完結済み
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「名前……」
「辻ちゃんさすがに今は防衛任務中だから」
まあ来る気配全くないけど。二宮さんが苛々し出すからやめてね。全く聞こえてないけど。
名字ちゃんの縁切り宣言が昨日のこと。つまりたった一日しか経っていないのに辻ちゃんへのダメージは計り知れない。曰わく朝先に学校に行かれた、昼ご飯のとき元気がなくて食欲不振で心配した、基地へ向かうときも殆ど話さずに笑顔ひとつなかったと。何か途中から心配のベクトルが違うよな。しかも縁切りしたのに一緒に飯食って基地まで来たのか。縁切りって何なの?
ちらっと辻ちゃんへ視線をやる。トリオン体でも隠しきれない顔色の悪さ。いつも冷静で私情なんて挟まないと思ってたけどそんなことなかった。あの子名字ちゃんの事になったら豆腐メンタルだ。いつもの女性不振以上に振り回されている。まあB級ランク戦で名字ちゃんだけは絶対に落とせないから何となく分かってはいたけど。「名前に攻撃なんて……」って凄い顔してたからなぁ。そしてそんな辻ちゃんを遠慮なく撃ち抜く名字ちゃん。そのせいでうちと東隊が当たると結構しんどい。あの子普段は辻ちゃんにくっ付いてる駄目ワンコなのに戦いになると容赦なさすぎだ。飼い犬に手を噛まれる。本当にこれ。字面のまま。
「………」
ただの幼なじみで普通そうなるか? と辻ちゃん豆腐メンタルモードを見て何回も思ったのだが、恋愛の気配を察知するには名字ちゃんの見た目が幼すぎる。見た目は小学生と高校生。うん、無理だね。犯罪臭がやばい。風間さんとならしっくりくるんだけど。あと緑川くんあたり。そんなことを考えていると二宮さんが辻ちゃんの方向に身体を向け、口を開いた。
「………辻、」
「……はい」
「………………」
あ、あれ励まそうとしてる顔だ。でも何言えばいいって分からない顔だ。何だ苛々してただけじゃなかったのか、と口がにやけそうになるのを抑えて二人の様子を見守る。
「………あの馬鹿犬の手綱くらいちゃんと握っていろ」
二宮さんの貴重な激励の言葉がこれだ。やっぱり上から目線は消えないらしい。どこまでも二宮さんらしくてすぐに口元を隠したが、笑っていることがバレて鋭い眼孔で睨まれた。だって二宮さんがそんな事するの珍しいじゃないですか、と返そうとしたときだった。
「………二宮さん、名前は犬じゃありません」
「……………」
「人間の女の子です」
「……………」
「……………ぶはっ」
至極当然と言わんばかりの顔で辻ちゃんが二宮さんに対して言い聞かせるようにそう言った。そして苦虫を踏み潰したような顔の二宮さん。真面目な性格故の食い違いだった。溢れ出た涙を拭う。あーおれ二宮隊で良かった。未だに無言で向き合う辻ちゃんと二宮さんを見て改めてそう思った。このタイミングで言ったら絶対に二宮さん怒るから言わないけど。……ん?
「辻ちゃんって名字ちゃんのこと犬みたいに可愛がってたじゃん」
あの「大きくなったね~お手できる~? よしよしご褒美のおやつだよ~」という視線と態度は確実に愛犬に対するものだった。だから二宮さんも名字ちゃんのことを『馬鹿犬』だの『駄犬』だの『アホ犬』だの言ってたんだ。……全部乏してるな。あれ、何であの子おれより二宮さんに懐いてるの。……ああ今はいいや。とりあえず今は辻ちゃんだ。そう思いつつ辻ちゃんと向き合うと辻ちゃんは目を大きく開けてぱちぱち瞬きしていた。
「い、犬扱いなんてしていませんよ……!」
「いやしてたよ」
「前から思っていましたが何で名前が犬なんですか」
「えっ……、」
いやだって、……ええ?
辻ちゃんの言葉に今度は俺が目を見開いた。そして頭に浮かぶ数々の描写。
『新ちゃん! 今日のランク戦でポイント取りましたよ! 東さんと奥寺くんと摩子さんに褒めてもらいました!』
『うん見ていた。頑張ったな名前』
そう言って名字ちゃんの頭を撫でる辻ちゃん。
『新ちゃん新ちゃん! 知っていましたか!? 200年生きた鯉がいるそうです! 飼い主より長生きです!』
『すごいな』
『むやみに鯉は飼ってはいけないということですね!』
『最期まで世話しないといけないからね。名前は責任感があって偉いな』
そう言って名字ちゃんの頭を撫でる辻ちゃん。
『新ちゃん……小新井くんに大事にとっておいたシュークリーム食べられちゃいました……』
『それは……駄目だな。あとで俺が小新井くんを叱っておくから泣くな名前』
そう言って名字ちゃんの頭を撫でる辻ちゃん。
…………いや犬扱いだよ。しかもでれっでれに甘やかした駄目飼い主だよ辻ちゃんは。そう言うと辻ちゃんはショックを受けたような顔をした。
「お、俺は別にそんなつもりでは……ただ───」
「……………え?」
辻ちゃんがぼそりと呟いた言葉に今度こそ思考回路が停止しそうになったときだった。警報が鳴り響き、門が目の前に出現した。
「………あーもー……タイミング悪いな」
銃型トリガーを構える。ちょっと今聞き捨てならない言葉が耳に入ったのに。おまえらの相手してる場合じゃないんだよ。
『──ただ、好きな子は大切にしたいだけで、』
少し頬を赤らめてそう言った辻ちゃん。……どっちの意味なんだろうね。
20230721
「辻ちゃんさすがに今は防衛任務中だから」
まあ来る気配全くないけど。二宮さんが苛々し出すからやめてね。全く聞こえてないけど。
名字ちゃんの縁切り宣言が昨日のこと。つまりたった一日しか経っていないのに辻ちゃんへのダメージは計り知れない。曰わく朝先に学校に行かれた、昼ご飯のとき元気がなくて食欲不振で心配した、基地へ向かうときも殆ど話さずに笑顔ひとつなかったと。何か途中から心配のベクトルが違うよな。しかも縁切りしたのに一緒に飯食って基地まで来たのか。縁切りって何なの?
