完結済み
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おれがボーダーに入ったのは名前が嵐山隊を辞めて名字隊の隊長となってから。ボーダーのホームページの隊員情報をリビングでぼんやり見ていたときだった。姉からソファーから蹴り落とされた。
「!? なにっ!?」
「じれったい! 名前ちゃんが遠くに行った……とか考えてる暇あったら追いかけなさい馬鹿弟! あんたの部屋に嵐山隊時代の名前ちゃんの写真あるの知ってるんだからね!」
「勝手に入ったの!?」
「お母さんが見つけて反応に困ってたわよ!」
「反応に困ってたなら言わないでほしかったんだけど!」
母に文句を言うと「ごめんね~でも澄晴ってば幼稚園のころから好きなのにさぁ」と頬に手を当てて困ったような顔をされる。困っているのはこちらである。隠してたのになぜ見つかった。気持ちがバレバレなのはこの際どうでもいい。子供のときから名前名前と言っていたのだから。
「おれがボーダーって……」
「簡単な学力試験と適性試験あるみたいだけどあんたなら余裕でしょ」
「どういう自信」
「名前ちゃんの行く高校探って一緒に受験した陰湿さがあるならボーダー試験くらい通りなさい」
「一途さって言ってくんない?」
「陰湿さよ」
強調する姉にため息をつく。確かに陰湿さも間違っていないと思った。名前に隠れてこそこそ受験先を探っていたのは事実だ。
「あんた言っとくけど幼なじみなんて簡単に切れる縁なんだからね。こっちから結びなおそうとしない限り」
「…………」
「と、いうわけでもうボーダーにあんたの書類送ったから。はい、受験表」
「は?」
「試験あと三時間後だからがんばれ」
「は?」
そう言って家から追い出された。受験先までの経路を書かれたメモと共に。
「…………ふ、あはははは!」
見られていたら気が触れたと思われたに違いない。そのくらい爆笑していた。爆笑して爆笑して、すっきりした。
「あーもう勝手だなぁ」
でもその勝手さに救われた。
「入隊したらまずはC級隊員からかぁ。名前は正隊員だからそれまでは告白できないな」
おれが正隊員になる頃に名前がA級隊員になってしまい目標が更に高くなるのはこの時のおれはまだ知らなかった。それでも頭はすっきりしていて受けた試験は余裕で通った。
****
「名字ちゃん」
名前は肩をビクッとさせてゆっくり振り返った。眉は困ったように八の字になっている。
「……なに? 犬飼くん」
「うちの 隊、A級に上がったからさ、A級の先輩としてなにかアドバイスもらえるかなーって」
「二宮さんの隊ならいらないと思う」
「そんなこと言わないで」
おれが近づくと名前は両手を後ろに隠した。……やっぱりトラウマになってるなぁ。そう思いつつ目の前までたどり着く。目がきょろきょろしてて挙動不審だ。それでも可愛いと思う気持ちが生まれてくる。愛しさがわき上がってくる。好きだと心が伝えてくる。
名前の後ろに回った手を掴んでおれの両頬に当てる。名前はびっくりして動けていない。
「名字ちゃん、好きだよ。どこの誰よりも一番大好き」
おれの心は真正面から伝わっているだろうか。カゲから見た目と中身がチグハグだと嫌がられてるから名前にはそんな風に思ってほしくないのだけど。
名前は長いまつげをパシパシして「ゴメンサナイ」と片言で言った。
「うん、言うと思ってた。けどごめんね。諦められないから」
「!?」
「中一のとき」
「!」
名前はバッとおれから手を離した。
その反応に申し訳なくなりながら言葉を続ける。
「中一のとき、名前の手を払ったのは名前のことエロい目で見てるのに気づいたから」
「!? え、えろっ!?」
「うん。エロい目。だからそれが伝わったら怖くなってあんなことした。言った。本当にごめんなさい」
頭を下げる。やっと言えた。謝る方は勝手だな。謝るだけで少し楽になってしまうんだから。謝られる方は傷を無理やり抉られて判断を無理やり委ねられるっていうのに。
視界の端で名前の手が揺れるのが見える。おれに触れるか悩んでいるのだろうか。触れてくれたらいいのに。その願いが通じたのかゆっくりゆっくり名前の手がおれに向かってくる。そして触れる直前でパタリと下に降りた。
「頭を上げて、ほしいです」
「……うん」
「理由はわ、分かったけど……もう私の中ではあのことは……」
名前の目が涙目になる。口がぱくぱくして続きが告げれなくなっているみたいだ。ここでホッとするおれは本当に勝手だ。おれに未練がなかったらもっとすんなり言葉が紡げたはずだからだ。
「……怖いから、犬飼くんが。また、手、……ふり払われたら」
「払わないよ絶対」
「分からないよ」
「分かるよ」
再び手を掴む。名前はびくりとした後に少し安心したように息をついた。
「でも、これからずっとかは分からないでしょ……? 気味悪いって思われるかも」
「子供のときからすごいすごいって言ってるのに?」
「う、それは……」
「不安にさせたのおれだからいくらでもつき合うよ。名前が安心できるまで」
「……安心できるまで?」
「うん。好きだから名前のことが」
「!!」
ぶわわと顔が赤くなる。手をもぞもぞさせてるから心の方でも伝わっているみたいで何よりだ。
「あ、あの人前じゃ名字って呼んでください……」
「なんで?」
「───……」
