完結済み
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犬飼くんはボーダーでも私への気持ちを隠そうとはしなかった。二宮さんとシフト交代の話を二宮隊の作戦室でしていたときも「名字ちゃん可愛いね。今日も好きだよ」と紅茶を出しながら言ってきたし(二宮さんがすごい顔してた)、弓場さんや里見くんゾエさん達とランク戦をしていたときもやって来て「おれも混ぜて?」「いいよー」「名字ちゃんのことは愛してるけどランク戦は別ね」とさらりと言ったり(ナンパしてんじゃねェ犬飼ィ! と弓場さんが怒ってた)、オペ子ちゃん界隈にも何故か顔が広いらしく「犬飼先輩のこと応援してますから!」と何人かから声をかけられた。あはは……と力の抜けた笑いを返すしかなかった。……あれ、これ外堀を埋められてるのでは……? まさかの事実に震えていると廊下の前を歩いている黒のスーツ姿を発見する。
「鳩ちゃん!」
「……あ、名前ちゃん」
「相談があるのですが!」
「あたしでいいのなら……あっ、犬飼くんとつき合ってるんだよね。おめでとう」
「それなんですよね! 悩みって!!!」
やっぱり外堀埋めてた!
鳩ちゃんに事情を説明する。鳩ちゃんは口が固いから絶対に誰かに話したりしないという安心感があって、……えっちなこと事件も話してしまった。その事を話すとき鳩ちゃんも顔が赤かった。
「そ、そっか……」
「うん……」
「……内容はともかく、避けられたわけが知れて名前ちゃんはどう思ったの?」
「どう、思ったか……?」
「うん……結局のところそこが大事なんじゃないかな……って思って。嫌われてたんじゃなくて理由があったって結構違うと思うから……」
犬飼くんに避けられて。
気味が悪いと思われたと思った。嫌われたんだと思った。でも違っていた。……私が思ったことは……。
「ほっとした、かな。犬飼くんは私のサイドエフェクトのこと凄いね、って言ってくれる存在で、怖がらずに手を繋いでくれて、私が泣いてても側にいてくれて……家族以外で初めて優しくしてくれて、それで……私は……」
──ずっと一緒がいいなって思って。
私の小さな声は鳩ちゃんに届いていて。鳩ちゃんは優しく笑った。
「答え、出てたね」
「……うん。鳩ちゃんありがとう」
「いいんだよ。犬飼くんは対戦ブースに行くって行ってたよ」
「……緊張してきた」
「がんばって」
鳩ちゃんのエールにうん! と返して対戦ブースに早足で向かって行った。
***
「六頴館ってクラス替えないから三年になっても別のクラスなのがなー」
「おまえらが同じクラスだったら名字が過労死しそうだ」
犬飼くんは荒船くんとブースの観覧席に座って何か話している。ま、待っておこう。その間に緊張をほぐさせてもらおう。ひとりで深呼吸を続ける私に不審な目を向けるいた人もいたけど、今はそれどころじゃなく。そのときだった。犬飼くん達に真っ直ぐ近づく白い隊服の女の子が現れた。
「澄晴先輩~っ」
「またきみかぁ」
「また私です! 今日こそは弟子にしてもらいにきました!」
「しないって言ってるでしょ」
「若村先輩は射撃教わってるって!」
「あの子はあの子。きみはきみ」
「お母さんみたいなこと言って誤魔化さないでください!」
「一ミリも誤魔化してないんだけど、ね……」
ばちり。そんな音をたてて視線がかち合った。慌てて去ろうとすると犬飼くんから「名前ストップ!」と声がかかって反射的にピタリと止まる。それでも目から出てる涙は止めようと目をこする。でもとまらない。どうしようと思っていたところで犬飼くんが私の両腕を掴んだ。
「目こすらないの」
「だって、なんか、久しぶりに涙出て……とまらないの……」
「……中一ぶり?」
「……たぶん?」
そう言うと犬飼くんは「あー喜んでるのがみみっちい」と言って私の顔の前にぐいっと顔をやった。近くてドキドキする。泣き顔不細工だ。どうしよう。
「名前はおれの前じゃないと泣けなくなってるね」
「そんな、こと……」
「あるかも? って思ったでしょ?」
