完結済み
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
先生と共に同級生の女の子たちに泳ぎ方を教えていたらあっという間に授業が終わった。またしても謝られてしまった。プールに入れるだけで楽しいからいいのにな。
「じゃあ体育教官室に鍵よろしくな」
でもこれはいただけない。
手元には更衣室の鍵。六限が終わり、掃除、SHRととんとん拍子に時間が進み、さて帰ろうとした瞬間これだった。先ほどの体育の先生が鍵を戻し忘れたらしい。これから部活に顔を出すそうだから代わりに行ってくれと半ば強制的に持たされた。
否定する間もなく渡された鍵を握りしめて体育教官室へ向かう。あそこって厳格な雰囲気というか、空気がピリッとしているから苦手だ。部活動もしてないから更に関わることないしなぁ。そう心でぼやきつつ第二体育館の奥にある部屋まで足を進めた。バレー部が練習している中、邪魔にならないように端っこをこそこそ歩く。ボールが下に叩きつけられる音にビクビクしながらやっとついた体育教官室。ノックしてクラス、学籍番号…と扉に貼ってある紙を一通り見て部屋に入った。あ、ノック忘れた。
「し、失礼しました」
やってしまった、怒られる…!とテンパってすぐさま扉を閉めようとしたとき「あ、名字」と名前を呼ばれた。
「あれ…出水くん?」
「おー。おまえ何で入ってきたのにすぐ出ようとしてんの?」
「お、怒られると思って」
理由を説明すると噴き出すように笑われた。「子どもかよ」と楽しそうな表情でからかわれ、顔に熱がこもるのが分かった。は、はずかしい。
「名字って意外と抜けてるんだな。さっきも先生が止まれって叫んでたのにずっと泳いでたし」
「うそ、先生叫んでたの…?」
「『名字ー!!止まらんかー!!』って。すげー目立ってたぞおまえ」
「やってしまった…」
そういえば視線が集まっていた気がする。あれ私のことだったんだ…。今さら来た羞恥心。あああ…と口元を押さえるとまた出水くんに笑われた。話を変えようと教官室のキーボックスの場所を聞く。それに対して「パシりか」とニヤニヤしながら自分の後ろにあるものに親指を向けた。
「ほら貸してみ」
「ありがとう…、そういえば何で出水くんは教官室に……それなに?」
「げ」
私の視線にあるものを左腕で隠す出水くん。しかし残念ながら見えてしまった《反省文》の文字。ジーッと出水くんを見ているとそっぽを向かれた。そしてボソボソ話し出す。
「米屋に向けて投げた水泳バックが教官室のドンに当たったんだよ」
「わあ」
それはご愁傷さまだ。
教官室のドンとは学校で一番怖い先生のことだ。さぞ怒られたに違いない。
「米屋くんはどうしたの?」
「笑いながら逃げられた」
悔しそうに言う出水くん。本当に仲良しだなぁと思わず口元が綻んだ。
「つーか何も言葉出てこねー。名字も考えろよ」
「何で私も…?」
「今笑っただろ」
それを言うなら出水くんも、と思ったけど反省文というタイトルから全く進んでなかったので少しお手伝いすることにした。
「うーん…次は当てないようにします、とか…?」
「火に油だろそれ」
「いっそ逆転の発想で先生が好きだから当ててしまいました、はどうかな?」
「油どころじゃねーよ」
真面目に考えろ!と怒られてしまった。真面目に考えたのに…。そもそも反省文なんて書いたことないからわからないよ。そう言うと「終わる気がしねえ…」と左手で頬杖をついて右手でペン回しを始めた。まだ四行しか進んでいない。
「諦めちゃ駄目だよ出水くん。紙いっぱいにごめんなさいって書けば誠意が伝わるかもしれないし」
「……名字ってそんな性格だったんだな」
あんま喋ったことなかったから知らなかった、と呟くように言う出水くん。そう言えばこんなに話したのは初めてかもしれない。
「うーん、見た目大人しいのに意外と…ってよく言われるんだけど何でかな」
「ああそれすげえよく分かる」
一息でそう言われてしまった。あんまり関わったことがない出水くんにまで言われてしまうなんて…。今日の水泳といい、変なところを見られている気がする。どうしよう変な人間だと思われたら。
