのは秘匿的でドキドキしない?」
否定できなくて黙るとナマエは「あいむうぃなー」と緩く手を挙げて意気揚々とビキニの覧を物色し始めた。
「おい、俺の意見聞くって言ったのどこ行った」
「三角ビキニは買わないです」
「たりめーだ」
「あ、谷間大きくみせるグッズがある。わっすごーい」
「絶対買うな」
つーかそんなものあんのかよ。女の欲が分からなくて諏訪は困惑する。そして本気で止めないとナマエはまた派手派手しい水着を買う。しかしあれをやめろ、これもやめろと言っても聞く女ではない。諏訪は先ほど見た露出の激しい三角ビキニを思い出す。それの何が気に入らなかったか。
「おい」
「なにー」
「谷間は見せんな。腹もあんまり見せるな」
足は我慢する。腕も。なんなら夏の私服でそれは全開な女である。ことごとくファッションの好みが合わない恋人だと思った。
「んーむ、よかろう。洸太郎が気に入らないと意味ないし」
それでもナマエに惚れたのでこうして妥協点を探ってつき合っていく。それが恋人同士というやつで。こうやって過ごして一年と半分くらいきた。
「ハイネックで下がハイウエストスカートの水着はどうですか」
「ハイネックってどれだ」
「首元まで覆われたやつ。これこれ」
写真を見せられる。それは鎖骨が綺麗に隠れていてスカートでへそも隠れている。
「……いいんじゃねーか?」
「これを着たおまえが見たいとか可愛いとか言わないと派手なの買うぞ」
「…………似合うんじゃねーか?」
口がむずむずして言えたのはそれだけだった。ナマエは「ひとまずよし。水着着た状態で褒めてもらお」と不吉なことを口にしている。……これ褒めないと来年が大変なことになるな。そんな確信を持ちつつナマエの水着選びは終了した。
ナマエはノートパソコンを閉じて隣に座っていた諏訪のあぐらに乗っかかった。
「重いわ」
「いちゃいちゃタイムの第一声が重いとか。やりなおし! やりなおし!」
「めんどくせえ……」
「無理やりちゅーするぞ」
「今のままやってもただの唇の接触になんぞ」
「確かに」
納得したらしくナマエは首からスーッと指を這わせて諏訪の両頬を包んでジッと見つめてきた。
「洸太郎」
「…………」
ずりーなこの女。そう思いつつ後頭部に手を回して唇を重ねた。途端にナマエの機嫌がよくなったのを感じつつお互いに好き勝手にキスをする。
「ん……ね、洸太郎」
「なんだ」
「私はおしゃれ好きだからこれからも洸太郎がまじかそれっての着ると思うの」
「まじか」
「まじまじ。でもね、洸太郎の嫌なことしたいわけじゃないから話し合いをちゃんとしたいのですよ」
仲良くやってずっと一緒がいいから。
ナマエはそう言ってこぼれるように笑う。まるで宝物のことを話す子供のようなそんな笑みだった。……あんな派手な水着着ていた女とは思えない無垢な笑顔に「おまえなぁ」と思わず声が出る。
「なによ」
「…………」
「なによ」
一年と半分。そう短くない期間。それなのに未だに笑顔に見惚れるのだから恋とは厄介だと身を持って体感した。
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