心当たりがありすぎて力なく頷いた。これは幼稚園のときからの習慣みたいなものだ。犬飼くんがいる場所は安全って頭に刷り込まれている。こんな弊害があるなんて聞いてない。
「泣かないのは身体に悪いよね。ますます一緒にいる理由できちゃった」
「め、面倒なんじゃ」
「喜ぶ一択でしょ。……で? 何で泣いちゃった? これは寂しくて泣いてるやつだと思うんだけど」
「……犬飼くんがあの子弟子にするってなって、す、好きになったらどうしようって」
「飛躍させましたねぇ。そもそも弟子にしないし。というか、名前さん?」
掴んでいた場所が腕から手に変わる。両手を大きな手で包まれる。
「もうこれおれの事が好きって言ってるようなもの何ですけど、そこのところどうでしょうか」
(好きって言って。お願いだから。ずっと大切にするから。おれには名前だけ。名前もそうであってほしい。好きって言って名前)
顔は飄々としているのに心の声は必死そのもので。繋がれた手は熱がこもっていた。手をゆっくり離すと犬飼くんは顔を歪めたけど両手を掴んで私の頬に当ててその上から手を包んだら、力の抜けたような顔をした。
「……好き……すみくんが好き……」
「うん。おれも好き」
(うん。おれも好き)
「わがままだと思うけど、ずっと一緒がいいの」
「そんなのわがままじゃないよ。おれも一緒がいい」
(可愛い。名前可愛い。絶対離さないから)
「……えっちな想像してもいいから、手を離さないでね?」
「えっ」
(普通にセックスしたいとか思うんですけどいいの? 手繋ぐとかハグだけじゃなくてイロイロしちゃうんだよ? エロいこと)
「うっ……! ゆ、ゆっくり……のんびり、なら……」
「言質とったからね」
(エロいこといっぱいしよ)
「ううぅ……」
(照れてる可愛い可愛い可愛いあー、ちゅーしていいかな? いいよね彼氏だし)
「人前ですっ!」
「人前じゃなかったなかったらオーケーってことね。2人っきりになれるとこ行こ」
(どこがいいかな。初めてのキスだし。屋上かな)
すみくんは手を繋ぎ返して観戦ブースから出て行く。荒船くんとあの子は!? と聞くと「屋上優先」と珍しく真顔で、でも心の中は(初めてのキスだから優しくしないとな。さすがに初っ端から舌入れたら名前倒れちゃうだろうし)とキス一色で、私は顔を赤くしながら手を引っ張られるしか出来なかった。それでも大きさの違った繋がった手は幸せそのもので。子供のときみたいに少し泣きそうになってしまった。
2024.04.27 完
「鳩ちゃん!」
「……あ、名前ちゃん」
「相談があるのですが!」
「あたしでいいのなら……あっ、犬飼くんとつき合ってるんだよね。おめでとう」
「それなんですよね! 悩みって!!!」
やっぱり外堀埋めてた!
鳩ちゃんに事情を説明する。鳩ちゃんは口が固いから絶対に誰かに話したりしないという安心感があって、……えっちなこと事件も話してしまった。その事を話すとき鳩ちゃんも顔が赤かった。
「そ、そっか……」
「うん……」
「……内容はともかく、避けられたわけが知れて名前ちゃんはどう思ったの?」
「どう、思ったか……?」
「うん……結局のところそこが大事なんじゃないかな……って思って。嫌われてたんじゃなくて理由があったって結構違うと思うから……」
犬飼くんに避けられて。
気味が悪いと思われたと思った。嫌われたんだと思った。でも違っていた。……私が思ったことは……。
「ほっとした、かな。犬飼くんは私のサイドエフェクトのこと凄いね、って言ってくれる存在で、怖がらずに手を繋いでくれて、私が泣いてても側にいてくれて……家族以外で初めて優しくしてくれて、それで……私は……」
──ずっと一緒がいいなって思って。
私の小さな声は鳩ちゃんに届いていて。鳩ちゃんは優しく笑った。
「答え、出てたね」
「……うん。鳩ちゃんありがとう」
「いいんだよ。犬飼くんは対戦ブースに行くって行ってたよ」
「……緊張してきた」
「がんばって」
鳩ちゃんのエールにうん! と返して対戦ブースに早足で向かって行った。
***
「六頴館ってクラス替えないから三年になっても別のクラスなのがなー」
