○○シリーズ
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「パパだよ~パパが決めるからね~絶対パパが決めるから~」
ソファに座ってたら徹がやってきて私を一度立たせてから自分が座っておいで、と手を広げて来たので徹の足の間に座った。そしたらお腹に手を回されて優しく撫でられながらずっとこうだ。よほど岩ちゃんに決めてもらうという言葉が効いたらしい。
「岩ちゃんだったら色々考えてくれると思うけど? 由来とか縁起とか」
「俺も考えるし!」
「岩ちゃん泣いて喜ぶよ」
「そりゃそうでしょ俺らの子供なんだから。でもそれとこれとは話が別!」
「岩ちゃんみたいな人になってほしいから男の子だったら一って名前にする?」
「それは俺が複雑なのでやめてください」
同じ幼なじみでも男と女では感覚が違うみたいだ。でも岩ちゃんが徹の名前を子供につけるかと考えたら絶対にあり得ねーって言うに決まっている。なんだろう。こっちは何となく理由が分かってしまう。徹には言わないけど。
いいけどな
「岩ちゃんに懐妊の連絡はしていいけどそれ以上はダメ!」
徹は肩口におでこをやってぐりぐりしている。そんなに嫌なの。仲良いのに。ポンポンと頭を叩くと「ダメだからね」と念を押された。
「はいはい二人で決めようね」
「うん」
ひょいと身体の向きを変えられて太ももの上に横向きになる。顔にキスが降りてくるのを受け止めていると徹は顔をふにゃりと緩めた。珍しい顔してる。
「俺達の子供かー」
「何回目ですかそれ」
「何回言ってもいいの。ありがとう、本当にありがとう」
ちゅ、ちゅ、とキスされる。ゆっくりと愛情を伝えてくるかのように。目が合うと二人して笑みがこぼれた。
「性別分かるのは安定期入ってからのが多いんだって」
「そっか。んーどっちでも嬉しいけど女の子だったら嫁にいくのか……」
「いかないかもよ? 今は多様性の時代ですし」
「えっ、ずっとパパって言って側にいてくれるってこと!?」
「多様性をもっと知って? パパ」
「ナマエにパパって呼ばれるの興奮する……」
「その興奮、ただの喜びだろうな……」
怪しくて太ももの上から移動しようとしたら「妊婦さんにそういうこと考えるわけないでしょ! そうなったら自家発電します!」と強く宣言された。
「つわり酷くなるかもしれないんでしょ」
「んー個人差あるらしいけど。私はん? この料理の匂いきつくない? って感じで吐き気まではないなぁ今のところ」
「あまりママのこと苦しめないでね」
お腹を撫でられる。徹の癖になりそうで、そう思うとなんだか愛おしくなってきた。
「チームメイトに妊娠中によかった食べ物聞いておくよ」
「安定期入ってからね念のため」
「ああそっか……その可能性あるのか……」
ちょっとしょんぼりさせてしまった。でも大事なことなので。
「まだ命が不安定な子だから。私が出来ることは転倒しないとかかなぁ」
「ナマエも自分の身体大事にしてね。俺も気をつけるけど」
「うん。ありがとう」
「体調悪かったらちゃんと言うこと。いつでもいいから」
「うーん、徹が家いないときはタクシーで病院いくよ」
「なんで!」
「生まれるまで長いんだよ? ずっと緊張してたら疲れちゃうよ。病院行ってたら徹も安心でしょ?」
「病院行くほど体調悪いのに安心は出来ません」
「あらら」
心配性なパパになりそうだ。
「性別の話に戻るけど」
「うん」
「分かった時点で聞く? それともお楽しみにしておく?」
「あー……どっちもいいな」
「だよね。ベビー用品は今色んなのあって男の子ー女の子ーしてないのもあったから選択肢はいっぱいあるよ。見るの楽しいの」
「……
徹の逞しい腕で優しくギュッとされる。声のトーンは下がってる。……高校生のときアルゼンチンに行くってなったときと同じだなぁ。
『アルゼンチン?』
『アルゼンチン』
『……なにが美味しい国かも知らない』
『そんな国に行こうと、思い……ます』
別れ話かな。率直にそう思った。だって遠距離恋愛なんてしたことない。しかも日本国内じゃなくて時差のある海外だ。それにバレーボール馬鹿の徹でも言葉や文化の違いがある国で1から頑張らなければならない。私に構ってる余裕なんてなくなるだろう。徹の優先するものは分かっていた。だから笑顔で別れようと心で決めはじめていたら徹は思ってもないことを言い出した。
『スペイン語の講座とってください』
『……へ?』
『アルゼンチンの公用語、スペイン語だから』
『スペイン語』
『スペイン語』
なんで、と首を傾げていたら徹は「ああー!」と頭をぐちゃぐちゃにした。いつもセットしてるくせに。そう思ってたら徹はしゃがみこんだ。
『俺はバレーしにいくんだけど』
『うん』
『ナマエもほしいから』
『…………』
『というか他の男にやるのなんてあり得ないから、だから……』
『……うん』
『呼んだら来て』
『アンパンマンじゃねーぞ』
『分かってますけど!? ニュアンスで伝わらないかなぁ!?』
そう元気に突っ込んでる風にしても徹は不安そうな顔をしていた。だから逆に笑って笑顔を作った。しゃがんで視線を合わせる。
『私の人生あげるから頑張らないと許さない』
『!!』
『大学はこっちいるからね。就職もこっちかなぁ』
『キャンパスライフに職場恋愛……っ』
『ライバルは多いよ。だからバレーやってる格好いい姿みせないとね? 及川さん?』
挑発するように言うと徹はスッと目を静かに滾らせた。バレーやってるときみたいに。
「覚悟は高校生三年生のときに全部背負いましたので大丈夫です。18歳であの決意した私偉すぎだなぁ」
おどけるように言うと徹はふっと息を吐いて頬を寄せてきた。
「ナマエが男前で助かった」
「あの男、しょーもなくなったら捨ててやるって思ってたからね」
「初耳なんですけど!?」
嘆く徹にちゅ、と頬にキスをする。徹はむむ、と口を結んでいたけど「でもそうならないって信じてたから」と言うと頬を緩めた。
「ナマエ、愛してる。生まれてきてくれる子と一緒にずっと守るから」
「私も愛してるよ。お願いします旦那さま?」
笑いながらキスをする。子供が生まれてもこうやってキスする夫婦でいたいな。そう願ってお腹を優しく撫でた。
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