○○シリーズ
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「クロ、部誌に書いてたことだけど……」
「あ、ハイ」
「…………」
「なぁに? ナマエ」
部室で二人きり。それなのにクロは私に視線を向けているようで目が合っていない。どこ見てるのこの人。むむ、と思って一歩前に進むとクロは素早く二歩下がった。……。二歩縮める。二歩下がる。二歩縮める。二歩下がる。しばらく繰り返してクロは壁に背中が当たってしまった、という顔をした。
「避けてるでしょ!?」
「避けてません」
「何で敬語使うの!」
「ナマエさんの勢いがすごいからです」
私の頭の上に視線をやるクロにTシャツの首元をがつっと掴んで顔を屈めさせた。
「ちゃんと目をみて話しなさい!」
「ちょ、近い……」
途端に少し頬を染めたクロに何で今更? と思ったけど、あのラインを思い出した。初ちゅー舌入れ事件。そういえばあれから二人きりになったのは初めてだ。……なるほど。
「初ちゅーのことまだ気にしてるんでしょ」
「ド直球やめてください」
落ち込んだ声色になったクロに頭を傾げる。もうラインで話して私は許してるし、そもそもクロがしたことは私が好きだからって大前提があってのことだ。びっくりしただけで嫌なわけじゃない。そう言った。それなのにまだクロは気にしている。……かっこつけなとこあるからな。失敗したって思ってるのかもしれない。クロじゃなくても男の人ってそういうの気にしそうだし。なんとなく。
「クロ」
「なに……」
ちゅ、と背伸びして頬にキスした。クロを見上げると恥ずかしそうに頬が赤くなっていた。
「したいときにしていいよ? 私もそうするから」
「ちょっと、それはまたやらかしそうなので」
「べろちゅーは段階を踏んでゆっくりしようね」
「なんでナマエさんけっこうノリノリなの!?」
「クロが好きだから」
そう言うとクロは「あー……もう」と頭をかいてから私の身体に長い腕を回した。そのまま身を任せる。あったかくて大きくてドキドキして、世界一安心できる場所。胸に頬を寄せる。クロの心臓はドクドク、と早く高鳴っていた。
「男前すぎナマエさん」
「嫌いですか?」
「好きですよ?」
目を合わせてクスリと笑いあう。クロが気にしてるならもっと早く話せばよかったな。
「クロ。ふたりの問題なんだから抱え込んじゃダメだよ?」
「男の面子というのがありましてね」
「かっこつけだなぁ」
「好きな子にかっこつけるのは万国共通な事柄ですので」
「……確かに私もクロに一番可愛いって思っててほしいもの。なるほどこんな気持ちかぁ」
「さらっと可愛いコト言わないの」
おでこにちゅ、とされる。さらりとされたので反応が遅れた。目を瞬く。
「これは嫌?」
「……嫌じゃない」
「じゃあ次はココ」
まぶたにちゅ、とされる。離されてジッと見つめていると鼻にちゅ、とされておでこ同士をすりすりと擦り付けられた。
「ナマエすごくいい匂いするんですけど」
「んー? 部活後だから汗かいたよ? 制汗剤の匂いじゃない?」
「これはナマエの匂い……変態くさくないですか?」
「気にしいになったなー。思いません」
クスクス笑うと罰が悪そうな顔になるクロ。大きな身体してるのに少年みたいに可愛くみえて、でも私だけのクロにしたくて。クロの大きな手をとって手のひらに唇を落とした。
「……なんかえっちなんですけど?」
「手のひらのキスの意味、雑誌で読んだの」
「なに?」
「懇願だって」
「……いいようにとるけど?」
「どうぞ?」
目をつむって顔を上げる。少ししてクロの大きな手で頬を包まれた。クロの近づく気配がして柔らかいものが口に触れた。それが嬉しくて私からもふんわり唇を当てる。クロは一瞬固まったけどクロからも同じようにふんわり当ててくれる。お互いの唇の柔らかさを確かめるようにゆっくりキスをした。
「ん、クロ……」
目を開けてクロを見つめる。クロは優しい目で私を見ていた。それが幸せで顔が勝手にほころぶ。
「なんか、息するタイミングがけっこう大変」
「これから慣れていけばいいよ」
「クロだって慣れてないのに結構余裕そうな顔」
「……」
「なんか隠し事してる顔になった」
「……」
「吐きなさい」
「……初ちゅー失敗したので勉強しました」
ふてくされたようにぎゅっとされて笑いがこぼれる。可愛い。私のクロが可愛い。
「そんなクロが好きだよ」
「……うん」
「ありがとう。嬉しいよ?」
「……かっこ悪くない?」
「私のためにしてくれることは全部嬉しいの」
首に手を回して屈んでとお願いする。屈んでくれたので頬にちゅ、とした。
「大好きクロ」
「俺も大好き」
クロも頬にキスしてくれた。幸せがにじみ出てくるようで、しばらく緩む顔が止まることはなかった。