「おまえらが同じクラスだったら名字が過労死しそうだ」
犬飼くんは荒船くんとブースの観覧席に座って何か話している。ま、待っておこう。その間に緊張をほぐさせてもらおう。ひとりで深呼吸を続ける私に不審な目を向けるいた人もいたけど、今はそれどころじゃなく。そのときだった。犬飼くん達に真っ直ぐ近づく白い隊服の女の子が現れた。
「澄晴先輩~っ」
「またきみかぁ」
「また私です! 今日こそは弟子にしてもらいにきました!」
「しないって言ってるでしょ」
「若村先輩は射撃教わってるって!」
「あの子はあの子。きみはきみ」
「お母さんみたいなこと言って誤魔化さないでください!」
「一ミリも誤魔化してないんだけど、ね……」
ばちり。そんな音をたてて視線がかち合った。慌てて去ろうとすると犬飼くんから「名前ストップ!」と声がかかって反射的にピタリと止まる。それでも目から出てる涙は止めようと目をこする。でもとまらない。どうしようと思っていたところで犬飼くんが私の両腕を掴んだ。
「目こすらないの」
「だって、なんか、久しぶりに涙出て……とまらないの……」
「……中一ぶり?」
「……たぶん?」
そう言うと犬飼くんは「あー喜んでるのがみみっちい」と言って私の顔の前にぐいっと顔をやった。近くてドキドキする。泣き顔不細工だ。どうしよう。
「名前はおれの前じゃないと泣けなくなってるね」
「そんな、こと……」
「あるかも? って思ったでしょ?」
心当たりがありすぎて力なく頷いた。これは幼稚園のときからの習慣みたいなものだ。犬飼くんがいる場所は安全って頭に刷り込まれている。こんな弊害があるなんて聞いてない。
「泣かないのは身体に悪いよね。ますます一緒にいる理由できちゃった」
「め、面倒なんじゃ」
「喜ぶ一択でしょ。……で? 何で泣いちゃった? これは寂しくて泣いてるやつだと思うんだけど」
「……犬飼くんがあの子弟子にするってなって、す、好きになったらどうしようって」
「飛躍させましたねぇ。そもそも弟子にしないし。というか、名前さん?」
掴んでいた場所が腕から手に変わる。両手を大きな手で包まれる。
「もうこれおれの事が好きって言ってるようなもの何ですけど、そこのところどうでしょうか」
(好きって言って。お願いだから。ずっと大切にするから。おれには名前だけ。名前もそうであってほしい。好きって言って名前)
顔は飄々としているのに心の声は必死そのもので。繋がれた手は熱がこもっていた。手をゆっくり離すと犬飼くんは顔を歪めたけど両手を掴んで私の頬に当ててその上から手を包んだら、力の抜けたような顔をした。
「……好き……すみくんが好き……」
「うん。おれも好き」
(うん。おれも好き)
「わがままだと思うけど、ずっと一緒がいいの」
「そんなのわがままじゃないよ。おれも一緒がいい」
(可愛い。名前可愛い。絶対離さないから)
「……えっちな想像してもいいから、手を離さないでね?」
「えっ」
(普通にセックスしたいとか思うんですけどいいの? 手繋ぐとかハグだけじゃなくてイロイロしちゃうんだよ? エロいこと)
「うっ……! ゆ、ゆっくり……のんびり、なら……」
「言質とったからね」
(エロいこといっぱいしよ)
「ううぅ……」
(照れてる可愛い可愛い可愛いあー、ちゅーしていいかな? いいよね彼氏だし)
「人前ですっ!」
「人前じゃなかったなかったらオーケーってことね。2人っきりになれるとこ行こ」
(どこがいいかな。初めてのキスだし。屋上かな)
すみくんは手を繋ぎ返して観戦ブースから出て行く。荒船くんとあの子は!? と聞くと「屋上優先」と珍しく真顔で、でも心の中は(初めてのキスだから優しくしないとな。さすがに初っ端から舌入れたら名前倒れちゃうだろうし)とキス一色で、私は顔を赤くしながら手を引っ張られるしか出来なかった。それでも大きさの違った繋がった手は幸せそのもので。子供のときみたいに少し泣きそうになってしまった。
2024.04.27 完
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