○○シリーズ
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愛をくださいの黒尾の続き
*********
癒し度100点を貰ったわけだが。
スマホを見返す。相変わらず嘆きながらも元気なナマエ。最近黒尾の彼女になったナマエ。そんなナマエにだいたい振り回されているが、ラインでは画面上という距離が出来るからか、黒尾のペースで気持ちを伝えられていい。俗に言う彼氏っぽい言動が出来ていると思う。しかしこんな思考になる時点で自然と“彼氏”にはなれていないのだ。
ナマエは人としての好きを返してくれてる。黒尾のことを恋愛として好きになろうとしてくれている。それがどんなに嬉しいことか片想いだった自分に伝えてやりたい。そう思うのに欲深い今の自分は「もっと」と言ってくる。黒尾だけのナマエがいいと、ナマエだけの黒尾であってほしいと思ってしまうのだ。
「あー……欲張りになってるわ」
恋ってわがままだな。
そう思いつつスマホ画面を落として課題に手をつけ始めた。
そして翌日。ナマエはご機嫌だった。鼻歌混じりにマネ業をやってるので「ご機嫌だねぇ」と言うと「鉄朗が大好きって言ってくれたから!」とカウンターを食らった。素直は時に人を攻撃できると知った。自分の言葉にただ喜ぶナマエが可愛くて触れようとして自制する。ナマエは初彼氏に喜ぶ子ども。びっくりさせてはいけない。ナマエの気持ちに合わせて歩いていかないと逃げられてしまう。もう黒尾は恋人同士という最強の関係を手放すことは出来ないのだから。慎重にしなくてはいけない。
そんな風に思っていたのにナマエとさっそく二人きりになった。消耗品の購入や部員の調子など定期的に主将とマネとで話し合う日がある。それがちょうど来た。タイミング……と苦い思いをする黒尾を知る由もなく、ナマエはご機嫌に部活の話をしている。あー可愛い。黒尾が合間合間にそう思ってることなんか分かってないナマエに「じゃあ次のオフに買い出し行きますか」と軽い口調で言うとなぜかナマエが固まった。
「名字?」
「……デートだ」
「デートだ?」
「初デート! 鉄朗と! やった!」
ナマエは楽しそうに笑った。
買い出しなんて初めてじゃないのに楽しそうで可愛いという気持ちと、これだけで喜んでくれる可愛い彼女という気持ちが合わさって、心が堪らなくなった。向かい合って話し合ってたのに気づいたら隣に行ってナマエの頬を包んで上を向かせていた。ナマエの唇を自分のもので塞ぐ。柔らかい、愛おしい、好きだ。思考が一色になって唇を離したのはしばらく経ってからだった。
「あ」
「………」
そして頬を染めるナマエにハッとした。やってしまったと。ナマエに合わせると決めて早々にやらかした。内心冷や汗が止まらなかったが、キスして狼狽を見せるのは格好悪すぎるので必死に押さえた。
ナマエは唇を指で触って視線を黒尾に向けた。自然と上目遣いになるそれにうっ、となりながら言葉を待っていたらナマエはふにゃりと笑った。
「ちゅーしちゃった」
えへへ、と照れくさそうに笑うナマエに心臓が壊されるかと思った。何でこの子の魅力伝わってないの? いや、俺だけでいいんだけど。だってこんなに可愛いって知られたらモテて仕方ない。脳みそをフル回転させながら「ちゅーしたね」と余裕そうに返した。格好いい彼氏でいたいので。
「私からもちゅーしていい?」
そしたら余裕をぶん殴ってくるような展開がきた。これだからこの子は読めない。
「……いいですよ?」
「ふふ、やった」
かろうじて返した言葉に機嫌よくナマエは近づいてくる。膝立ちになって黒尾の両肩に手を置いて顔が近づいてくる。え? 俺は目瞑ったほうがいいの? と考えながら結局目はそのままで。ナマエの姿が見たかったというのもある。ナマエは頬を染めつつも顔を傾けた。
コツン。
そんな音がして鼻と鼻がぶつかった。キスに失敗したナマエは眉を寄せている。
「むー鼻邪魔ー」
「邪魔と言われましても」
「ちゅー難しい」
