○○シリーズ
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「ナマエさん」
「なんですか」
「本は捨てました」
「本ってなんですか?」
ナマエはにっこり笑った。可愛い。いつも通り可愛い。だけど背筋に汗が垂れるような圧を感じた。まだ怒っている。今のズリネタを告白して有耶無耶になったと思ったが甘かった。ナマエの怒りは根深い。逆に怒らせた疑惑まである。それはそうかと思う。あのえっちな本はなかなか際どいところまで写っていた。水に濡れた肌と水着。うっすら浮かぶ胸の中心。はみ出た尻肉。前屈みになって出来た大きな谷間に物を挟んだりとそれはもう以前は世話になったのだ。ナマエには絶対言えないが。というか察してるから怒っているのだろうが。
ナマエのそういうのは何なのだろうかとふと思っていや、そう言うの考えるのは無しだろと思考をシャットダウンさせる。バレたら火に油どころじゃない。
「ナマエさーん……」
「なーに黒尾くん」
いつもみたいに可愛く鉄朗と呼んでくれもしない。まて、これでギクシャクして別れるとかないよな? 黒尾は焦った。ナマエの二の腕を掴んだ。
「ナマエっ」
「黒尾くん」
「は、はい」
「中学生のとき女の子の胸と二の腕の柔さが一緒って盛り上がってたの知ってるんだよ?」
「!?」
バッ! と離した。セクハラ野郎とナマエの目が言っていた。まって? 中学から好きなのにそんな会話聞かれてたの? よくつき合えたな俺? ぐるぐる思考を巡らせる。
どうやったら機嫌をなおしてくれるのか。中学から片想いしてなんとかつき合えたというのに。こんなことで終わってたまるものか。
「ナマエだけです」
「んー?」
「女の子の身体を見るのはもうナマエだけです」
「ほうほう。じゃあAVは所持していないと言うのですね」
「…………」
「所持していないと言うのですね?」
もっと際どい話題で殴られるとは思っていなかった。そして正直者と自分を罵った。おかしい。どちらかと言うと自分は人をおちょくる側だと言うのに。黒尾の可愛い子の前ではこれである。
「それもロングの巨乳ですか?」
「…………」
「黒尾くんの好みは変わらないんですねー」
「…………」
「いいじゃないですか。好きな物があるって」
「…………」
「男の人は大変ですね」
では、と笑顔で分かれようとしたのがわかって反射的に腕の中に閉じ込めた。暴れられると思ったけどナマエはおとなしかった。……これは腹を括るしかない。
「ナマエ」
「……なあに?」
「中学のときから好きだ」
「知っています」
「……だから、ですね」
「うん」
「ナマエに似てたから」
「うん?」
そこでナマエは黒尾の顔を見た。気まずかったがちゃんと目を合わせた。
「あのえっちな本のモデルがナマエに似てたから片想いのときに買いました」
「…………」
「だから両想いになってからは本当に存在を忘れてて」
「…………」
「なので俺のそういう対象はずっとナマエです」
反応がなさすぎて怖くなってナマエの頭を抱え込んだ。何か言ってください。そう願っているとナマエの腕が黒尾の背中に回った。
「AVも?」
「…………」
「AVも?」
「………ナマエさん似です」
何を言わされてるんだと肩を落とした。かっこ悪い。ナマエの前ではいつだってかっこ良くみせたいのに真逆である。そう落ち込んでると胸の中で「ふふ、」と声が漏れた。
「鉄朗」
「!」
「目、みして?」
視線を合わせる。ナマエは……笑っていた。
「意地悪しすぎちゃった。ごめんなさい」
「え? ……え? は?」
「えっちな本、私に似てるって分かってたよ?」
「は? はあああ!? まじで?」
「うん。だから最初怒ったの。なんで私に似てる子のえっちな本買うの! って。表紙の写真も撮っちゃった」
「なにやってんの!?」
「それでラインした後にお兄ちゃんに酷くない!? って愚痴ったら「男はそんなもんだろ。つーかそれお前に似てるから買ったんじゃねーの?」って言われてもしかして……って思ったの」
コロコロ笑う可愛い子。打って変わってご機嫌である。
「ちょっと待ってクダサイ」
「待ちません。鉄朗くんは可愛いねってちょびっと思っちゃった。やきもちも妬いたけどね?」
両手を伸ばすのでいつも通り背を屈んでナマエに合わせると首の後ろに手が回った。
「もういらないよね? えっちな動画?」
耳元で囁かれる。唇が耳にかすめてくる。絶対わざとだと思った。……思ったが、黒尾はこの可愛い子には勝てないのである。
「……消します」
「いい子。……いい子だから今度サービスしようかな?」
「!」
素直に喉がごくりと鳴った黒尾をみてナマエはゆるりと笑って舌でぺろりと唇を舐めた。一生勝てないと悟った。