○○シリーズ
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みんなにバレてると言われてきょろきょろしてみると、仲のいい友達と目があって親指を立てられた。バレてるー! 顔を机に引っ付けて恥ずかしさを緩和させようとしてるけどなかなか上手くいかない。顔が熱い。そ、それに……
『我慢できないから慣れて』
角名くんのラインに更に熱量が上がった気がする。あの冷静な角名くんが我慢できないって……うぅ、色んな思いがぐちゃぐちゃになって顔を両手でおおった。
「おい、窓際の一番後ろの席の名字。何か探してると思ったら顔伏せて首振って元気やなあ。これ解いてもらおか」
「……はっ」
「“はっ”ちゃうねん。授業中じゃ」
すっかり忘れてた。頭をえへへとかいていると「忘れてたーやないねん!」と先生に突っ込まれてクラスメート達に笑われた。ホワイトボードまで来てペンを持って数式の前に立つ。……何も頭に入ってこない。
「お助けマンチャンスありますか?」
「諦め早いねん。一人だけな」
「やった! じゃあ角名く、…………」
いつもどおり角名くんの方をみてばっちり目があった。途端にぶわわと顔が熱くなった。
『ナマエ』
『うんー?』
振り返ったら唇が重なっていた。昼休み、中庭でおしゃべりしているときのことだった。角名くんは静かに顔を戻してふ、と笑った。
『顔、真っ赤』
からかわれるように頬を撫でられた。
それを思い出した。
「……の隣の山家くん!」
「はあ!? なんで俺やねん! アホがアホに助け求めても何も生まれんやろ! いつも通り角名に助けてもらえや!」
「山家アホやからナマエの今の複雑な機微分からへんやろうなあ」
「なんで俺は藤に罵倒されてんねん!」
「山家の横の藤ちゃんが助けてあげましょ。可愛い可愛いナマエちゃん」
藤ちゃんがやってきて頭よしよしされて数式を解いてくれた。山家くん以外は概ねうんうん、って顔してた。治くんは「あほ」と口パクで言ってきて、角名くんははぁとため息ついてた。ごめんなさい。
****
「ナマエ」
「ひょっ」
「ひょって」
少し噴き出した角名くんは数学のときの呆れた雰囲気はなかった。それに安心しつつ「顔をみたら恥ずかしいので首元を見よう作戦」を実行する。残りの数学の時間で考えた起死回生の作戦だ。ネクタイを凝視する。うん、行ける気がする。
「ナマエ? 目合わないけど?」
「う゛っ」
そしたら角名くんが屈んで私と視線を合わせてきた。作戦失敗するの早すぎる。
「首元みてその場しのぎようとしたでしょ」
しかもバレてる。ぎゅっと目をつむってコクンと頷く。もう自分が恥ずかしい。なんでこんなにちゃんと出来ないの。
「ほら、目合わせて」
「うううー」
「慣れないとダメでしょ。これからもずっと一緒にいるんだから」
パチリと目を開ける。今すごい嬉しいこと言ってくれた気がする。顔をあげて角名くんを見たけど角名くんはいつも通りの涼しい顔をしていた。……幻聴? 角名くん好きすぎてその域まで来てしまった? ……ふと思ったけど私の今の態度って角名くんが嫌で避けてるみたいだ。嫌われたって勘違いさせちゃうんじゃ……! と急に焦ってきて角名くんの袖をぎゅっとする。
「うん? どうしたの」
「角名くんが好きです」
「知ってるけど?」
「好きで、好きすぎて……き、キスも嬉しくて、私は幸せものです。一緒にいるだけで嬉しくて、楽しくて、もっと好きってなります。こんなに好きになった人はじめてです。角名くんが大好き」
伝わったかな……? とおそるおそる見てみると角名くんは口元に手の甲をやって「あーもう。なんでも素直なんだから」とぼやいていた。
「私が角名くん嫌じゃないって分かってくれた?」
「分かった分かった。というかそんなこと思ってもないから。山家以外のクラスメート全員がそう思ってるから」
「えっ」
それはモロバレというやつでは……と目を瞬いていると角名くんは私の席の回りにだけ囲むようにカーテンを引っ張り出した。うん? と首を傾げてると頬を大きな手で包まれた。
「我慢できないからって言っておいたからね」
そう言って柔らかいものが唇に当たった。目の前には大好きな角名くんが至近距離で目をつむっている。
ちゅ、と音が鳴って離された。
「…………」
「二回目がこんなにすぐに来るとはさすがに思ってなかった」
角名くんはやっぱり涼しい顔でカーテンを戻していた。
「ナマエ? 目開けて魂飛んでない?」
「…………角名くん」
「なに」
「キスって幸せのさらに先に飛ばされるすごいものです」
「それはよかったです」
でもやっぱり恥ずかしい!
ゴツンと机に額を乗せてうーうー言う私の頭を角名くんは「はいはいがんばったね」と次の授業が始まるまで撫でてくれていた。