完結済み
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手で人に触れたら心で思っていることが分かるサイドエフェクト。子供の頃から発現していたそれを持った私は周囲から浮きまくっていた。幸いにして家族は「エスパーが生まれた! 我が家からエスパー!」と好意的かつのん気な反応だったのが救いだった。両親、兄と姉共に触れても聞こえてくるのは「なあに?」「可愛いなぁ」「愛してるよ」といった表も裏も聞こえてくるものは変わらない姿だったので、それはもう完全なお家大好きっ子に育ったのだ。
それが変わったのは第一次侵攻時。瓦礫に挟まった私をそう年頃の変わらない男の子に手を引っ張られて助けられ、その時聞こえた「この子、ボーダーに入る子だな」という心の声に反射的に「ボーダーってなに?」と聞いてしまってひどく驚かせてしまった。これがのちにS級隊員となる迅さんとの初めての出会いだった。それから侵攻が収まって復興が進む中で、私にサイドエフェクトがあると気づいた迅さんが林藤さんを連れて直々にスカウトされたのだ。家族は私のエスパーのからくりを知って安心しつつも「うちの子を戦わせるなんて許さん!」と反対気味だったのだけど、サイドエフェクトを持っている者はトリオン能力が高い傾向にあるという林藤さんの説明で一気に心惹かれたのが私だった。家に籠もりきりで友達もいない。自慢できるのは優しい家族だけ。自信なんて一ミリも育っていない。そんな私に秀でたものがある。悩みの種だったものが理由のあるものだった。一気に目の前が開いた気がした。
「私、ボーダー入りたい。ずっと誰かを傷つけるだけの力だと思っていたものを人の為に使いたい。誰かの為に生きたい」
家族にそう言うとみんなからギュッとされて「辛くなったらちゃんと相談すること」と約束してボーダーに入隊することになった。家族の心は心配と不安でいっぱいだった。それなのに応援してくれた。だから滲む視界をしっかりと開いて強く頷いた。
私のトリオン量は想像通りに高く、トリオン能力の高さを生かしやすいガンナーへとなった。同時入隊の嵐山さん、柿崎さんと共にチームを組んで嵐山隊となった。テレビに出たときは内心あわあわしていたけど、長年「名前ちゃん気持ち悪い」「思ってることがバレちゃうんでしょ」「化け物じゃん」「近づかないで」と人に避けられていたので変な耐性がついていたらしい。嵐山さんから「ずっと堂々としていて偉かったぞ」と褒めてもらった。
ボーダーに入ってからというもの慌ただしい毎日だった。でもそれは決して嫌なものじゃなくて。誰かの役に立っている。それは私に自信をつけさせてくれた。それに嵐山隊は居心地がよくて私のサイドエフェクトを知っても「そうか、思っていることがバレてしまうのは少し照れてしまうな」と嵐山さんは笑いながら握手して、柿崎さんは「いつ触れても気にしなくていいからな。おまえが無理やり人の心を暴いているんじゃねーんだからな」と手を触れながら言ってくれた。後から入ってきた佐鳥くんも時枝くんも遥ちゃんもとてもいい子で私の力を疎んじることは一切なかった。
大好きな隊だった。ずっとそこにいたかった。それでも私の過去は私のことを忘れてはくれなかった。嵐山隊が広報部隊となって私自身が目立つようになってから「嵐山隊の名字隊員は人の秘密を暴く人間だ」とネット上で広がってしまったのだ。秘密を暴く。人の内緒にしていたことを無理やり聞く嫌な人間。それを話す陰湿な性格。ネット上の私はそんな人間になってしまって、とてもじゃないけど広報としてやっていけなかった。嵐山さんは広報部隊を止めようとしていたけど、嵐山隊は絶大な人気と信頼を三門市から集めている。そんなことは許されなかった。
「私は私の部隊を作ってA級目指します!」
笑顔で言った。今まで貰ってきた優しさと恩義を返したくて。嵐山さんはうちにいていいと言ってくれてどこまでも優しかったけど、最後は私の気持ちを汲んでくれて送り出してくれた。
人の秘密を暴く人間。そんな風にして隊を去ったと思われてるのに隊員なんか集まるかな……と不安になってたけど何とオペレーター含めて三人も来てくれたのだ。オペの子は遥ちゃんが声をかけてくれたらしい。どうして来てくれたの? と聞くとなんてない顔で「名字さん、トリオン量やばいから隊作ったら絶対やべー隊になるって思って」「私は名字さんのファンなので。ブロマイド持ってます」「オペできるならどこでも構いません」と言ってくれた。あっけからんとした三人の態度に笑ってしまって、「よろしくね」と返した。
それからは隊長という立場で隊を率いていく難しさを感じながらの慌ただしい毎日。隊員のみんなは各自マイペースで私を嘘発見器に使うくらい私のサイドエフェクトは良い意味で軽く扱われていた。それが普通に笑えたのが自分でもびっくりだった。
家族からはボーダー入ってから明るくなったね、と言ってもらえるようになって順風満帆とは行かなくとも、ボーダーに入って良かったと思う毎日だった。幸せだ。そう思う。そう思うのだけど……私の中には茶色の頭の男の子の影がずっと残っていた。そして今、その男の子と向き合っている状態だった。なぜ。
「名字ちゃん、好きだよ。どこの誰よりも一番大好き」