ちょっとしょんぼりしてるのが可愛くて黒尾の方から顔を傾けてまたキスをしていた。だって可愛い。黒尾とキスをしたがってるナマエは可愛い。重ねた顔を少し離すとナマエはえいっと言って今度は鼻に当てずに黒尾にキスしてくれた。唇を当てるだけのただのキス。それなのに幸せで仕方なかった。好きが溢れてくるようだった。
「鼻で息するのに緊張するのはじめて。でもちゅー好き」
唇を離してそんなことを言う。くそ、誘い上手だなと内心またしたくなったが我慢した。節操がないと思われるのは嫌だった。そしてキスの多幸感に満ちて零れる本音。ゆっくり歩んでいこうと思って口にしないようにしていた言葉。
「俺のこと好きになった?」
格好悪い言葉だと思った。まるで強請るかのようで。ナマエは黒尾の言葉に目をぱちぱちさせて口を開いた。
「好きの色とか定義はまだ分からないけど」
「……うん」
落ち込むな。そう心を慰めていたらナマエはふんわり笑った。
「鉄朗といると楽しくて、ドキドキして、幸せが溢れてくるの。鉄朗のこと笑わせたいし、幸せになってくれたら嬉しいって思っちゃう。毎日楽しくてハッピー!」
「……名字」
「うん?」
「好きの定義も色も人それぞれだけど、もうそれって俺のことが好きって言ってるように聞こえる」
「……まじですか」
「まじですよ」
幸せを願ってくれるなんてそれはもうすでに愛の形をしているだろう。驕りもなにもなくそう思った。ナマエは黒尾の言葉に驚いて、目を瞬いて、笑った。
「やっぱり鉄朗のこと好きになった」
幸せそうに言うものだから腕が勝手に伸びてナマエを身体のなかにしまい込んだ。小さくて柔らかくて温かい存在に、少し泣きそうになった。ナマエは黒尾の胸にすり寄ってくる。
「ハグも好きー」
「俺も好き。……ナマエが大好き」
「! ふふ、初の名前呼びだ。いっぱい呼んでね?」
「うん。……うん、ナマエ」
「なあに?」
「ずっと大事にするから側にいて」
心からの懇願にナマエは「もちろんです」と堂々と力強く返してくれて、それが嬉しくて腕の力が勝手にこもった。ナマエはその力強さに笑いながら「強いよー」と言って黒尾に抱きついてきた。
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癒し度100点を貰ったわけだが。
スマホを見返す。相変わらず嘆きながらも元気なナマエ。最近黒尾の彼女になったナマエ。そんなナマエにだいたい振り回されているが、ラインでは画面上という距離が出来るからか、黒尾のペースで気持ちを伝えられていい。俗に言う彼氏っぽい言動が出来ていると思う。しかしこんな思考になる時点で自然と“彼氏”にはなれていないのだ。
ナマエは人としての好きを返してくれてる。黒尾のことを恋愛として好きになろうとしてくれている。それがどんなに嬉しいことか片想いだった自分に伝えてやりたい。そう思うのに欲深い今の自分は「もっと」と言ってくる。黒尾だけのナマエがいいと、ナマエだけの黒尾であってほしいと思ってしまうのだ。
「あー……欲張りになってるわ」
恋ってわがままだな。
そう思いつつスマホ画面を落として課題に手をつけ始めた。
そして翌日。ナマエはご機嫌だった。鼻歌混じりにマネ業をやってるので「ご機嫌だねぇ」と言うと「鉄朗が大好きって言ってくれたから!」とカウンターを食らった。素直は時に人を攻撃できると知った。自分の言葉にただ喜ぶナマエが可愛くて触れようとして自制する。ナマエは初彼氏に喜ぶ子ども。びっくりさせてはいけない。ナマエの気持ちに合わせて歩いていかないと逃げられてしまう。もう黒尾は恋人同士という最強の関係を手放すことは出来ないのだから。慎重にしなくてはいけない。
そんな風に思っていたのにナマエとさっそく二人きりになった。消耗品の購入や部員の調子など定期的に主将とマネとで話し合う日がある。それがちょうど来た。タイミング……と苦い思いをする黒尾を知る由もなく、ナマエはご機嫌に部活の話をしている。あー可愛い。黒尾が合間合間にそう思ってることなんか分かってないナマエに「じゃあ次のオフに買い出し行きますか」と軽い口調で言うとなぜかナマエが固まった。
