完結済み
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「東さん、大人の女性とはどんな人ですか」
「…………熱でもあるのか?」
とりあえずイーグレットを下ろそうと名前に提案する東。東隊のトレーニングルーム。並んで淡々と訓練を行っていた東と名前。いつもなら集中力が乱れないくらいの会話がある。戦闘中にも平常心を保てるようにとこの方法が二人の間で使われている。スナイパーに焦りは禁物だ。誰よりも冷静でいなくてはならない。……だが唐突に名前から発せられた言葉に少し動揺した東。元気ないな、後で飯でも誘うかなど考えていた途端にこれだった。
「あー何だ、……大人の女性?」
「はい。思わず動揺しちゃうような魅力の大人の女性です」
今俺も動揺させられたよおまえに、と口には出さずにそう返した東。この感情は……ずっと小さくておもちゃ上げたら跳ねて喜んでいた親戚の子供が急に大人びたことを質問してきた。ああ、これだな。
「急にどうした?」
「東さんは格好いい魅力的な大人なので、参考にさせてもらおうかと思いました」
「はは、ありがとう。でも俺を真似しなくても名字には名字の良いところがあるだろう」
「…………例えば?」
いつになく食い尽くな。いつもなら「わあ! ありがとうございます! 東さんっわたしがんばります!」とか言うんだけどな、と思いつつ東は口を開いた。
「そうだな、素直な所と真っ直ぐな所だな。個人的には飯の奢りがいがあるから美味しそうにご飯を食べるところも気に入っている」
最後は茶目っ気混じりにそう返す。だが、ボーダー1の軍師がここで痛恨のミスをした。今一番触れてはいけない所を踏み込んでしまったのだ。
「…………大人の女性は大口でオムライス頬張ったりしませんー!!」
****
「そうか、辻と喧嘩したのか……」
突如怒りだした名前を宥めて作戦室に連れ出して話を聞く東。聞いた内容は東としてはなんとも微笑ましい内容だ。だが名前本人は真剣に悩んでいるのだからそれを言うのは野暮だな、と口にはせず、落ち着いた口調で話し始める。
「昼が終わってどうしたんだ? おまえたちいつも一緒に基地に来るだろう」
「一緒には来ましたけど、あまり話してません」
寂しいと名前の顔が語っている。いつも一緒にいるからなぁと二人並ぶ姿を思い浮かべる。辻の名前に向ける視線はいつも穏やかで柔らかい。確かに辻は女が苦手で名前以外の女には上がりっぱなしだが、だからと言って名前を女として見ていないわけではないだろう。向ける感情の種類は東には分からないが、大切に想っていることは確かだ。お互いに。
「名字の気持ちも分からないでもないが、子供のときからずっと仲がいい相手っていうのは貴重だぞ。歳をとったら段々疎遠になるものだからな」
「……大人になったら仲良しじゃなくなるんですか?」
「そういう人間もいるな」
「…………わたし、新ちゃんに謝ってきます」
それがいいな、と東が笑みを返したときだった。作戦室の扉が開き、すかさずズカズカ入って来た人物は「失礼します東さん。少しの時間、これをお借りします」と早口で言い切ってこれと表した者の首根っこを掴み、自分の肩に担いで作戦室を後にした。「失礼しました」と律儀に声をかけて。その華麗な一連の動きに東が固まって見届けていると、ちょうどその人物と入れ違いになって入って来た奥寺が青い顔をして口を開いた。
「……今、名字先輩が二宮さんに誘拐されていませんでしたか……?」
その台詞が嫌に部屋中響いた。すぐさま「いや、少し借りるって言ってたから誘拐では……」と否定の言葉を返そうとしたが、それより早く奥寺と一緒だった小新井が大きな声を出した。
「名字先輩が二宮さんに誘拐されたー!!」
その声は部屋どころか廊下にも響き渡っていた。
「…………熱でもあるのか?」
とりあえずイーグレットを下ろそうと名前に提案する東。東隊のトレーニングルーム。並んで淡々と訓練を行っていた東と名前。いつもなら集中力が乱れないくらいの会話がある。戦闘中にも平常心を保てるようにとこの方法が二人の間で使われている。スナイパーに焦りは禁物だ。誰よりも冷静でいなくてはならない。……だが唐突に名前から発せられた言葉に少し動揺した東。元気ないな、後で飯でも誘うかなど考えていた途端にこれだった。
「あー何だ、……大人の女性?」
「はい。思わず動揺しちゃうような魅力の大人の女性です」
今俺も動揺させられたよおまえに、と口には出さずにそう返した東。この感情は……ずっと小さくておもちゃ上げたら跳ねて喜んでいた親戚の子供が急に大人びたことを質問してきた。ああ、これだな。
「急にどうした?」
「東さんは格好いい魅力的な大人なので、参考にさせてもらおうかと思いました」
「はは、ありがとう。でも俺を真似しなくても名字には名字の良いところがあるだろう」
「…………例えば?」
いつになく食い尽くな。いつもなら「わあ! ありがとうございます! 東さんっわたしがんばります!」とか言うんだけどな、と思いつつ東は口を開いた。
「そうだな、素直な所と真っ直ぐな所だな。個人的には飯の奢りがいがあるから美味しそうにご飯を食べるところも気に入っている」
最後は茶目っ気混じりにそう返す。だが、ボーダー1の軍師がここで痛恨のミスをした。今一番触れてはいけない所を踏み込んでしまったのだ。
「…………大人の女性は大口でオムライス頬張ったりしませんー!!」
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「そうか、辻と喧嘩したのか……」
突如怒りだした名前を宥めて作戦室に連れ出して話を聞く東。聞いた内容は東としてはなんとも微笑ましい内容だ。だが名前本人は真剣に悩んでいるのだからそれを言うのは野暮だな、と口にはせず、落ち着いた口調で話し始める。
「昼が終わってどうしたんだ? おまえたちいつも一緒に基地に来るだろう」
「一緒には来ましたけど、あまり話してません」
寂しいと名前の顔が語っている。いつも一緒にいるからなぁと二人並ぶ姿を思い浮かべる。辻の名前に向ける視線はいつも穏やかで柔らかい。確かに辻は女が苦手で名前以外の女には上がりっぱなしだが、だからと言って名前を女として見ていないわけではないだろう。向ける感情の種類は東には分からないが、大切に想っていることは確かだ。お互いに。
「名字の気持ちも分からないでもないが、子供のときからずっと仲がいい相手っていうのは貴重だぞ。歳をとったら段々疎遠になるものだからな」
「……大人になったら仲良しじゃなくなるんですか?」
「そういう人間もいるな」
「…………わたし、新ちゃんに謝ってきます」
それがいいな、と東が笑みを返したときだった。作戦室の扉が開き、すかさずズカズカ入って来た人物は「失礼します東さん。少しの時間、これをお借りします」と早口で言い切ってこれと表した者の首根っこを掴み、自分の肩に担いで作戦室を後にした。「失礼しました」と律儀に声をかけて。その華麗な一連の動きに東が固まって見届けていると、ちょうどその人物と入れ違いになって入って来た奥寺が青い顔をして口を開いた。
「……今、名字先輩が二宮さんに誘拐されていませんでしたか……?」
その台詞が嫌に部屋中響いた。すぐさま「いや、少し借りるって言ってたから誘拐では……」と否定の言葉を返そうとしたが、それより早く奥寺と一緒だった小新井が大きな声を出した。
「名字先輩が二宮さんに誘拐されたー!!」
その声は部屋どころか廊下にも響き渡っていた。