(名前、好きだよ。心から愛してる)
私の両手を自分の頬にあてて真っ直ぐに言葉と心で伝えてくるのは隣の隣のクラスでボーダー隊員の犬飼くん。……複雑な関係の犬飼くん。
冷や汗を流しながら「ゴメンナサイ」とロボット、初めて喋るみたいな口調で返した。
それが変わったのは第一次侵攻時。瓦礫に挟まった私をそう年頃の変わらない男の子に手を引っ張られて助けられ、その時聞こえた「この子、ボーダーに入る子だな」という心の声に反射的に「ボーダーってなに?」と聞いてしまってひどく驚かせてしまった。これがのちにS級隊員となる迅さんとの初めての出会いだった。それから侵攻が収まって復興が進む中で、私にサイドエフェクトがあると気づいた迅さんが林藤さんを連れて直々にスカウトされたのだ。家族は私のエスパーのからくりを知って安心しつつも「うちの子を戦わせるなんて許さん!」と反対気味だったのだけど、サイドエフェクトを持っている者はトリオン能力が高い傾向にあるという林藤さんの説明で一気に心惹かれたのが私だった。家に籠もりきりで友達もいない。自慢できるのは優しい家族だけ。自信なんて一ミリも育っていない。そんな私に秀でたものがある。悩みの種だったものが理由のあるものだった。一気に目の前が開いた気がした。
「私、ボーダー入りたい。ずっと誰かを傷つけるだけの力だと思っていたものを人の為に使いたい。誰かの為に生きたい」
家族にそう言うとみんなからギュッとされて「辛くなったらちゃんと相談すること」と約束してボーダーに入隊することになった。家族の心は心配と不安でいっぱいだった。それなのに応援してくれた。だから滲む視界をしっかりと開いて強く頷いた。
私のトリオン量は想像通りに高く、トリオン能力の高さを生かしやすいガンナーへとなった。同時入隊の嵐山さん、柿崎さんと共にチームを組んで嵐山隊となった。テレビに出たときは内心あわあわしていたけど、長年「名前ちゃん気持ち悪い」「思ってることがバレちゃうんでしょ」「化け物じゃん」「近づかないで」と人に避けられていたので変な耐性がついていたらしい。嵐山さんから「ずっと堂々としていて偉かったぞ」と褒めてもらった。
ボーダーに入ってからというもの慌ただしい毎日だった。でもそれは決して嫌なものじゃなくて。誰かの役に立っている。それは私に自信をつけさせてくれた。それに嵐山隊は居心地がよくて私のサイドエフェクトを知っても「そうか、思っていることがバレてしまうのは少し照れてしまうな」と嵐山さんは笑いながら握手して、柿崎さんは「いつ触れても気にしなくていいからな。おまえが無理やり人の心を暴いているんじゃねーんだからな」と手を触れながら言ってくれた。後から入ってきた佐鳥くんも時枝くんも遥ちゃんもとてもいい子で私の力を疎んじることは一切なかった。
大好きな隊だった。ずっとそこにいたかった。それでも私の過去は私のことを忘れてはくれなかった。嵐山隊が広報部隊となって私自身が目立つようになってから「嵐山隊の名字隊員は人の秘密を暴く人間だ」とネット上で広がってしまったのだ。秘密を暴く。人の内緒にしていたことを無理やり聞く嫌な人間。それを話す陰湿な性格。ネット上の私はそんな人間になってしまって、とてもじゃないけど広報としてやっていけなかった。嵐山さんは広報部隊を止めようとしていたけど、嵐山隊は絶大な人気と信頼を三門市から集めている。そんなことは許されなかった。
「私は私の部隊を作ってA級目指します!」
笑顔で言った。今まで貰ってきた優しさと恩義を返したくて。嵐山さんはうちにいていいと言ってくれてどこまでも優しかったけど、最後は私の気持ちを汲んでくれて送り出してくれた。
人の秘密を暴く人間。そんな風にして隊を去ったと思われてるのに隊員なんか集まるかな……と不安になってたけど何とオペレーター含めて三人も来てくれたのだ。オペの子は遥ちゃんが声をかけてくれたらしい。どうして来てくれたの? と聞くとなんてない顔で「名字さん、トリオン量やばいから隊作ったら絶対やべー隊になるって思って」「私は名字さんのファンなので。ブロマイド持ってます」「オペできるならどこでも構いません」と言ってくれた。あっけからんとした三人の態度に笑ってしまって、「よろしくね」と返した。
それからは隊長という立場で隊を率いていく難しさを感じながらの慌ただしい毎日。隊員のみんなは各自マイペースで私を嘘発見器に使うくらい私のサイドエフェクトは良い意味で軽く扱われていた。それが普通に笑えたのが自分でもびっくりだった。
家族からはボーダー入ってから明るくなったね、と言ってもらえるようになって順風満帆とは行かなくとも、ボーダーに入って良かったと思う毎日だった。幸せだ。そう思う。そう思うのだけど……私の中には茶色の頭の男の子の影がずっと残っていた。そして今、その男の子と向き合っている状態だった。なぜ。
「名字ちゃん、好きだよ。どこの誰よりも一番大好き」
(名前、好きだよ。心から愛してる)
私の両手を自分の頬にあてて真っ直ぐに言葉と心で伝えてくるのは隣の隣のクラスでボーダー隊員の犬飼くん。……複雑な関係の犬飼くん。
冷や汗を流しながら「ゴメンナサイ」とロボット、初めて喋るみたいな口調で返した。