「名字?」
「……デートだ」
「デートだ?」
「初デート! 鉄朗と! やった!」
ナマエは楽しそうに笑った。
買い出しなんて初めてじゃないのに楽しそうで可愛いという気持ちと、これだけで喜んでくれる可愛い彼女という気持ちが合わさって、心が堪らなくなった。向かい合って話し合ってたのに気づいたら隣に行ってナマエの頬を包んで上を向かせていた。ナマエの唇を自分のもので塞ぐ。柔らかい、愛おしい、好きだ。思考が一色になって唇を離したのはしばらく経ってからだった。
「あ」
「………」
そして頬を染めるナマエにハッとした。やってしまったと。ナマエに合わせると決めて早々にやらかした。内心冷や汗が止まらなかったが、キスして狼狽を見せるのは格好悪すぎるので必死に押さえた。
ナマエは唇を指で触って視線を黒尾に向けた。自然と上目遣いになるそれにうっ、となりながら言葉を待っていたらナマエはふにゃりと笑った。
「ちゅーしちゃった」
えへへ、と照れくさそうに笑うナマエに心臓が壊されるかと思った。何でこの子の魅力伝わってないの? いや、俺だけでいいんだけど。だってこんなに可愛いって知られたらモテて仕方ない。脳みそをフル回転させながら「ちゅーしたね」と余裕そうに返した。格好いい彼氏でいたいので。
「私からもちゅーしていい?」
そしたら余裕をぶん殴ってくるような展開がきた。これだからこの子は読めない。
「……いいですよ?」
「ふふ、やった」
かろうじて返した言葉に機嫌よくナマエは近づいてくる。膝立ちになって黒尾の両肩に手を置いて顔が近づいてくる。え? 俺は目瞑ったほうがいいの? と考えながら結局目はそのままで。ナマエの姿が見たかったというのもある。ナマエは頬を染めつつも顔を傾けた。
コツン。
そんな音がして鼻と鼻がぶつかった。キスに失敗したナマエは眉を寄せている。
「むー鼻邪魔ー」
「邪魔と言われましても」
「ちゅー難しい」
ちょっとしょんぼりしてるのが可愛くて黒尾の方から顔を傾けてまたキスをしていた。だって可愛い。黒尾とキスをしたがってるナマエは可愛い。重ねた顔を少し離すとナマエはえいっと言って今度は鼻に当てずに黒尾にキスしてくれた。唇を当てるだけのただのキス。それなのに幸せで仕方なかった。好きが溢れてくるようだった。
「鼻で息するのに緊張するのはじめて。でもちゅー好き」
唇を離してそんなことを言う。くそ、誘い上手だなと内心またしたくなったが我慢した。節操がないと思われるのは嫌だった。そしてキスの多幸感に満ちて零れる本音。ゆっくり歩んでいこうと思って口にしないようにしていた言葉。
「俺のこと好きになった?」
格好悪い言葉だと思った。まるで強請るかのようで。ナマエは黒尾の言葉に目をぱちぱちさせて口を開いた。
「好きの色とか定義はまだ分からないけど」
「……うん」
落ち込むな。そう心を慰めていたらナマエはふんわり笑った。
「鉄朗といると楽しくて、ドキドキして、幸せが溢れてくるの。鉄朗のこと笑わせたいし、幸せになってくれたら嬉しいって思っちゃう。毎日楽しくてハッピー!」
「……名字」
「うん?」
「好きの定義も色も人それぞれだけど、もうそれって俺のことが好きって言ってるように聞こえる」
「……まじですか」
「まじですよ」
幸せを願ってくれるなんてそれはもうすでに愛の形をしているだろう。驕りもなにもなくそう思った。ナマエは黒尾の言葉に驚いて、目を瞬いて、笑った。
「やっぱり鉄朗のこと好きになった」
幸せそうに言うものだから腕が勝手に伸びてナマエを身体のなかにしまい込んだ。小さくて柔らかくて温かい存在に、少し泣きそうになった。ナマエは黒尾の胸にすり寄ってくる。
「ハグも好きー」
「俺も好き。……ナマエが大好き」
「! ふふ、初の名前呼びだ。いっぱい呼んでね?」
「うん。……うん、ナマエ」
「なあに?」
「ずっと大事にするから側にいて」
心からの懇願にナマエは「もちろんです」と堂々と力強く返してくれて、それが嬉しくて腕の力が勝手にこもった。ナマエはその力強さに笑いながら「強いよー」と言って黒尾に抱きついてきた。