ちらっと辻ちゃんへ視線をやる。トリオン体でも隠しきれない顔色の悪さ。いつも冷静で私情なんて挟まないと思ってたけどそんなことなかった。あの子名字ちゃんの事になったら豆腐メンタルだ。いつもの女性不振以上に振り回されている。まあB級ランク戦で名字ちゃんだけは絶対に落とせないから何となく分かってはいたけど。「名前に攻撃なんて……」って凄い顔してたからなぁ。そしてそんな辻ちゃんを遠慮なく撃ち抜く名字ちゃん。そのせいでうちと東隊が当たると結構しんどい。あの子普段は辻ちゃんにくっ付いてる駄目ワンコなのに戦いになると容赦なさすぎだ。飼い犬に手を噛まれる。本当にこれ。字面のまま。
「………」
ただの幼なじみで普通そうなるか? と辻ちゃん豆腐メンタルモードを見て何回も思ったのだが、恋愛の気配を察知するには名字ちゃんの見た目が幼すぎる。見た目は小学生と高校生。うん、無理だね。犯罪臭がやばい。風間さんとならしっくりくるんだけど。あと緑川くんあたり。そんなことを考えていると二宮さんが辻ちゃんの方向に身体を向け、口を開いた。
「………辻、」
「……はい」
「………………」
あ、あれ励まそうとしてる顔だ。でも何言えばいいって分からない顔だ。何だ苛々してただけじゃなかったのか、と口がにやけそうになるのを抑えて二人の様子を見守る。
「………あの馬鹿犬の手綱くらいちゃんと握っていろ」
二宮さんの貴重な激励の言葉がこれだ。やっぱり上から目線は消えないらしい。どこまでも二宮さんらしくてすぐに口元を隠したが、笑っていることがバレて鋭い眼孔で睨まれた。だって二宮さんがそんな事するの珍しいじゃないですか、と返そうとしたときだった。
「………二宮さん、名前は犬じゃありません」
「……………」
「人間の女の子です」
「……………」
「……………ぶはっ」
至極当然と言わんばかりの顔で辻ちゃんが二宮さんに対して言い聞かせるようにそう言った。そして苦虫を踏み潰したような顔の二宮さん。真面目な性格故の食い違いだった。溢れ出た涙を拭う。あーおれ二宮隊で良かった。未だに無言で向き合う辻ちゃんと二宮さんを見て改めてそう思った。このタイミングで言ったら絶対に二宮さん怒るから言わないけど。……ん?
「辻ちゃんって名字ちゃんのこと犬みたいに可愛がってたじゃん」
あの「大きくなったね~お手できる~? よしよしご褒美のおやつだよ~」という視線と態度は確実に愛犬に対するものだった。だから二宮さんも名字ちゃんのことを『馬鹿犬』だの『駄犬』だの『アホ犬』だの言ってたんだ。……全部乏してるな。あれ、何であの子おれより二宮さんに懐いてるの。……ああ今はいいや。とりあえず今は辻ちゃんだ。そう思いつつ辻ちゃんと向き合うと辻ちゃんは目を大きく開けてぱちぱち瞬きしていた。
「い、犬扱いなんてしていませんよ……!」
「いやしてたよ」
「前から思っていましたが何で名前が犬なんですか」
「えっ……、」
いやだって、……ええ?
辻ちゃんの言葉に今度は俺が目を見開いた。そして頭に浮かぶ数々の描写。
『新ちゃん! 今日のランク戦でポイント取りましたよ! 東さんと奥寺くんと摩子さんに褒めてもらいました!』
『うん見ていた。頑張ったな名前』
そう言って名字ちゃんの頭を撫でる辻ちゃん。
『新ちゃん新ちゃん! 知っていましたか!? 200年生きた鯉がいるそうです! 飼い主より長生きです!』
『すごいな』
『むやみに鯉は飼ってはいけないということですね!』
『最期まで世話しないといけないからね。名前は責任感があって偉いな』
そう言って名字ちゃんの頭を撫でる辻ちゃん。
『新ちゃん……小新井くんに大事にとっておいたシュークリーム食べられちゃいました……』
『それは……駄目だな。あとで俺が小新井くんを叱っておくから泣くな名前』
そう言って名字ちゃんの頭を撫でる辻ちゃん。
…………いや犬扱いだよ。しかもでれっでれに甘やかした駄目飼い主だよ辻ちゃんは。そう言うと辻ちゃんはショックを受けたような顔をした。
「お、俺は別にそんなつもりでは……ただ───」
「……………え?」
辻ちゃんがぼそりと呟いた言葉に今度こそ思考回路が停止しそうになったときだった。警報が鳴り響き、門が目の前に出現した。
「………あーもー……タイミング悪いな」
銃型トリガーを構える。ちょっと今聞き捨てならない言葉が耳に入ったのに。おまえらの相手してる場合じゃないんだよ。
『──ただ、好きな子は大切にしたいだけで、』
少し頬を赤らめてそう言った辻ちゃん。……どっちの意味なんだろうね。
20230721