「……まー想像と違ったけど、いいんじゃね?」
でも出水くんが微笑みながらそういってくれたので、それでもいいかなぁと思ってしまう私は厳禁なやつだ。
「じゃあ体育教官室に鍵よろしくな」
でもこれはいただけない。
手元には更衣室の鍵。六限が終わり、掃除、SHRととんとん拍子に時間が進み、さて帰ろうとした瞬間これだった。先ほどの体育の先生が鍵を戻し忘れたらしい。これから部活に顔を出すそうだから代わりに行ってくれと半ば強制的に持たされた。
否定する間もなく渡された鍵を握りしめて体育教官室へ向かう。あそこって厳格な雰囲気というか、空気がピリッとしているから苦手だ。部活動もしてないから更に関わることないしなぁ。そう心でぼやきつつ第二体育館の奥にある部屋まで足を進めた。バレー部が練習している中、邪魔にならないように端っこをこそこそ歩く。ボールが下に叩きつけられる音にビクビクしながらやっとついた体育教官室。ノックしてクラス、学籍番号…と扉に貼ってある紙を一通り見て部屋に入った。あ、ノック忘れた。
「し、失礼しました」
やってしまった、怒られる…!とテンパってすぐさま扉を閉めようとしたとき「あ、名字」と名前を呼ばれた。
「あれ…出水くん?」
「おー。おまえ何で入ってきたのにすぐ出ようとしてんの?」
「お、怒られると思って」
理由を説明すると噴き出すように笑われた。「子どもかよ」と楽しそうな表情でからかわれ、顔に熱がこもるのが分かった。は、はずかしい。
「名字って意外と抜けてるんだな。さっきも先生が止まれって叫んでたのにずっと泳いでたし」
「うそ、先生叫んでたの…?」
「『名字ー!!止まらんかー!!』って。すげー目立ってたぞおまえ」
「やってしまった…」
そういえば視線が集まっていた気がする。あれ私のことだったんだ…。今さら来た羞恥心。あああ…と口元を押さえるとまた出水くんに笑われた。話を変えようと教官室のキーボックスの場所を聞く。それに対して「パシりか」とニヤニヤしながら自分の後ろにあるものに親指を向けた。
「ほら貸してみ」
「ありがとう…、そういえば何で出水くんは教官室に……それなに?」
「げ」
私の視線にあるものを左腕で隠す出水くん。しかし残念ながら見えてしまった《反省文》の文字。ジーッと出水くんを見ているとそっぽを向かれた。そしてボソボソ話し出す。
「米屋に向けて投げた水泳バックが教官室のドンに当たったんだよ」
「わあ」
それはご愁傷さまだ。
教官室のドンとは学校で一番怖い先生のことだ。さぞ怒られたに違いない。
「米屋くんはどうしたの?」
「笑いながら逃げられた」
悔しそうに言う出水くん。本当に仲良しだなぁと思わず口元が綻んだ。
「つーか何も言葉出てこねー。名字も考えろよ」
「何で私も…?」
「今笑っただろ」
それを言うなら出水くんも、と思ったけど反省文というタイトルから全く進んでなかったので少しお手伝いすることにした。
「うーん…次は当てないようにします、とか…?」
「火に油だろそれ」
「いっそ逆転の発想で先生が好きだから当ててしまいました、はどうかな?」
「油どころじゃねーよ」
真面目に考えろ!と怒られてしまった。真面目に考えたのに…。そもそも反省文なんて書いたことないからわからないよ。そう言うと「終わる気がしねえ…」と左手で頬杖をついて右手でペン回しを始めた。まだ四行しか進んでいない。
「諦めちゃ駄目だよ出水くん。紙いっぱいにごめんなさいって書けば誠意が伝わるかもしれないし」
「……名字ってそんな性格だったんだな」
あんま喋ったことなかったから知らなかった、と呟くように言う出水くん。そう言えばこんなに話したのは初めてかもしれない。
「うーん、見た目大人しいのに意外と…ってよく言われるんだけど何でかな」
「ああそれすげえよく分かる」
一息でそう言われてしまった。あんまり関わったことがない出水くんにまで言われてしまうなんて…。今日の水泳といい、変なところを見られている気がする。どうしよう変な人間だと思われたら。
「……まー想像と違ったけど、いいんじゃね?」
でも出水くんが微笑みながらそういってくれたので、それでもいいかなぁと思ってしまう私は厳禁なやつだ。