○○シリーズ
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北に告白? された。中学のときから好きだったって。あのあとスタンプ連打したけど北は本当に寝たらしく、返事は朝返ってきた。「スタンプ連打すんなや」と。それだけだった。え? 誰のせいですか? って思った。
そして何事もなく始まった朝練。北ともちゃんと顔を合わせたけど「おまえちゃんと寝とらんやろ。クマ出来とるで」と体調管理ちゃんとせえと注意された。え? 誰のせいですか? って思った。素直にすみませんって謝ったけど。
そして「ありがとうございましたー!」と何事もなく終わった朝練。北とは「授業中寝るんやないで。それで体調悪くなったら保健室行き」と厳しいのか優しいのか分からない言葉をもらった。困惑しながらありがとうございますと言うと「なんで敬語やねん」と言われた。誰のせいですか? って思った。
三年生の面々と教室に行く。北は大耳達七組の面々と教室に入っていった。いつもと全く変わらない様子で。それと分かれて六組の前についたところで足を止めた。
「なんでじゃこらー!」
「!?」
「なんやねん急に!」
私の近くにいた赤木は肩をびくっとさせ、アランは全力で突っ込んできた。他の三年生達は「また名字が騒いどる」とスルーして自分のクラスに入っていった。おまえら顔覚えたからな。律儀なツッコミ役&同クラアランはともかく、赤木もその波に流れて六組に入ろうとしてたので肩を右手でガシッと掴んで左手でアランを掴んだ。
「なんやねんもう……」
「どないしたんや」
「私たちは友達」
「せやな」
「赤木くん私たちは友達」
「はい友達です」
言わされた感満載の赤木だけど言質はとれた。というか三年間の付き合いで友達じゃないと言われたら全力で泣いてやる。そう思いつつ、しゃがんでしゃがんでと言って三人でしゃがむ。そして私のスマホを出した。昨日のラインを見せる。
「おまえこれ俺らに見せたらあかんのやないか!?」
「堂々と見せたな」
「これを見せないと始まらない」
アランは「北、名字のこと好きやったんか……!」とドキドキした顔してて「信介……」と赤木は悲壮な顔をした。それどういう意味の顔かね赤木くん。
「昨日の今日。どうなると思いますかアランくん」
「そりゃあお互いにドキドキして顔見られへん状態やろ」
「信介やで? アラン」
「…………」
「その無言が全てを物語ってるんですよ。北信介は恋愛でも北信介でしたよ」
けっ、と吐き捨てた私に「名字も名字やけどな」と赤木は言った。
「私は眠れなかったしドキドキワクワクしながら学校来ましたよ。そしたら北はいつも通り北信介やりやがったの!」
「北信介を動詞にすんなや。まあ名字の気持ちも分かるけどな」
「赤木……」
「信介の趣味はよう分からんけど」
「赤木てめー」
「殴ったらあかんで!?」
アランに止められたのでとりあえず拳を下ろして話し合い状態に戻る。
「恋愛は惚れられた方が優位に立てるっておばーちゃんが言ってた」
「一理あるけどすごいばぁちゃんやな」
「だけど私だけが一喜一憂して優位に立ってる気がしない」
「北やからなぁ」
「そもそも名字は優位に立ちたいんか?」
赤木の言葉に瞬きする。優位に立ちたい。……それはなんか違うなぁ。背中を丸める。膝の上に乗せた両腕にあごを置く。
「告白もどきされてさ、」
「うん」
「ドキドキしてさ、」
「おう」
「緊張しながら部活きたのに北のやつ、いつも通りなんだもん。なんだよー期待した私が悪いのかよー」
「期待しとったんか?」
「するでしょ普通。北とそういう関係になったらどうなるのかなとかいっぱい考えたもん」
「おまえ俺のことそう言う目で見れたんか?」
「見れなかったらドキドキしないって話ですよ」
「俺はおまえのことをそう言う目で見たら困るんやと思っとったわ」
「勝手に人の気持ち決めるなー」
「そら悪かったわ。すまんかった」
「いいよー」
「名字、名字」
「なにアラン」
「後ろ! 後ろ!」
志村後ろみたいなこと言うじゃん……と思いつつ振り返るとそこには北がいた。……北がいた?
「ふぎゃあああ!?」
「俺は化け物んちゃうぞ」
「今北のことで相談してるんで立ち去ってくれますか!?」
「よお逆ギレできるな。どういう精神構造しとんねん。信介、あとは二人で話し」
「せやな。名字、先クラス戻っとくで」
「赤木くん、アランくん行かないで」
二人から無視された。友達って言ったのに!
二人の友情を疑っているとアランのいた場所に北が座り込んだ。これ長く話す体勢になってませんか。
「……教室入ったのに何でいるの」
「六組の前で大声で話しとったら気づくわ。隣のクラスやで。なにが北信介やりやがったやねん。勝手に動詞にすな」
「めちゃくちゃ最初のほうじゃん……」
「おまえ俺のこと恋愛の意味で好きちゃうやろ」
すごい直球でぶっこんできたこの人。こういうところあるのが北信介。そう思いながら身体をもぞもぞさせて口を開く。
「昨日の夜まではそうだったけどさ」
「今は違うんか」
「単純で悪かったな」
顔をぷいっとする。北が悪い。だって北はいいやつだ。人に厳しくできるぐらい自分に厳しくできて、それで優しさも忘れないような人間だ。もともと良いところたくさん知ってるんだもん。中学からのつき合いなんだから。好意を示されたら困る人間だっているかもしれないけど、私はただ嬉しいだけだった。
「北と比べたらたった半日も経ってないくらいの気持ちだけど、好意を見せてくれたからなびいた気持ちだけど、」
「うん」
「好きって言っちゃだめなの」
「駄目なわけないやろ」
ぽんぽんと頭を撫でられた。顔を上げる。北は笑っていた。それに胸が高鳴りつつ口をぎゅっとして話しかける。
「……彼女にしてくれる?」
「おまえが俺でええって言ってくれるなら」
「北がいいの」
「そうか」
北の手が離れたのが寂しくて私から繋ぐ。なんか私ばっかりとしょげてたらスルリと指が絡まった。びっくりしたけどやっぱり北は平静そうな顔で話し出す。
「振られる気でおったけど何があるか分からんなぁ」
「……振られる気の男にも見えませんでしたけど」
「好きな女の前で狼狽えとったらカッコ悪いやろ」
「!」
明確な好意の言葉に顔が熱くなる。好きな女。北の好きな女は私。それがちゃんと分かって嬉しくて繋いだ手をぎゅっとした。北もぎゅっとしてくれた。たったそれだけで幸せな気持ちになるこの感情を大事にしたいなと思った。
「北、好き」
「俺も好きや」
そして忘れていたのだけどここは六組の廊下前。北はうるさいからここに来たと言っていた。つまり五~七組まで私たちの会話はモロバレだったということで。途端に「おおおー!!!」とわいた同級生たちに頭を抱えるまであと数秒。