○○シリーズ
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「北さんにエロ本見つかったって体で見せました」
「ほう。で?」
「そしたら真顔で「学校に持ってくんな」って帰りまで没収されました」
正座している侑にげんこつを落とす。侑は「ゴリラやん! ナマエさん!」と頭を押さえてる。もう一発いったろか、と拳を構えると「こんな天使みたことあらへん」と分かりやすいお世辞を言ってきた。ここでやめたら自分のこと天使と思ってるみたいだからデコピンで終わらせた。
後ろの治に視線をやる。
「なんで止めなかったの」
「止まるわけないでしょ」
「まあ確かに。じゃあ治は無罪」
「サムだけなんでなん!? 俺は!?」
「しばらく許さない」
ことの発端は双子を学校で見かけたときのことだった。話しかけようとして聞こえてきた会話は。
『北さんエロ本みても何も反応せんかったやんけ。わざわざ仕込んだのに』
『何でわざわざ怒られに行くねんアホか』
『ナマエさんに似た女探したんやで? 俺の苦労一切報われんかったわぁ』
『無駄な努力しおってからに』
『おい双子。説明しろ』
手をのばして首根っこを掴んで捕獲した。そしてとりあえずあのえっちな本を用意したという侑だけ正座させて経緯を説明させたというわけだ。
「あんた信介を困らせ……いや困ってなかったけど、面倒かけるんじゃないの」
「でもナマエさん」
「なによ」
「北さんがどんな女に目ぇいくか気になりません?」
「……………」
「気になるやろ?」
ニヤリと笑った侑に再び拳を見せて黙らせた。見た目関係なく好きになったと言ってもらえたのだ。その言葉を大事にしたい。……まぁ気にならないといったら嘘になるけど。出来れば好きなタイプに寄せて更に好きになってほしいとか思ってるけど。
そんなことを考えてたせいか授業が上の空で終わってしまった。侑に感化されすぎである。……私の好きになった中身ってどこだろう。また今度って言われたけど。
コツン
おでこを軽く叩かれた。視線をあげると信介がいた。
「おまえ授業聞いてへんやったやろ」
「信介」
「受験するんやから油断せんときや」
「信介さん」
「なんや」
「私の好きなところ教えてください」
信介は目をパチパチと瞬いた。さすがに突拍子がなかったらしい。なんでこのタイミングやねんって顔してる。
「それ考えてたら授業のこと吹き飛んでました」
「受験生なのに舐めとるなおまえ」
圧を感じる。絶対怒られると思ったけど知りたいんだから仕方ない。堂々と開き直っていたら信介は呆れたように息をついた。すみませんね。こんな彼女で。
「言わな分からんか?」
「うっ……それを言われたら罪悪感が……でも聞きたいのが彼女心なんです」
「…………」
「…………」
にらめっこが続く。この無表情に勝てるとは思わないけども。ジーッと見られる。ジーッと見返す。「あいつら何やっとるんや?」という大耳の言葉が届いたけど視線を逸らしたら負けだから無視した。
「……これと決めたら絶対に譲らん意志の強いところ」
「!」
「なんか今の状況やなあ」
気の抜けたように笑う信介。笑った信介が。この笑顔はSSRいける。SSR引いた。とアホなこと思ってたら「おまえは?」と聞かれる。
「へ?」
「フェアちゃうやろ」
「確かに。……一歩一歩努力できるところ、自分に正直で嘘つかないところ、相手のこと冷静にみて公平なところ、厳しいけど優しいところ、私に厳しくも言うけど甘やかしてくれるとこ、家族大事にしてるところ、仲間を大事にしてるところ、」
「もうええ」
「あと40はいける」
「もうええ」
信介ははーっと息を吐いて私の頭に手をやってぐしゃりと撫でた。なんだなんだ。疑問符を飛ばしていると信介は少し困ったように口を開いた。
「俺はおまえのこと一生好きなんやろうな」
「…………」
「先に惚れた方が負けて言うたやつすごいわ」
「……初耳ですが? え? 私のが先じゃない?」
「俺は一年の夏からやぞ」
「!?」
めっちゃ前! 私は二年の春だ。え? え? 全然そんな気配ありませんでしたけど? というか一生好きって言った?
「プロポーズされた……? やったぜ……?」
「それは別でちゃんとするわ」
「……信介さん、今日は大盤振る舞いでは?」
「聞きたいのが彼女心なんやろ?」
「~~っ、信介好きっ!」
「知っとる」
立ち上がって抱きつこうとしたらさっと避けられてブーブー文句言ったら「人前でするもんやないやろ」と安定の正論パンチを食らった。ごもっとも。でもくっつきたい気持ちは消えないので小指だけ繋いだ。これは許容範囲内でしょう。伊達に信介の彼女やってない。どや、と見たら信介はふ、と笑って、
「おまえは仕方ないやつやなあ」
繋いだ小指をきゅっとしてくれた。