か細い声から聞こえたのは。「意識しちゃうから」……それが目的なんだけど? と思ったけどゆでだこのようになって、いっぱいいっぱいになってる名前には酷だなと思い「分かった分かった」と返した。
「!? なにっ!?」
「じれったい! 名前ちゃんが遠くに行った……とか考えてる暇あったら追いかけなさい馬鹿弟! あんたの部屋に嵐山隊時代の名前ちゃんの写真あるの知ってるんだからね!」
「勝手に入ったの!?」
「お母さんが見つけて反応に困ってたわよ!」
「反応に困ってたなら言わないでほしかったんだけど!」
母に文句を言うと「ごめんね~でも澄晴ってば幼稚園のころから好きなのにさぁ」と頬に手を当てて困ったような顔をされる。困っているのはこちらである。隠してたのになぜ見つかった。気持ちがバレバレなのはこの際どうでもいい。子供のときから名前名前と言っていたのだから。
「おれがボーダーって……」
「簡単な学力試験と適性試験あるみたいだけどあんたなら余裕でしょ」
「どういう自信」
「名前ちゃんの行く高校探って一緒に受験した陰湿さがあるならボーダー試験くらい通りなさい」
「一途さって言ってくんない?」
「陰湿さよ」
強調する姉にため息をつく。確かに陰湿さも間違っていないと思った。名前に隠れてこそこそ受験先を探っていたのは事実だ。
「あんた言っとくけど幼なじみなんて簡単に切れる縁なんだからね。こっちから結びなおそうとしない限り」
「…………」
「と、いうわけでもうボーダーにあんたの書類送ったから。はい、受験表」
「は?」
「試験あと三時間後だからがんばれ」
「は?」
そう言って家から追い出された。受験先までの経路を書かれたメモと共に。
「…………ふ、あはははは!」
見られていたら気が触れたと思われたに違いない。そのくらい爆笑していた。爆笑して爆笑して、すっきりした。
「あーもう勝手だなぁ」
でもその勝手さに救われた。
「入隊したらまずはC級隊員からかぁ。名前は正隊員だからそれまでは告白できないな」
おれが正隊員になる頃に名前がA級隊員になってしまい目標が更に高くなるのはこの時のおれはまだ知らなかった。それでも頭はすっきりしていて受けた試験は余裕で通った。
****
「名字ちゃん」
名前は肩をビクッとさせてゆっくり振り返った。眉は困ったように八の字になっている。
「……なに? 犬飼くん」
「
「二宮さんの隊ならいらないと思う」
「そんなこと言わないで」
おれが近づくと名前は両手を後ろに隠した。……やっぱりトラウマになってるなぁ。そう思いつつ目の前までたどり着く。目がきょろきょろしてて挙動不審だ。それでも可愛いと思う気持ちが生まれてくる。愛しさがわき上がってくる。好きだと心が伝えてくる。
名前の後ろに回った手を掴んでおれの両頬に当てる。名前はびっくりして動けていない。
「名字ちゃん、好きだよ。どこの誰よりも一番大好き」
おれの心は真正面から伝わっているだろうか。カゲから見た目と中身がチグハグだと嫌がられてるから名前にはそんな風に思ってほしくないのだけど。
名前は長いまつげをパシパシして「ゴメンサナイ」と片言で言った。
「うん、言うと思ってた。けどごめんね。諦められないから」
「!?」
「中一のとき」
「!」
名前はバッとおれから手を離した。
その反応に申し訳なくなりながら言葉を続ける。
「中一のとき、名前の手を払ったのは名前のことエロい目で見てるのに気づいたから」
「!? え、えろっ!?」
「うん。エロい目。だからそれが伝わったら怖くなってあんなことした。言った。本当にごめんなさい」
頭を下げる。やっと言えた。謝る方は勝手だな。謝るだけで少し楽になってしまうんだから。謝られる方は傷を無理やり抉られて判断を無理やり委ねられるっていうのに。
視界の端で名前の手が揺れるのが見える。おれに触れるか悩んでいるのだろうか。触れてくれたらいいのに。その願いが通じたのかゆっくりゆっくり名前の手がおれに向かってくる。そして触れる直前でパタリと下に降りた。
「頭を上げて、ほしいです」
「……うん」
「理由はわ、分かったけど……もう私の中ではあのことは……」
名前の目が涙目になる。口がぱくぱくして続きが告げれなくなっているみたいだ。ここでホッとするおれは本当に勝手だ。おれに未練がなかったらもっとすんなり言葉が紡げたはずだからだ。
「……怖いから、犬飼くんが。また、手、……ふり払われたら」
「払わないよ絶対」
「分からないよ」
「分かるよ」
再び手を掴む。名前はびくりとした後に少し安心したように息をついた。
「でも、これからずっとかは分からないでしょ……? 気味悪いって思われるかも」
「子供のときからすごいすごいって言ってるのに?」
「う、それは……」
「不安にさせたのおれだからいくらでもつき合うよ。名前が安心できるまで」
「……安心できるまで?」
「うん。好きだから名前のことが」
「!!」
ぶわわと顔が赤くなる。手をもぞもぞさせてるから心の方でも伝わっているみたいで何よりだ。
「あ、あの人前じゃ名字って呼んでください……」
「なんで?」
「───……」
か細い声から聞こえたのは。「意識しちゃうから」……それが目的なんだけど? と思ったけどゆでだこのようになって、いっぱいいっぱいになってる名前には酷だなと思い「分かった分かった」と返した。